Oracleが電子医療記録会社Cernerを約3.2兆円で買収、ヘルスケアに進出

ホリデーウィークはニュースが少ないなんて誰が言っているんだ?Oracle(オラクル)は、年末の記事執筆に疲れたテック系ジャーナリストのために、米国時間12月20日、いくつかのビッグニュースを提供してくれた。この大手データベース企業は、電子医療記録会社のCernerを、総額283億ドル(約3兆2000億円)で買収すると発表した。

「OracleとCernerは本日、OracleがCernerを1株あたり95ドル(約1万800円)、株式総額にして約283億ドルをすべて現金で支払い、買収することで合意に至ったと、共同で発表しました」と、同社はプレスリリースで述べている。

今回の買収により、Oracleは成長市場であるヘルスケア分野に大きく進出することになる。Synergy Research(シナジー・リサーチ)によれば、Oracleが最近起ち上げたクラウドインフラストラクチャ事業は一桁台に低迷しているというが、Cerner買収はこの事業の強化にもつながるはずだ。

Constellation Research(コンステレーション・リサーチ)のアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、買収を繰り返してきたOracleの歴史の中でも、今回は最大の買収になると述べている。

「Oracleにとって、これは賢明な行動です。同社のテクノロジーをヘルスケア分野にさらに深く浸透させ、現在と、そして特に将来の、多くの作業負荷をOracle Cloud(オラクル・クラウド)にもたらすことになります。Oracleが、最大かつ最速で成長している垂直型産業を買収するということは、いうまでもありません」と、ミューラー氏は筆者に語った。

この成長の可能性を、OraclのSafra Catz(サフラ・カッツ)CEOが見逃すはずはない。「当社がその事業を世界の多くの国に拡大していく中で、Cernerは今後何年にもわたって巨大な追加収益成長エンジンとなるでしょう。これはNetSuit(ネットスイート)を買収したときに採用した成長戦略とまったく同じです。違いは、Cernerの収益機会がさらに大きいということです」と、カッツ氏は声明で述べている。

だが、カッツ氏が国際的な事業拡大について語っている間に、Microsoft(マイクロソフト)が2021年4月、Nuance Communications(ニュアンス・コミュニケーションズ )を197億ドル(約2兆2000億円)で買収すると発表し、ヘルスケア分野で同様の取り組みを行っていたことにも注目しておくべきだろう。しかし、この買収は英国の規制当局からの逆風に直面している。年が明けて今回の買収が進むにつれ、同じ様に規制当局の監視にぶつかることになるかどうかは、興味深いところだ。

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Cerner側では、10月に社長兼CEOに就任したばかりのDavid Feinberg(デヴィッド・フェインバーグ)氏が、これを株主にとっての好機と見て掴まえることにした。もちろん、同氏はこの買収を、他の多くのCEOと同じように、独立した会社としては不可能な方法で市場を拡大するための手段と捉えている。

「Oracleのインダストリービジネスユニットに参加することで、電子医療記録(EHR)の近代化、介護者の体験の改善、そしてより接続された高品質で効率的な患者ケアを実現するための、当社の活動を加速させる、これまでにない機会を私たちは得ることができます」と、フェインバーグ氏は声明で述べている。

米国時間12月20日朝、このニュースを受けてOracleの株価は2.68%下落し、一方、Cernerの株価は0.92%とわずかに上昇した。

現時点で今回の発表は、米国証券取引委員会への正式な申請を含む一連のステップの最初の段階に過ぎない。現在の規制環境の中、この買収が順調に進んで最終的に完了するかどうかは、まだわからない。

画像クレジット:Justin Sullivan

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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