買収を続けるツイッターが今度は定額制ニュースアプリBriefのチームを「アクハイヤー」

Twitter(ツイッター)はこのところ立て続けに買収しているが、今度はニュースアグリゲーター・要約アプリのBrief(ブリーフ)のチームをアクハイヤー(人材獲得を目的とする買収)したと発表した。Briefは、元Google(グーグル)のエンジニアらが2020年に、サブスクリプションベースのニュース要約アプリを提供するために立ち上げた。このアプリは、情報過多、燃え尽き症候群、メディアバイアス、ニュースの正確性よりもエンゲージメントを重視するアルゴリズムなど、今日のニュースサイクルが抱える多くの問題に対処することを目的としている。

Twitterは取引条件の開示に応じなかった。

共同創業者でCEOのNick Hobbs(ニック・ホブス)氏は、Briefを立ち上げる前、GoogleのプロダクトマネージャーとしてAR、Googleアシスタント、Googleのモバイルアプリ、自動運転車などに携わっていた。一方、共同創業者でCTOのAndrea Huey(アンドレア・ヒューイ)氏は、Googleのシニア・ソフトウェア・エンジニアとして、GoogleのiOSアプリを担当していた他、Microsoft(マイクロソフト)に在籍していたこともある。

画像クレジット:Brief

ニュースの消費を改善するというBriefの野心的なプロジェクトに大きな期待が寄せられていたが、その成長を妨げたのは、採用したサブスクリプションモデルだったのかもしれない。このアプリは、従来のニュースメディアのようなブランド力がないにもかかわらず、月額4.99ドル(約550円)の課金が必要だった。ちなみに、The New York Timesの基本デジタル購読料は、現在、キャンペーンにより初年度は週4ドル(約440円)だ。

Twitterによると、Briefの社員2名を含むこのスタートアップのチームは、TwitterのExperience.orgグループに入り、Twitter SpacesやExploreなど、Twitter上での公の会話をサポートする分野を担当することになるという。

Twitterは、こうした仕事がどのようなものか具体的には説明していないが、TechCrunchに語ったところによると、創業者らのBriefでの専門知識を活用し、そうした分野のプロジェクトを開発・加速させたいと考えている。

Exploreはもちろん、Twitterの「ニュース」セクションであり、カテゴリーごとにトップストーリーとトレンドトピックが集約されている。しかし今のExploreには、Briefのアプリが提供しているような、ニュースを基本的な事実にまで絞り込み、バランスよく表示するという包括的なアプローチが欠けている。その代わり、Twitterのニュースアイテムには、見出しとストーリーの短い説明、そして注目すべきツイートが表示される。そこには確かに改善の余地がある。

TwitterのサブスクリプションサービスであるTwitter Blueの中に、ニュースに特化した何らかのプロダクトが組み込まれる可能性もあるが、現時点では単なる推測にすぎない。

Twitterによると、今回のオファーは同社がBriefに積極的に働きかけたものだという。Twitterは現在、M&A戦略の一環として、既存のチームを補完し、プロダクト開発を加速させる人材を獲得しようとしている。

Twitterは過去1年間に似たようなアクハイヤーを実行してきた。邪魔が入らない(広告なし)で読めるようになるサービス「Scroll」ソーシャルポッドキャスティングアプリ「Breaker」ソーシャルスクリーン共有アプリ「Squad」API統合プラットフォーム「Reshuffle」などだ。また、ニュースレタープラットフォーム「Revue」などのプロダクトを買収し、直接統合したこともある。さらに、ClubhouseやインドのShareChatとも買収交渉を行った。これらはずっと大きなM&A案件になるはずだった。

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「結局、Twitterにたどり着いて本当に良かったと思っています」とホブス氏はTechCrunchに話した。

「アンドレアと私は、健全な議論を促すニュースを構築するためにBriefを設立しましたが、公の会話を改善するためのTwitterの真摯な取り組みには深い感銘を受けています」と同氏は語る。「将来の計画について具体的に話すことはできませんが、Briefでの経験が、現在Twitterで起こっている多くのエキサイティングなことを加速するのに役立つと確信しています」と付け加えた。

ホブス氏は、チームが有料ジャーナリズムの将来について楽観的であるとも述べた。というのも、Briefは新たに改善されたニュース体験にお金を払う顧客がいることを実証したからだ。

「Briefはジャーナリズムの新しいビジョンを開拓しました。重点を置いたのは、読み手が耐えられる目一杯のニュースではなく、必要なニュースだけを提供することです」とBriefをシードステージで支援したSignalFireの創業パートナーでCTOのIlya Kirnos(イリヤ・キルノス)氏は指摘した。「読者への配慮から、SignalFireは創業者のニック・ホブスとアンドレア・ヒューイを支援することを誇りに思いました」。

Briefはこれまでに、SignalFireと、David Lieb(デビッド・リーブ)氏、Maia Bittner(マイア・ビットナー)氏、Matt Macinnis(マット・マシニス)氏といったSequoia Scoutsを含む数少ないエンジェル投資家から100万ドル(約1億1000万円)のシード資金を調達した。

米国時間7月27日の契約により、Briefは7月31日にサブスクリプションアプリを終了する。同社によると、現在のユーザーに対しては近日中の終了について通知するが、アプリはApp Storeに残り、ユーザーがアーカイブを探索できる新機能を提供する予定だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Twitter買収ニュースアプリ

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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