クラウドにディレクトリ構造を実現してアイデンティティとセキュリティを強化するJumpCloud

企業のディレクトリという概念をクラウドにおいても実現し、現代化しようとする後期ステージのスタートアップJumpCloudが米国時間9月13日、25億6000万ドル(約2817億5000万円)という大きな評価額でシリーズFの1億5900万ドル(約175億円)を調達したことを発表した。

Sapphire Venturesがこのラウンドをリードし、新たな投資家としてOwl Rock、Whale Rock Capital、Sands CapitalおよびEndeavor Catalyst、そしてこれまでの投資家であるGeneral AtlanticとBlackRockおよびH.I.G. Growth Partnersが参加した。同社の調達総額は3億5600万ドル(約391億8000万円)になり、そのうち2億5900万ドル(約285億1000万円)は最近の2回のラウンドによる。

JumpCloudのCEOであるRajat Bhargava(ラジャット・バルガヴァ)氏は、ディレクトリ構造はIT組織の中心であり、特にアイデンティティに関連して、モバイルデバイス管理、シングルサインオン、多要素認証、特権アクセス管理、アイデンティティガバナンスなどが含まれると考えていることから、同社に対する投資家の関心が高まっていると述べている。彼は、これらすべてのアプローチがディレクトリ構造に集約されると考えている。

「これらはすべて、中核となる1つのコアディレクトリを構成する一部です。そのためディレクトリを非常に広範かつ全体的に考えると、ユーザーとそのアイデンティティを安全かつスムーズに、アクセスが必要なものに結びつけることができるのです」とバルガヴァ氏は語る。

これは、中小企業を対象に、これらの複雑なシステムの管理を簡素化するクラウド製品を提供することで実現している。Sapphire VenturesのリードインベスターであるJai Das(ジャイ・ダス)氏は、JumpCloudや他の企業がその穴を埋めようとする前は、この部分の市場はその複雑さのためにディレクトリサービスから取り残されていたと考えている。

「大企業はさまざまなディレクトリとセキュリティのソリューションを導入して問題を解決しているが、そのための技術とチームへの投資はとても大きい。中小企業には、大企業がやってることをマネるほどの余裕がありません。大企業が必要とする機能のすべてを作り、しかもそれらが使いやすくて導入もしやすく、恐ろしく高価ではない製品を開発することが必要とされているので、この市場に向けた開発は非常に困難です」とダス氏はいう。

同社は売上などを公表していないが、バルガヴァ氏によると、顧客数は11月の取材のときから2000社増えて計5000社になり、社員数は2020年11月の300名から年内にはその倍に増やさなければならないという。

また彼は、顧客企業のダイバーシティに向けての努力にも配慮しており、人事マネージャーには最近の雇用履歴について尋ねることにしている。「質問をするだけでも、企業は変わるもんだよ。これまで消極的だった人事のマネージャーたちには、面接の対象者を多様化して前向きにダイバーシティに取り組むよう、勧めている」とバルガヴァ氏はいう。

2020年、バルガヴァ氏はIPOについてあまり語らなかったが、それは今回もあまり変わっていない。「いずれ考えると思うけど、今我々が真剣に心配すべきことではないね」と氏はいう。

しかし彼によると業績は好調であり、戦略的買収については検討するかもしれない。「意義のあるM&Aなら真剣に検討する。これまでの私たちになかった要素を加えるのは、良いことかもしれない」とバルガヴァ氏はいうが、労働市場が逼迫している現状では、プラットフォームの機能の多様化よりも技術者の増員が当面重要かもしれない、と氏は語る。

画像クレジット:sorbetto/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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