11月17日、18日に迫ったTechCrunch Tokyo 2015で、またもう1人、海外ゲストスピーカーが決まったのでお知らせしたい。家庭向けロボットを開発する「Jibo」でCEOを務めるSteve Chambers氏が登壇する。Jiboは2012年創業で、Indiegogoで7400人を超える支援者から約370万ドル(約4.5億円)の資金を集めて注目される米東海岸発のロボット関連スタートアップだ。これまでに4度のラウンドで約3860万ドル(約46.8億円)もの資金を調達している。TechCrunch Japanの読者には、以下の動画に見覚えのある人も多いのではないだろうか。
現在、まだ量産出荷には至っていないものの、すでに試作量産品を作っていて、いまはSDKを準備中という。Chambers氏によれば上の動画ほど速くはないものの、首の動きは動画の通りだし、しゃべり方も動画に近い仕上がりになっているという。Jiboには腕はないし、目も1つだけ。でも、流れるような動きはコミカルだし、何か動作や目のアニメーションに人間らしさのようなものを感じてしまう。以下の2つの動画を見ると、これらが長年の研究に基いて注意深くデザインされたものであることがわかる。
相手が誰か認識し、感情表現をするロボット
Jiboがこれまでに存在した家庭向けロボットやスマート・トイと異なるのは、顔認識によって家族のメンバーの区別が付くことだという。これまでにも個性を持ったロボットというのはあったが、相手によって違った対応をするとか、好みを覚えるといったものはなかった。その時々で誰に向かって話をしているのかJiboは分かっているので、メッセージングアプリやエージェント的アプリでの使い分けができるのだそうだ。
もう1つ、Jiboが従来のロボットと違うのは、Jibo側から人間側に話かけることがあることだそうだ。Siriが典型だが、これまでのロボットは人間側から話しかけて何かを頼み、ロボットがそれに応えるというのが基本的なインタラクションの流れだった。Chambers氏によると、利用者となる家族と「親しい関係」(social rapport)を築こうというのがJiboのコアにあるコンセプトだという。
Jibo創業に携わり、現在同社のチーフサイエンティストを務めているのはMITメディア・ラボ准教授のCynthia Breazeal氏だ。Jibo創業以前にも彼女は、アフェクティブ・コンピューティングという研究分野で、Jiboを思わせるロボットを、いくつか作り出してきた。アフェクティブ・コンピューティングというのは感情を識別、認識し、人間らしい感情表現をコンピューティングに生かすかという研究分野。1990年代にBreazeal氏が作ったKismetというフェイス・トゥー・フェイスでインタラクトするロボットも、この研究の一環で、以下の動画を見たことがある人も多いだろう。
火星探査や自動車工場では、すでにロボットが使われているというのに、なぜまだ家庭にロボットが存在していないのか。その理由は、これまでのロボットには人間のようなソーシャルなインタラクションが欠けていたから、というのがBreazeal氏の主張で、それを商業的なプロジェクトにしたのがJiboということだ。
2014年7月のJiboのブログによれば、JiboのSDKはグラフィカルに行動を記述できるものと、JavaScript APIを使ってNode.jsベース直接プログラムできる環境とが用意されるようだ。Jiboは買ってきて数時間で飽きるオモチャではなく、スマホのような「プラットフォーム」の提供によるエコシステムの創出を狙っている、とJiboでエンジニアリングの責任者を務めるAndy Atkins氏はブログで書いている。Atkins氏はかつてAppleでNewtonのネットワーク関連APIを開発したことに始まり、後のAndroidを創業するAndy Rubinが共同創業者だったDangerでJavaベースのSDKの開発チームをリードしていた人物。今回TechCrunch Tokyoに登壇してくれるCEOのSteve Chambers氏は、音声認識エンジンや関連ソリューションで知られるNuanceを率いていた人物だ。NuanceはSiriにも技術提供をしていることで知られている。このほか、Jiboには、iRobotのプリンシパル・エンジニアだったRobert Pack氏もジョインするなど、どんどんタレントを集めている。潤沢な資金と人材を集めたJiboから出てくる「家庭向けロボット」という製品が、どんなものになるのか、とても興味深い。
JiboのSteve Chambers CEOは11月17日にTechCrunch Tokyo 2015で登壇予定である。ぜひ近未来の家庭向けロボットの話を聞きに来てほしい。