写真やビデオの「出所」データで改ざんを防ぐTruepicがマイクロソフト主導ラウンドで約28億円調達

デジタル画像認証ソフトウェアプロバイダーのTruepic(トゥルーピック)はMicrosoft(マイクロソフト)のベンチャーファンドM12がリードしたシリーズBラウンドで2600万ドル(約28億円)を調達した。

Adobe、Sony Innovation Fund by IGV、Hearst Ventures、そしてStone Point Capitalの個人も同ラウンドに参加し、サンディエゴを拠点とするTruepicの2015年の創業からの累計調達額は3600万ドル(約39億円)になった。

フェイクかどうかを感知するのではなく、特許を取得している「保証された」カメラテクノロジーが本物であることを証明する、とTruepicはいう。同社のテクノロジーは写真やビデオを、その「出所」データ(オリジン、コンテンツ、メタデータなど)で、対象とする受信者に届く前に画像改ざんされないよう暗号技術を用いて保護する。

ダークウェブやソーシャルメディア、あるいは画像の時間やロケーションについてのメタデータを変更できるソフトウェアを介して購入できる偽りの写真や個人情報が増えている中で、同社のソフトウェアは写真がどこで撮影されたのかを認証し、巧みに操作されていないことを証明することができる、と同社は話す。

「我々のアプローチは、撮影された時点でのコンテンツの信憑性を認証するという点でユニークです。この手法は、『出所ベースのメディア認証』とも呼ばれていて、異常や撮影後の編集を感知するものとは異なります」とTruepicのCEO、Jeff McGregor(ジェフ・マクレガー)氏は語る。「フェイクの画像やビデオの感知は実行可能ではなく、スケーラブルでもないと考えています。出所ベースのメディア認証はユニバーサルなオンライン上のビジュアル信頼に向けた最も有望なアプローチです」。

Truepicのカメラテクノロジーはソフトウェアベースで、モバイルデバイス上で動く。マクレガー氏によると、デバイスのカメラで撮影された写真とビデオは、編集されていないオリジナルの画像であることが暗号化されて保証されており、日時や場所などの「信頼できる」メタデータも含まれているという。

13もの特許を持つTruepicのテクノロジーは特に、ますます増えている金融サービス企業の間で人気だと同氏は話す。例えば保険会社はリモートで保険請求を認証するのにTruepicのテクノロジーを使っている。これは新型コロナウイルス感染症のパンデミックの間、対面でのやり取りがとにかく避けられていた初期には特にかなり有意義だった。しかし他にも多くのユースケースがある、とマクレガー氏はいう。

Truepicは正しいことをしているに違いない。同社のテクノロジーはEquifax、EXL Service Inc、Ford Motor Company、Accion Opportunity Fund、Palomarなど100社超に使用されている。

Truepicの売上高は2020年、保険、銀行、クルマ、P2Pコマース、プロジェクト管理、国際開発産業などでの「クライアント数の劇的な成長」のおかげで300%超増えた、と同社は話す。ただ、マクレガー氏は具体的な売上高の公開は却下したため、売上高の300%成長がどれくらい大きかったのか知ることはできない。同社は現在、中核テクノロジーのディストリビューションのスピードに注力しているため、意図的にまだ黒字になっていない、と同氏は付け加えた。

同氏によると、信用できない写真やビデオがかなり広く出回っているため、Truepicのテクノロジーのユースケースは広範にわたる。同社の顧客には、デジタル写真やビデオコンテンツを取り入れており、かつそうしたコンテンツに高レベルの信用度を求める組織が含まれる。例えばTruepicは保険会社、銀行、P2Pコマース、オンラインマーケットプレイス、不動産とフランチャイズの組織、保証プロバイダー、クルマの会社などと協業している。同氏によると、一般的に住宅レンタルやニュースメディア、オンラインデーティング、ソーシャルメディア、eコマース、シェアリングエコノミー、従来型メディアなど、ビジュアルメディアに頼っているプラットフォームを持つ企業はTruepicのテクノロジーの恩恵を受けることができる。

「すべてのデジタルコンテンツのオリジンや信憑性が検証でき、それによってオンラインで視聴するものにより高い信頼を置ける世界をイメージしています」とマクレガー氏は語った。

M12プリンシパルのJames Wu(ジェームズ・ウー)氏は、オンライン上のディープフェイクのビデオや合成メディアの数はねずみ算式に増えていると指摘した。

「悪用され、巧みに操作されたメディアはネガティブな政治論や評判への影響、そして不正請求などにつながりかねません」とウー氏はメールで述べた。「合成メディアの普及は企業、特に確立されたブランドにとって増大しつつあるビジネスリスクであり、Truepicのようなソリューションは企業のエンド・ツー・エンドの詐欺管理戦略において不可欠なものになるでしょう」。

そして同氏は、Truepicは写真やビデオファイルに含まれるデータの完全性を証明する最も信頼性の高い方法であるとM12が考えている証明技術の「パイオニア」だと述べている。

「合成メディアにはかなり投資されてきましたが、コインの裏側、つまり合成メディアが悪用される場合を考えている人はごくわずかです。Truepicはオンライン上の真実性の共有を維持するためのツール提供において先頭を走っています」と同氏は語った。

Truepicは新たに調達した資金の一部を新プロダクトTruepic Lensの迅速なリリースに使う計画だ。Truepic Lensは「産業、ユースケース問わず」サードパーティのアプリで「信頼できる」画像撮影ができるようにする、とマクレガー氏は述べた。

「これはサービスを提供する上で信頼できるメディアを必要とするあらゆる顧客に向けた1つの統合ポイントを作り出します」。

同社はまた、現在展開している旗艦プロダクトTruepic Visionの流通を増やすのにも資金を使う。このプロダクトは、世界中のどこからでも信頼できる写真やビデオの「速攻の」レビューをリクエストできる「ターンキー」プラットフォームだ。

当然のことながら、同社は採用も進める。現在の従業員数は50人で、1年前から約25人増えた。今後18カ月で100人へと倍増するとマクレガー氏は見込んでいる。

画像クレジット:Truepic Lens / Truepic

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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