ウォール街の投資家も家庭で作られる工作が好きらしい。ホームメイド作品のオンラインマーケットプレイスを展開するEtsyは今日が上場初日だった。公募価格は1株辺り16ドルだったが、NASDAQでの取引は94%高い31ドルで始まった。そして公募価格の86%高の30ドルで初日の取引を終了した。
Etsyは取引前に、1670万株を売却し2億8700万ドルを調達した。その時点でのEtsyの評価額は18億ドル相当だった。午前の半ばには株価は35ドル近くまで上昇し、Etsyの時価総額は今や35億ドル以上だ。
ハンドメイドの作品に焦点を当てるEtsyはまだ利益を出していないが、ここ数年の収益は年を追うごとに成長してきた。2012年では7460万ドルだったのが、2013年には1億2500万ドルになり、昨年は1億9559万ドルと急伸している。昨年の12月の時点で、アクティブな販売ユーザーは140万人、購買ユーザーは1980万人いるとしている。
作品を提供するEtsyが直面する課題
今後の問題はEtsyの職人が手作りで作る作品を扱うという会社のブランドをどのように保つかということだ。Etsyには熱心な販売ユーザーと購買ユーザーが多くいる。オリジナル作品を購入するために定期的なサイトを訪れているのだ。そして、彼らより規模の大きいライバル企業とみなすAlibaba、eBayやAmazonと競いながら、ホームメイドの作品の良さを損なわないためには、どうすべきかという問題に取り組まなければならない。
もし彼らのマーケットプレイスの根幹とは異なる所に活路を見出すのなら、ルールを変更し、取り扱う商品を多様化することになるかもしれない。そうなれば、マーケットプレイスを利用するユーザーを幻滅させてしまう要因にもなりうる。企業は株を公開したことで多様化した株主と、そもそも彼らのマーケットプレイスを活用して作品を売買し、上場まで導いたユーザーのどちらも考慮に入れなければならない。
上場した企業は必ず、どのようにバランスを取るかという課題に直面する。Etsyはこれまで慎重にブランドと価値観を磨いてきた。立体的な紙製の狐 や海の生き物のハンドメイドのぬいぐるみといった特徴的な作品を取り扱っている。10年前にブルックリンのアパートの一室からささやかに始まったこの会社を支えてきてくれたブランドに対し、誠実な対応を取ることと、新しい株主を満足させることを両立させなければならない。
今後の風向きを決める
EtsyのIPOは、他のテック企業の株式市場における風向きを決めることになるだろう。結果次第では、IPOを検討している企業が上場に踏み切る材料にもなる。2015年におけるテック企業のIPOの滑り出しはやや遅いようだ。今年の早い段階でBoxが上場を果たし、初日に70%の株価の急上昇を見た。しかしその後、Boxの 株価は低迷している。
EtsyのIPOの成功は、上場申請をしたばかりのShopifyにとっては朗報になる。ShopifyはEtsyとの完全な比較対象ではないものの、事業は似ている。Shopifyは、中小企業にeコマースを行うツールを提供していて、これはEtsyのソリューションに通じる所がある。完全な競合ではないものの、両社は互いのプラットフォームで取引される金額を注視している。Etsyの総流通売上高(GMS)は2014年度には19億3000万ドルを記録し、Shopifyでの同時期の総流通総額(GMV)は、37億6000万ドルだった。
察する通り、EtsyはShopifyよりプラットフォームに流通する1ドル毎から得られる利益が大きい。なぜならShopifyは企業が販売チャネルを構築するためのSaaSソリューションを提供してるのに対して、Etsyはマーケットプレイスのネットワークそのものになっているからだ。Etsyが投資家から歓迎されるのなら、似た雰因気を持つShopifyも市場に温かく迎えられることを期待するだろう。Shopifyの市場での評価が待たれる。
ShopifyのIPOがどのような影響を起こすかに関係なく、今日はEtsyにとって記念すべき日だ。どの企業も彼らのような成功の軌跡を思い描くだろう。
最後の質問:Etsyの価格は保守的過ぎただろうか?だとしても、それはどのくらい意味があることなのだろうか?
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