11月17日、18日の2日間、渋谷・ヒカリエで開催予定のTechCrunch Tokyo 2015の海外ゲストとして99designsのCEOの登壇告知をさせて頂いたが、続いて国内ゲストを1人、お知らせしたい。フリマアプリ「メルカリ」創業者の山田進太郎CEOの登壇だ。
山田CEOは日本のテック業界ではまだ数少ないシリアルアントレプレナーだ。最近でこそM&Aによるイグジットの事例が国内でも増えてきているが、山田氏のイグジットは先駆け的なものだった。2001年に創業したWebサービス開発会社のウノウを、山田氏は2010年に米Zyngaへ数十億円規模で売却している。米ベンチャーへの売却は当事は非常に珍しい事例だった。
その後、山田氏は世界一周旅行の充電期間を経て2社目を創業し、2013年7月にメルカリをローンチ、わずか1年半で1000万ダウンロードを達成した。メルカリ創業から2年が経過し、アメリカ市場での350万ダウンロード分も含めると、2015年7月に2000万ダウンロードも突破している。いまはむしろ北米市場を経由してグローバルに勝負していく構えで、日本で育てたアプリを北米ファーストの開発体制に切り替えたところ。今後どこまでグローバルにサービスを拡大できるかという段階だ。日本発スタートアップで北米での普及に成功したところはないし、注目だと思う。
メルカリは、ITリテラシーの高いテックエリートからの浸透とは逆のパターンで、むしろ地方の一般ユーザーからの支持を得て伸びた。この、LINEにも似た普及パターンは、実は日本で先に起こったことなのではないか。山田CEOによれば、アメリカでもメルカリは東西海岸だけではなく、むしろアメリカ中部の地方都市などでよく使われているという。テックエリートから水平にグローバル展開するだけで十分な数のユーザーを確保できた、そういうシリコンバレーの方程式とは違うものが北米市場を席巻する可能性があるとしたら、そういう視点でもとても興味深いと思うのだ。
山田氏は北米企業に買収されるというエグジット経験があり、2回めの起業も順調だ。そこそこの成功など眼中にないと言わんばかりに、合計40億円以上という大きな資金調達をして着々とアメリカ進出への布石を打っている。このチャレンジが成功するかどうかはまだ分からないが、日本のテック系起業家として最先端を走っている1人であることは間違いないだろう。
エンジェル投資家としても活躍
日本のスタートアップ界では「目利き」のできるエンジェル投資家としても広く知られている。これまでに投資したシード期のスタートアップの中から、すでに3件のIPOが出ているという。そんなこともあって、先日TechCrunch Japanでサマーパーティーをやったときも、山田CEOの前には起業家たちの行列ができていた。プロダクトを育ててビジネスを作り、エグジットにまで持って行った経験のある連続起業家のアドバイスというのは、単なるお金よりもずっと貴重ということだろう。もっとも、会ってほしいという起業家の数があまりに多いのと、本業で日本にいないことも多く、最近は積極的にエンジェル投資はやっていないそうだが。
過去に何度か山田氏にインタビューしたり雑談していて、ぼくがなるほどと思っているのは、まだ見ぬ「C2Cサービスプラットホーム」のブランドとしてのメルカリの可能性だ。今のメルカリは比較的単価の安いモノのやり取りという切り口でユーザーを拡大しているが、実際にはもっと多様なC2Cサービスが考えられる。向こう数年のうちに多様なC2Cサービスが乗っかる強いプラットホームがもし出てくるのだと仮定すると、そのとき重要なピースとなるのは、ユーザーごとに蓄積するレピュテーション情報だろう。それはサービス横断的に適用できるのではないか、という話だ。つまり、1000円のモノの売買でもキッチリと、全てのやり取りで他人と向き会える人であれば、恐らくベビーシッターも頼めるだろうというように個々人のレピュテーションこそ、ネット上のソーシャル・キャピタルとして機能するようになるかもしれない、という洞察だ。「個人間でのやり取りといえばメルカリ」というようなブランドが築ければ、これはポテンシャルが大きそうだ。もちろん、今そういうポジションに最も近いところにいるのはWeChatとかLINE、Facebookメッセンジャーのようなチャットサービスかもしれないけどね。
というような話は、ちょっとふわっとしているのだけれど論点はいろいろある。実は山田氏はリバタリアンを自認しているそうで、そうした思想的傾向がサービス作りにどう関係しているのかといったことも、TechCrunch Tokyoのステージ上でお聞きできればと思っている。