人類はかつてないほどに今日の広告を複雑にしている。
意見、アイディア、クリエイティビティが、より良い広告主は誰なのかを見つけ出す戦場に溢れかえっている:人間?それともロボット?これは、マッド・メンとターミネーターをミックスしたMad Magazineのパロディの一場面なのか?そうではない。長い間、マーケティング企業は、極めて戦術的で分析に基づいた問題を解決して存在してきた:どのようにしてGoogleのAdWordsプラットフォームに最高の広告を構築するのだろうか?あなたの詳細な調査がGoogleで一番の広告主を暴く時、大抵の場合、あなたが発見することは、解決策として利用されている大量のテクノロジーであり、テキストベースの広告を作るのに使用されているクリエイティブな取り組みはとても少ない。それは、キーワード、場所、時刻、競争率の高い用語、トラフィックの高いランダムな用語、入札戦略、一番コンバートする(そしてコストは最も少ない)広告に絞るための他のさらに曖昧なデータポイントを混合する複雑なシステムだ。これらの広告の裏にいるブランドは、クリエイティブな方面はほとんど気に掛けず、それが生きた入札環境の中でどのように反応しているかについて気に掛ける。Facebookは、2012年には広告に45億ドル近く出した(信じられるか?)。そして、Business Insiderの記事『How Facebook Is Replacing Ad Agencies With Robots(どのようにしてFacebookが広告代理店をロボットに置き換えているか)』によると、その仕事のかなりの部分が、クリエイティブなディレクターや、広告代理店、さらには人間の手によるものではない。この記事からの抜粋:“プロのエージェンシーのクリエイティブがほとんど関わっていない広告がこんなに多く表示されているのはかつてないことだ…。エージェンシービジネスの中では、それらの広告は、かつて新聞に登場していた古い案内広告の代わりとして見なされている。”
他の側面がある…
同時に過去10年以上にわたるソーシャルメディアの人気は、今日のひどく中抜きされたメディア飽和状態の環境において注目とエンゲージメントを獲得する唯一の方法はできる限りブランドを人間および人間味のあるものとして作ることだと、ブランドを納得させようとしてきた。このトピックに関する影響力の大きなビジネス本、『クルートレイン・マニフェスト』(初版1999年、日本語で一部読めます)は、“マーケットとは会話である”と言った。ブログ、ポッドキャスト、Twitter、Facebook、YouTube、Pinterest、その他あなたが思い付くあらゆるチャネルを介して、ブランドは顧客と繋がり、これらの会話と意義のある関係の中で顧客に関与することができる。では、それはどのようになっているのか?私たちは、13年に及ぶソーシャルメディアの商業化にだんだんと迫っており、それを用いて見事に成功したブランドもあれば、投資に対する真の利得を見つけることに苦しんでいるブランドもある。メディアの原動力としてコンテンツを作ることや、それがどのように直接的な反応の原動力に変わるのかを見つけ出すことには複雑さがある。ソーシャルメディアマーケティングにおける現在のイテレーションは、“コンテンツマーケティング”に吹き替えられている。一方で、今でも従来の広告収入もしくはブランドからの収益を得ることを求めているデジタルオンリーの新加入者からの出血を止めようとしているパブリッシャーは、可能性のある広告収入としてネイティブ広告の方を向いている。ソーシャルメディアであるにしろ、コンテンツマーケティングであるにしろ、ネイティブ広告であるにしろ、これら3つ全ての発生地は、ブランドのためにたくさんの手間暇を必要とする。これらは、素早く簡単に勝利する特効薬ではない。どんな形のコンテンツ戦略も、時間と、努力と、継続したメンテナンスを必要とする。多くのブランドにとって、昔のマスメディア広告の世界ではする必要がなかったことだ。
このストーリーの3つの側面
