チケットストリートは2011年に創業し、コンサートや演劇の中古チケットに特化した二次流通プラットフォームを展開している。チケットストリートは東京都公安委員会より古物商許可を取得したサービスであり、2014年8月にはアメリカイーベイの小会社であるチケット二次流通サービス「StubHub(スタブ ハブ)」の日本独占パートナー契約を結んでいる。12月1日、チケットストリートはチケット購入におけるサポート制度に、新たに「入場補償」と「代替チケットの手配」を追加したことを発表した。
3ヶ月先の公演のチケットを購入したが、急遽行けなくなった。そんな時、チケットの販売先としてオークションサイトやフリマアプリといったCtoCのサービスが多く用いられている。ただ、中古チケットの二次流通における販売者と購入者間のトラブルが多いとチケットストリートの代表取締役を務める西山圭氏は説明する。コンサートや公演のチケットは座席の位置、開催時期や会場で値段が変動するが、販売者がチケットの値段を吊り上げるために虚偽の座席位置を記したり、購入者が代金を振り込んだ後に販売者との連絡が取れなくなるなどの被害が発生しているそうだ。そのため、二次流通で中古チケットを購入することに不安を覚える人は少なくないのが現状と西山氏は言う。
その不安を払拭するため、チケットストリートではユーザーが安心してチケットを購入するための保証制度を充実してきた。具体的には「本物チケット保証」「座席内容保証」「配送保証」を提供している。また主催者側の都合で公演が中止や延期になった場合も返金に応じる「公演中止/延期補償」を提供している。今回新たに、チケットストリートがユーザーの注文したチケットを届けられない場合、注文チケットと同等かそれ以上のものを手配する「代替チケット手配」と、チケットストリートで購入したチケットが真正であるにも関わらず入場を断られた場合にも返金に応じる「入場補償」を加えた。チケットストリートはこれらの制度を追加することで、ユーザーがチケットの購入からライブ会場で公演を楽しむまでをサポートするという。
一方、興行の主催者側は中古チケットでのトラブルを防ぐため、中古チケットでの入場を規制したり、チケットを無効化したりと二次流通を規制する動きを見せている。しかし、規制するだけでは、公演や興行といった盛り上がりを見せるライブ市場に水を指すことになりかねないと西山氏は言う。実際、ライブ・エンタテインメント市場は近年伸びている。一般社団法人コンサートプロモーターズ協会(ACPC)によると、2012年に1701億円規模だったライブ・エンタテインメント市場は、2014年には2749億円に急伸した。その一方で音楽市場は縮小傾向だ。一般社団法人日本レコード協会によるとCD販売を中心とする音楽ソフト市場は、2014年は2542億円に留まった。2014年に初めてライブ市場が音楽ソフト市場を上回ったのだ。さらに外国人観光客も増加傾向で、日本の演劇や音楽イベントに訪日観光客を取り込むことができれば、ライブ・エンタテインメント市場の更なる伸びが期待できる。2015年3月にはミクシィが同様に中古チケットを売買するプラットフォームである「チケットキャンプ」を115億円で買収し、この市場への注目度が窺える。
興行の主催者側にも改善できる点はあると西山氏は指摘する。例えば、半年後の公演にも関わらずキャンセルや返金に応じなかったり、チケットが完売していたにも関わらず当日の会場には席が余っていたりという話もあるという。外国人観光客の増加が見込まれているが、世界的に見て日本の公演や興行のキャンセルポリシーは適切かどうかを検討したり、チケット販売を多言語化することやコンビニに行って端末を操作するというような手間のかかる購入経路を見直したりする必要もあると西山氏は話す。チケットストリートは主催者側に正式な二次流通プラットフォームとして採用されるように取り組んでいるという。主催者側とも連携を深めていくことで、規制の方向ではなく、主催者と参加者の双方にとって安全でオープンな転売市場の形成に努めると西山氏は話す。