旭化成は6月11日、奈良県立医科大学の微生物感染症学講座(矢野寿一教授)および同大免疫学講座(伊藤利洋教授)と連携し、「226nm UVC LED」による新型コロナウイルス不活化効果の確認と動物細胞への影響について検証を行い、速やかに不活化できることと動物細胞への影響も既存270nm UVC LEDに比べ少ないことを世界で初めて確認したと発表した。
旭化成によると、これは226nm UVC LEDが手指や体の周辺殺菌にも安心して使用できる可能性を示しているという。今後の製品化のためには、さらに発光出力向上のブレイクスルーが必要なことから、同社は引き続き研究開発を進めるとしている。
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、薬剤を使わない殺菌手段として紫外線照射による殺菌が注目されているという。しかし、従来の水銀ランプ(波長254nm)やUVC LED(波長260~280nm)では人体細胞への影響が懸念されるため、人体への直接照射は避けられてきた。一方、2020年エキシマランプを用いた波長222nmの紫外光照射器製品が発表され、人体にほとんど影響がないことから、実用化が進んでいる。
ただ白熱電球や蛍光灯がLEDに置き換わってきたように、エキシマランプについも、レイアウトの自由度向上・小型軽量化・耐衝撃性向上、またON/OFFの高速性などの観点からLED化することが強く望まれているという。
そんな中で旭化成は、すでに事業化している260~270nm UVC LED技術を活用し、短波長化の検討を進めており、今回開発中の226nm UVC LEDを用いて新型コロナウイルスの不活化と動物細胞への影響について検証を行ったという。
今回の実験では、発光波長226nmのUVC LEDを100個用いて10×10のアレイ状照射器を作製。また、発光波長270nm UVC LED製品のアレイ状照射器も比較として用いて実験を実施した。なお同実験に用いたUVC LEDは、旭化成の100%子会社Crystal ISの窒化アルミニウム(AlN)基板を用いて作製した。実験に用いた新型コロナウイルスは、「2019-nCoV JPN/TY/WK-521株」。
不活化実験の具体的な内容は、シャーレに新型コロナウイルス液を塗抹した後に乾燥させ、226nmおよび270nmのアレイ状照射器を用いて、同一の発光出力(440μW/cm2)で紫外光を照射するというもの。その後ウイルスを回収し、ウイルス感染価をプラーク法で測定した。
記事冒頭の測定結果の通り、新型コロナウイルスは、226nm、270nmのいずれにおいてもUVC LED光を6秒程度照射することで、99.9%まで不活化されることが確認できた。
また226nmのUVC LED光が動物細胞へ与える影響について、マウス皮膚細胞を用いて検証実験を行った。マウス皮膚細胞を2層にした状態で、226nmおよび270nmのUVC LED光を100 mJ/cm2、500mJ/cm2照射し上層の細胞を除去した後、下層細胞に対する細胞傷害性をMTT試薬による染色像と吸光度測定による細胞生存率で評価した。
226nmにおいては、100mJ/cm2の照射による影響はほとんどなく、500mJ/cm2照射の場合も270nmと比べ下層細胞に対する細胞傷害性が低いことが示されたという(以下掲載写真のうち、染色像の黒く見える部分が細胞の生存を示す)。
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