週明けの火曜日、水曜日(18日、19日)に迫ったTechCrunch Tokyo 2014の講演者を、また1人ご紹介したい。スマートウォッチの先駆者であり、ハードウェアスタートアップとしても注目の「Pebble」の創業者であるエリック・ミジコフスキー(Eric Migicovsky)氏の登壇だ。
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Appleがセクシーなスマートウォッチ「Apple Watch」を来年市場投入すると発表したり、GoogleがAndroidコミュニティと多数のパートナー企業という後ろ盾を得て、Android Ware市場が出てきて進化しているいま、独立系スタートアップのPebbleの立ち位置はどうなるのか、というのは大いに気になるところだ。サムスンに至ってはオリジナルのSamsung Gearに始まり、これまでTizen OS搭載、Android Wear搭載モデルを含めて6機種もリリースしている。LG電子やモトローラは丸型のかわいいAndroid Wearウォッチを出している。
市場としても腕に巻くウェアラブルデバイスの市場は急成長している。調査会社Canalysが2014年8月に発表したデータによれば、2014年上半期の市場規模は前年同期比684%と7倍近くになっている。そのほとんどはウォッチでなくバンドだが、多くのウォッチがバンドの機能を兼ねていることや、ウォッチの製品群がまだ出たばかりということを考えると、今後スマートウォッチ市場が大きく伸びる可能性は高そうだ。Pebbleはこの9月に大幅な値下げを行うと同時に、Fitbitのような活動量モニター系のアプリのためのバックグランド実行機能を強化している。これも、ウォッチがバンドを兼ねるという市場動向に対応してのこととも考えられる。
ほかのスマートウォッチとPebbleの違いはいくつかあるが、最大の違いは先駆者としてコミュニティベースで登場して、成長していることだろう。まだ他社のスマートウォッチの噂しかなかったころに、Kickstarterで華々しくデビュー。2012年4月のキャンペーンでは、10万ドルの目標金額をわずか2時間で達成。最終的には1000万ドル(約10億円)を超える支援金が集まるというKickstarter始まって以来の大きな調達記録を作った(ちなみに現在、Kickstarterの歴代支援額トップは2014年8月にCoolestという「21世紀のアイスボックス」によって塗り替えられた)。
Pebbleは電子ペーパーをディスプレイに搭載していて7日連続稼働可能というのも、ほかのスマートウォッチと違うところだろう。ぼくはここ何カ月かGoogle Wareを使っているけれど、1カ月に2、3度は真っ黒な画面の腕時計をしている感じで、バッテリ持続時間は大事だなと痛感している。
初代Pebbleはカラフルでスポーティーな腕時計だったが、この1月にはクラシックなデザインのPebble Steelも発売している。初代Pebbleが99ドル、Steelが199ドル。Steelは機能的には変わっていないものの表面の指紋防止性能が向上していたり、充電プラグを刷新して使い勝手を上げたりしているそうだ。
さて、Pebbleはスマートウォッチ市場の先駆者としても注目だが、ぼくはエリックの話でより傾聴すべきはハードウェアスタートアップとしての側面と思う。背が高すぎて既成品の椅子では飽きたらず、高校生のときに自分で持ち運び椅子を設計してしまったり、何でも「作る」ことが好きだったエリックが、どうやってプロトタイプを作り、そしてコミュニティを育てていったのか。以前、ぼくが聞いたエリックの講演で、彼はこんなことを言っていた。
「Pebbleのプロトタイプを作るとき、ユニットあたり数ドルのコストのために素材を探しまわったことは、振り返ってみれば意味がなかった。そんなことより、開発者を巻き込むエコシステムを1日も早く作ってフィードバックをもらうことが大事。初期ユーザーはアーリーアダプターやファンが多いので、完成度に対する要求レベルが低い。だから、初期段階では素材にこだわるよりも1日も早くMVPを作って出せ」
Fortuneのインタビューに答えたエリックによれば、Pebbleには2014年3月時点で約1万2000人の登録開発者がいて、約1000以上のアプリがストアに登録されているという。テックジャイアントとの厳しい競争にされはじめたPebbleだが、今後なにがスマートウォッチの差別化ポイントとなっていくのか。エリックの話はKickstarterを経て成長中のハードウェアスタートアップの成功談としても、最高のストーリーとなるはずだ。
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