4年あまり前にSteve JobsがFlashに対する宣戦布告をして、HTML5の時代の幕開けを告げた。HTML5の標準規格は1997年のHTML4の後継規格だが、これまで長年、いろんなところで語られ、ブラウザによる実装もされてきたから、とっくに完成・確定した規格だと思っている人も多いだろう。でも実際にはHTML5は…今日までは…まだ流動的部分の多い標準規格だった。そして今日W3Cは、長年新たな機能を次々と加え、変更を加えてきたその規格の最終バージョンを、Recommendation of HTML5として発行した。
しかし、ユーザにとって気がつく変化は何もない。ほとんどのブラウザが、<video>成分やベクタグラフィクスなど、HTML5の機能の多くをすでにサポートしている(あなたが職場でInternet Explorerの古いバージョンの使用を強制されている人でなければ)。HTML5がここ数年でWebにもたらしたそのほかの重要な新機能としては、2Dのグラフィクスやビットマップ画像を描画できる<canvas>成分、ブラウザ内で数学的な記法を表示できるMathML、オフラインのキャッシングやドラッグ&ドロップなどいろんな機能を実現できるAPI集などがある。
W3CのディレクターTim Berners-Leeは、今日の声明文の中でこう言っている: “今日のわれわれは、ブラウザだけでビデオやオーディオを鑑賞することを当たり前と思っている。携帯電話でWebブラウザが使えることを、当たり前と思っている。どこにいても、どんなデバイスの上でも、写真を共有し、買い物をし、ニュースを読み、情報を見つけることができる、と思っている。多くのユーザがまだ気づいていないが、HTML5とOpen Web Platformが、そんな認識や期待を育てているのだ”。
W3CのHTML作業部会の共同議長でMicrosoft Open TechnologiesのPartner Group Manager Paul Cottonによると、HTML5の主要な達成物は、“Webサイトを作るWebデベロッパが頼りにできる一連の相互運用的な機能を定義できたこと”、だそうだ。
相互運用性とは関係のない機能、たとえばデジタル著作権の管理などは、すべてHTML5.1に回された。HTML 5.1は来年早々にもリリースされる可能性があり、作業部会はHTML5に入れられなかった機能に関する作業を今後続ける。
HTML5の多くの機能の中で、Cottonがずば抜けて重要と見なすのが<video>タグだ。それぐらい今のWebは、ビデオの比重が大きい。
これまでの標準規格策定作業の間には、最終リコメンデーションの発行は2020年ごろ、という感触もあった。しかしW3Cが”Plan 2014″という企画を作ったことによって、今日の発行にこぎつけた、とCottonは語る。いろんな利害を抱える人たちがいろんな妥協を図ってきたが、その中でも最大の妥協が、この、最終発行日に関する妥協だそうだ。
“Plan 2014″が2014年に発行する道筋として選んだのは、議論が決着しない要素の検討を、並行して行われる別路線にすることだ。そうやって別途進められてからHTML5に入った機能の例が、<ruby>とその関連成分だ。HTML5に入らず、独立の規格になりそうなのが、’long description’(画像などの長い説明文)だ。
Cottonによると、W3CやHTML作業部会のような組織にとってチャレンジは、オープンスタンダートに関する環境の進化と、それらの変化への対応だ、という。
“たとえばデベロッパが日常の仕事のために使うGitHubやソーシャルメディアなどのツールは、昔はなかったものだ。だから作業部会が明日のデベロッパにも役立つものを作ろうと思ったら、われわれ自身もそんな今日的な変化に合わせて進化しなければならない”。
作業部会だけでなくW3C自身も、今日の声明の中で、標準規格の次のバージョンでは、コアな“アプリケーションの基盤”的機能に目を向ける必要がある、と言っている。それらは、セキュリティ、プライバシー、デバイス間対話、アプリケーションのライフサイクル、メディア、リアルタイムコミュニケーション、ソーシャルWeb関連のサービス、支払決済、アノテーションなどだ。デベロッパがこれらの機能をWebで容易にサポートできるためには、やはりHTML本体が必要な成分等を提供した方がよい。〔つまりAPIの高度化、充実。〕
HTML5の最終リコメンデーションを終えたW3Cは、ただちにバグフィクスに取り組む。そして、もっと重要なHTML 5.1にも。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))