「コロナ禍によって、カスタマージャーニーに欠けているものがあることが可視化されました」。そう語るのはチリのアーリーステージのスタートアップOcular SolutionのCEOであるFernando Moya(フェルナンド・モヤ)氏だ。
モヤ氏は、人はオフラインと同じように顧客担当者と顔を合わせて話したがたるのでライブチャットやチャットボットでは不十分であることが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって明らかになったという。
そこでTechCrunch DisruptのStartup Alleyに参加したOcular Solutionは、クライアントのサイトにビデオチャットの要素を追加しHubSpotやPipedriveなどの既存のツールと統合するプラットフォームで、デジタルの世界におけるこうした問題を解決しようとしている。
ビデオチャットはカスタマーサポートに便利だが、オンボーディングやセールスにも便利だ。進み具合に応じてエンドユーザーが質問に答えてもらうことを希望するようなコンサルティングセールスに向いているサービスの場合は、特に有用だ。
実際に人と話したいという要望が、eコマースにとって大きな問題であるカート離脱率を減らすのにビデオチャットが効果的だとモヤ氏が考える理由だ。UXの調査機関であるBaymardは44種類の研究からデータをまとめ、オンラインショッピングで実証されている平均カート離脱率は70%近いと推計している。
サイト訪問者が顧客にならない理由はたくさんあるが、Ocularはビデオチャットを導入するとコンバージョン向上につながることをつきとめた。モヤ氏がTechCrunchに語ったところによると、同社の顧客はサービス関連のネットプロモータースコアが平均8点を誇り、チリのeコマース促進イベントであるサイバーデーの期間中に最初は15%だったコンバージョン率が最高で250%に達した。
Ocularはチリでスタートした。モヤ氏はチリで以前にWingsoftという別の企業を共同で創業したことがあり、Ocularはそこからスピンアウトした。しかしOcularはすでに国境を越えている。チームは小規模なハイブリッドの拠点を持ちながらもリモートで業務を続ける予定で、クライアントはラテンアメリカ各国にわたっている。
ラテンアメリカのeコマースは北米や西ヨーロッパほどには浸透していないが、売上は他の地域よりも早いペースで伸びている。新たにオンラインを利用するようになった消費者は、おそらく対面でのショッピングに似たエクスペリエンスを求めている。モヤ氏は「ビデオでのサポートを求める人の数は、急激に増えています」という。
顧客満足度や売上とは別に、Ocularはクライアントの社内プロセスを改善したいとも考えている。その結果、同社はカスタマーサービスに関する重要な指標の追跡に役立つデータを顧客に提供し、接客担当者の業務を支援している。同社のサイトでは「当社は貴社の接客担当者をトレーニングしますので、担当者は最高のサービスエクスペリエンスを提供し、ツールを最大限に活用できます」と説明されている。
モヤ氏は次のように語った。「当社のテクノロジーを利用するにあたり、接客担当者は重要な役割を果たしていると思います。カスタマーサービスの新しいチャネルに人間らしさをもたらすのは担当者だからです。したがって当社は楽しくやりがいのある環境で担当者の日々の業務を改善し、モチベーションを上げて、優れたパフォーマンスの結果として利益を生み出すツールを作ることに力を入れています」。
モヤ氏は、ビデオチャットの担当者を希望する人が増え、この分野での「ウーバー化」が到来すると予測している。そうなれば、増えつつあるカスタマーサービスの需要に対する答えとなるかもしれない。「ビデオサポートのユースケースはさまざまで、新しい使い方が毎日出てきています」という。
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(文:Anna Heim、翻訳:Kaori Koyama)