1つの側面においては、私たちには、クリエイティビティよりもテクノロジーによって自動化され動かされる新しい形のパフォーマンスベースの広告があり、そこではスピードとリアルタイムの反応がブランドのパフォーマンスにおいて必要不可欠な要因となる。その一方で、私たちには、コンテンツマーケティングとネイティブ広告がある。それは、コンテンツ、共有、ソーシャルチャネル、ブログ記事やYouTube動画が口コミで広がるのに似たような反応を生み出すものによってもたらされる。これによって、戦略を作り、広告をデザインし、広告を配置する一番良い場所を現実とバーチャルの両方で見つけ出す人々はどうなるのだろうか?マーケティング評論家は『顧客は広告を求めているのではない、会話を求めている』というタイトルの記事を発行するが、私たちが生きている世界では、これらの見境のない一般化はこの新しい消費者を反映していないかもしれない。極めてはっきりしていることは、広告が、宣伝チャネルの真ん中に滑り込んでいくということだ。それは、もはやマーケティング・ミックスの中の800ポンドのゴリラではない。これは、“ビッグ・アイディア”の終わりを告げるわけでもないし、現在たくさんの賞を獲得している広告代理店が近いうちに扉を閉めることになることを意味するわけでもない。
広告はどうなるのか。
私たちに分かっていることは、今日の本当に効果的な広告代理店は、テクノロジー、パフォーマンス、コンテンツ制作、その他を連動して活用しているということだ。それらの言葉をスライドデッキの中にスラスラと書いて信用証明となるチェックマークを付けるのは簡単だが、実際に実施してその専門知識を発揮できるというのは全く異なる話だ。私たちは、リターゲティングとリマーケティングの世界に住んでおり、そこではユーザーは大半のオンライン行動履歴を追跡されるため、ブランドはユーザーの行動をより理解することができ、ユーザーが消費したコンテンツや閲覧した製品に基づいて広告を発信することができる。リターゲティングの取り組みの大部分は、クリエイティビティにはあまり頼らず、データや自動化サービスに多くを頼っている。それと多変量解析を結びつけると、さらに私たちは、クリエイティビティやビッグ・アイディアに欠けており、才能あるクリエイティブ・ディレクターは反対した立場を取るかもしれないが、最も優良な広告を作って提供することができる広告モニタリングテクノロジーの世界に踏み込んでいく。
広告の未来は、これら3つのストーリー(マーケティング自動化、コンテンツマーケティング、広告代理店が提供するもの)が、より大きくより幅広く経済価値をもたらすブランドストーリーを伝えることをどれくらい上手くやるかの競争になるだろう。
筆者について:ミッチ・ジョエルは数々の受賞歴を誇るカナダ発のデジタルマーケティング/コミュニケーションエージェンシー、Twist Imageの代表です。2008年にはカナダで最もソーシャルメディア上で影響力のある人物、そして40歳以下で最も有名な40人の一人、さらに世界で最も影響力のあるオンラインマーケッター100人の一人に選ばれました。著書である「Six Pixels of Separation」(Grand Central Publishing – Hachette Book Group)は、ビジネス/マーケティング書として英語圏で大ベストセラーになっています。ミッチのブログはこちらから。
この記事は、Six Pixels of Separationに掲載された「Do Robots Make Better Marketers Than Humans?」を翻訳した内容です。
グローバル企業のCMOが世界各国で日々取得、そして長年蓄積してきた膨大なデータを元に、日本のマーケティング責任者に「日本ではこういったマーケティング戦略を取れ。アクションプランはこう。」と具体的に細かく指示し、人間はそれを実行するだけ、なんて世界にも10年後にはなっていそうな気がするのも、想像するとちょっと怖いですね。人が発揮できるクリエイティビティは、クリエイティブやキャンペーンのちょっとした仕掛けのみ、なんてことになったらマーケッターの仕事は面白いのでしょうか。もちろんAppleのiPhoneなどゲームチェンジャー的な存在を築くには人の創造力がないとできないと思いますが(そうあってほしい)、滅多にそういうことがあるわけではないですし、Appleにしてもここまで圧倒的なブランドになれば逆に、マーケティングもプログラミング管理した方が失敗しない路線をきちんと進める方が確実かもしれませんし。
朝から色々考えてしまう記事でしたが、マーケティングや広告に関わる人の多くがどこかそのクリエイティブ性に面白さを求めている人も多いのではと思いますし、実際ウェブマーケティングや広告はクリエイティブ性の低さを既存メディアの人に揶揄されている現状もあると思いますが、さて10年後20年後には、そういった区別も無くなっていると思いますし、どんな世界が私たちを待ち受けているのでしょうか。 — SEO Japan [G+]