シリコンバレーは中国のQ&Aサイト最大手Zhihuから何を学べるか

中国最大のQ&AプラットフォームZhihu(知乎)がIPOレンジの最安値、1株あたり9.50ドル(約1040円)でニューヨーク証券取引所に上場した。この上場価格での企業価値は53億ドル(約5809億円)だ。

ZhihuのIPOでの調達額と同時に行われた私募の合計額は7億7250万ドル(約846億円)で、引き受け人は追加のADS購入のオプションは行使しないと思われる。Zhihuのかなりの浮揚を受け、一部のシリコンバレーのエグゼグティブや投資家たちは、かつて単に「中国のQuora」とみなされていた中国発の創業10年の会社により注意を払うようになりそうだ。

Zhihuは古代中国語で「知ってる?」という意味で、Q&Aは依然としてZhihuの事業の中核だ。しかしZhihuのサービスは同社の2年前に設立されたQuoraを上回るものになった。

「Quoraは良いプロダクトだと思います。しかし本日のQuoraは10年前のQuoraと依然として同じです」とKai-Fu Lee(カイフー・リー)氏は話した。同氏の投資会社Sinovation VenturesはZhihuのシード投資家で、持分13%とZhihuの最大の社外株主だ。

「Zhihuはすでに成長し、知識を中心に据えた多面的なスーパーアプリになる道を歩んでいます。一方のQuoraはいまだにアプリがあるQ&Aウェブサイトです」とリー氏は付け加えた。同氏はAIの専門家であり、熱心なZhihu寄稿者だ。

Q&A促進はさておき、Zhihuはプレミアムなコンテンツ、ライブのビデオとオーディオ、オンライン教育など、同社が知識を共有するのに準備が整ったと確信している形式を倍増させた。

Zhihuの上場目論見書によると、売上高の70〜80%は広告からのものだが、メンバーシップやeコマースといった他の事業も売り上げに貢献するようになっている。これは同社が収益源の多様化に取り組んでいることを示している。

中国スタートアップが進んで「自らを刷新し、成功を解体する」ことは米国企業と異なる点だとリー氏はみている。

「中国のスタートアップは、もし自らがそうしなければ競合相手がそうすることを知っていて、彼らは夢としてのスーパーアプリ構築に向けて野心的だからです。米国の企業は本当に良くて軽いものを作り、他の企業と提携し、快適なゾーンにとどまる傾向があると思います」と2000年代後半にGoogle Chinaのトップを務めたリー氏は話した。

「シリコンバレーと米国の企業は、物事を異なる風に行うというアイデアやインスピレーションに関し、中国に目を向けるべきだと真に思います」。

利益相反

2019年から2020年にかけて、Zhihuの月間アクティブユーザー数は4800万人から6850万人に成長し、これは同プラットフォームが最初に魅了した中国のテックエリートの零細企業、投資家、学者を超えて発展したことを示している。新米の母親がZhihuで出産後のアドバイスを求めるかもしれないし、 Foxconnの従業員が同サイトで工場の話しを共有するかもしれない。

Zhihuの売上高は2019年に6億7050万元(約112億円)だったのが、2020年には14億元(約234億円)に成長し、一方で純損失は10億元(約167億円)から5億1760万元(約86億円)に縮小した。商業化はZhihuのオープンユーザーコラボレーションに根ざす原理と一致しない、と思えるかもしれない。往々にして回答者には経済的インセンティブは与えられないが、純粋に楽しみのために参加している。しかしZhihuは最初から営利目的で、結局収入を必要としている。

プロダクトの商業利益とユーザーの利益のバランスを取るのは常にデリケートな問題だ。結局、広告やプラットフォーム上で許されているスポンサー付きのコンテンツの種類について慎重で計画的になる。抑制はより少ない広告の売上高を意味するかもしれないが、2016年に中国検索大手Baiduに降りかかった医療広告スキャンダルはユーザーの信頼をいかに簡単に失くし得るかを示した。一方、ぴったりとはまり、責任ある広告は広告主とプラットフォームの両方に大きなリターンをもたらし得る。

イノベーティブな面では、すべてのユーザーがZhihuの新機能に感謝したわけではない。Zhihuはショートビデオのアンティー(割り当て金)を増やした。これは多くの中国人ユーザーが情報を受け取っているものを通じてデフォルトのものとなった。よりリーズナブルな接続性とDouyinやKuaishouのような業界先駆者のおかげだ。しかし一部のユーザーは、本質的にショートビデオはエンターテインメントに近く、よりシリアスでテキストにフォーカスしたZhihuにとって邪魔だと主張する。

Zhihuにはバランスを取るべき他の利益もある。同社の株主にはTencent、Baidu、Kuaishouが含まれ、これらの企業自身が広範な機能を持つ「スーパーアプリ」だ。いずれもZhihuとトラフィック取引を持っている。例えばZhihuコンテンツは、自前の検索エンジンを持つWeChatでの検索結果に表示される。

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大手企業と手を組むことは小さいプレイヤーにとってユーザー成長を促進するかもしれない。その一方で、外部への依存はかなりのシェアを早期にあきらめて、ライバルとなり得る複数の味方の関心をかき立てることになり、スタートアップを無力にするかもしれない。

リー氏は、Zhihuの特定のパートナーとの関係についてコメントするのは却下したが、Zhihuにはパートナーに関して「過度の依存」はなく「パートナーとの自然な仕事上の関係」を維持していると指摘した。

「これはZhihuのチームの純粋さと野心にも言えることで、より多くの友人を作って独立を維持することを望んでいます」と同氏は話した。

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画像クレジット:NYSE

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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