YouTubeで最初に開発されたMySQL用のオープンソースのデータベースクラスタリングシステムVitessを提供するPlanetScaleは米国時間6月23日、Insight Partnersが率いるシリーズBのラウンドで3000万ドル(約33億円)を調達したことを発表した。その他にもa16zとSignalFireが参加している。Crunchbaseによると、これで同社の調達総額は5500万ドル(約61億円)になる。
今回の発表のわずか数週間前には、PlanetScaleは同社自身がホストする新たなデータベースプラットフォームを立ち上げ、それを同じくPlanetScaleと呼んだ。これまでVitessはホストしていたが、同社はこの新サービスで一歩前進し、同社のいう「デベロッパーファーストのデータベース」を提供していく。それは、すべてのインフラストラクチャを抽象化して、デベロッパーがクラウドのゾーンとかクラスターのサイズなどインフラの細部を気にしなくても良いようにする。
PlanetScaleのCEOで共同創業者のJiten Vaidya(ジテン・ヴァイディヤ)氏は、初期のプロダクトの限界について極めて率直に語る。「実のところ、2020年私たちが開発したものは、ホストされるVitessと呼んでもいいものです。今では多くのクラウドプロバイダーが自分のところでデータベースをホストしていますが、それと変わりないものです。つまりこれまでの私たちのプロダクトには、今日のデベロッパーが求める使いやすさやエレガンス、最先端のUXなどがまったく組み込まれていませんでした」。
しかし数カ月前に同社は、元GitHubのエンジニアリング担当副社長Sam Lambert(サム・ランバート)氏を同社のCPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)に迎えた。ヴァイディヤ氏によると、ランバート氏はPlanetScaleにデベロッパーの共感をどっさりと盛り込み、この新製品の立ち上げを助けた。
そのランバート氏は次のように語る。「多くの人ががここに来るのは、彼らがデータベースのエキスパートだからではありません。彼らはデータを抱え、そして問題を抱えているのです。しかし、あまりにも多くの企業、中でもデータベースの世界は、我々のような開発者ユーザーの日常について考えたことすらない。ユーザーが実際にやってることの一から十までを、データベースの人たちは考えないのです。大切なことは、顧客に価値を届けることです。しかしデータベースの人間が関心を持つのはデータの保存や取り出しであり、60年代からそればっかりやってきました。そろそろ違うことをやってもいいのでしょう」。
現在、同社のユーザーにはSlackやFigma、GitHub、Squareなどがいて、多くのユーザーに価値を提供していることは事実だ。ランバート氏によると、今のPlanetScaleは、ユーザーにシンプルで使いやすいプロダクトを提供しようとしている。「使いやすいとかシンプルとか美しいという評価は、それが劣っているという意味ではありません。何かが欠けていることを意味しているのでもありません。むしろ他のプロダクトの方が、インフラストラクチャプロダクトに加えられる詩や美という付加的要素を欠いているのです」とランバード氏はいう。
PlanetScaleは今回の新しい資金でチームをグローバルに大きくし、同プラットフォームの採用を加速させたいと考えている。Insight PartnersのマネージングディレクターであるNikhil Sachdev(ニキル・サチデブ)氏が同社の取締役会に加わり、同社のマネージングディレクターであるPraveen Akkiraju(プラビーン・アッキラジュ)氏も、取締役会のオブザーバーとして参加する。
「PlanetScaleは、サーバーレスの現代において、クラウドベースのデータベースの単純性とパフォーマンスとスケーラビリティのバーを高くしました。データベースのデベロッパー体験は、あまりにも長く苦痛を感じるものでした。PlanetScaleは、その鎖を切ろうとしています。スケーラビリティと信頼性における長年の問題を、同社は極めてエレガントで趣味が良く便利な方法で解決しています」とサチデブ氏はいう。
カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Vitess、PlanetScale、資金調達
画像クレジット:PM Images/Getty Images
[原文へ]
(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)