Google CloudのVertex AIは機械学習を果てしないパイロットから価値を生む実用技術にする

米国時間5月18日のGoogle I/Oにおいて、Google Cloudは開発者が自分のAIモデルをもっと容易にデプロイしメンテナンスできるための、新しいマネージド機械学習プラットフォームであるVertex AIを発表した。I/Oは以前からモバイルとウェブのデベロッパーが対象であり、Google Cloudのニュースはあまりなかったため、やや違和感のある発表にも思えたが、GoogleがVertexの発表を本日行なうと決めた事実は、この新しいサービスが多様な分野の開発者にとって重要と同社が考えている証拠だ。

Vertexのローンチは、Google Cloudのチームが反省をたくさんしたことの結果だ。Google CloudのAI Platformでプロダクト管理を担当しているディレクターのCraig Wiley(クレイグ・ワイリー)氏は、次のように語る。「私見では、エンタープライズの機械学習は今危機にあります。その分野で何年も仕事した者の1人として現状を見れば、Harvard Business Reviewなどに論評を書いているアナリストの誰もが、今や大半の企業が機械学習に投資をしたり、投資に関心を示しているが、どこもそこから価値を得ていないと言っている。こんな状況は、そろそろ変わるべきです」。

画像クレジット:Google

2016年から2018年までAWSのAIサービスであるSageMakerのゼネラルマネージャーを経験して2019年にGoogleに来たワイリー氏によると、Googleのように自分たちのために機械学習を動かすことのできる企業は、どうやればそれが変革への力になるかを実際に見て知っている。しかし彼がいう問題とは、大きなクラウドがそんなサービスを提供するときは何十ものサービスに分割されてしまうことだ。「しかも(Google自身も含めて)そんなサービスの多くが袋小路にあります。そこでVertexの目標は、エンタープライズにとって機械学習への投資からのROIの時間を短縮し、モデルを作ったことが終わりではなく、彼らが作ったモデルから確実に、リアルな価値を得ることです」とワイリー氏はいう。

そこでVertexは、極めて柔軟性に富んだシステムとして、デベロッパーやデータサイエンティストのスキルのレベルがそんなに高くなくても、モデルを迅速に訓練できるようにする。Googleによると例えばモデルの訓練に要するコードの行数は他社の類似製品に比べて80%少なく、しかも彼らはモデルの全ライフサイクルを自分で管理できるようになる。

画像クレジット:Google

このサービスにはGoogleのAIオプティマイザVizierが統合されていて、機械学習のモデルのハイパーパラメータを自動的にチューニングする。これによりモデルのチューニングに要する時間が大幅に減り、エンジニアはより多くの実験をより短時間でできるようになる。

また、Vertexが提供している「Feature Store」でユーザーは機械学習のいろいろな機能をサービスし、シェアし、再利用できるようになる。そしてVertex Experimentsという機能を利用するとモデルの選択が速くなり、モデルの本番へのデプロイが加速される。

デプロイは、継続的モニタリングサービスとVertex Pipelinesが支援する。後者はGoogle CloudのAI Platform Pipelinesからの改名で、モデル用のデータを準備および分析し、モデルを訓練し、それらを評価してプロダクション(本番展開)へとデプロイしていくワークフローの管理を助ける。

いろいろなタイプのデベロッパーにとってとっつきやすいシステムにするために、このサービスには3つのインタフェイスがある。「ドラッグ&ドロップのツール」と「高度なユーザーのためのノートブック」、そして意外かもしれないがBigQueryのデータウェアハウスの中で、SQLの標準的なクエリを使って機械学習のモデルを作り実行するGoogleのツールである「BigQuery ML」だ。

Google CloudのCloud AIとIndustry Solutionsの副社長兼ゼネラルマネージャーであるAndrew Moore(アンドリュー・ムーア)氏は、次のように述べる。「Vertex AIを作るときには、2つのことを指針とした。1つはデータサイエンティストとエンジニアを組織の藪から救い出すこと、もう1つは、AIを果てしないパイロット事業から正規のサイズのプロダクションへと移行させることに誰もが真剣になるために、業界全体としての気運を作り出すことだ。このプラットフォームとして実現したことを、私たちはとても誇りに感じている。それは、データサイエンティストとエンジニアがクリエイティブな仕事に充実感を持てるような、新世代のAIの本格的なデプロイを可能にするものだからだ」。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:GoogleGoogle I/O 2021Google Cloud機械学習Vertex AI

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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