2001年の創業以来、日本のネット系ベンチャーとして独自のポジションを築いてきた株式会社はてなが2月に上場する。
はてなが申請していた東京証券取引所東証マザーズ市場への新規上場が、今日承認された。上場予定日は2月24日で、証券コードは3930。上場にともない37万株を売り出す。このうち約半部の18万6000株が新規発行分、もう半分が自己株式の処分による18万4000株。想定発行価格(700円)で算出した場合、発行価格の総額2億5900万円となる見込み。主幹事取引会社はSMBC日興証券。
はてなの創業者で代表取締役会長である近藤淳也氏が30万5000株を、非常勤取締役の梅田望夫氏が8万株をそれぞれ放出する。オーバーアロットメントによる売り出しは11万3200株、引受人の買取引受による売出は11万3200株。
はてなといえば、ソーシャルブックマークの「はてなブックマーク」や「はてなブログ」の開発と運営で知られる。両サービスのほか「人力検索はてな」を含むネット系サービスの登録ユーザー数は直近の2015年7月期で450万人、合計訪問ユニークユーザー数が5400万人となっている。
近年はブログ構築・運営のCMSをSaaSモデルで企業に提供する「はてなブログMedia」やネイティブ広告、タイアップ広告などで売上を伸ばしていて、2015年7月期には売上高約10億9000万円(前年同期比23.8%増)、営業利益で約1億7300万円(同13.4%減)となっている。はてなの現在の社員数は89人、平均年齢は31.9歳、平均給与は508万円。
はてなが上場することについては、2014年に創業社長の近藤氏が会長に就任した際にもCFO募集を公言して「準備中」としていたので関係者の間では時間の問題とみられていた。
ただ、このとき近藤氏は「はてなの価値の核であると考えておりますユーザー様向けのサービスにおいては、必ずしも期待したとおりの目覚ましいサービスの成長や、新サービスの創出ができていないという自覚もございます」とブログで書いていた。今回提出された有価証券報告書をみてみても、売上や新規事業、提携の主体は他社向けの受託サービスに傾いている。祖業とも言えるUGC関連(久しぶりに書いたがユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツのこと)サービスの売上比率は低いし、登録ユーザー数450万というのは数字としては寂しい。
米国に目を向けてみても、はてなとほぼ同世代の「Web 2.0」の寵児ともいえるソーシャルブックマークサービスのDeliciousやPocketが、その後サービスとして大きく成長しているということはないし、SNSやモバイル、チャットと次々にトレンドが変わっていったという環境変化もあって、難しい領域なのだろう。日々の出来事やニュースについての感慨をシェアするという行為はブログやブックマークから、TwitterやFacebook、LINEといったオープン・非オープンなSNSへと比重を移しているように見える。
「はてな村」とユーザーたち自身が自嘲的に呼ぶこともあるサービスについては、好き嫌いは大いに分かれるところだろう。しかし、はてなブックマークが日本のネット文化を象徴するサービスの1つだという点について異論のある人は少ないと思う。ユーザーに愛され(そして一部からは閉鎖性とユーザーの攻撃性が嫌われ)、創業15年目にして上場となったはてなは、規模でこそまだまだ大きいとは言えないが、日本のネット文化を代表するベンチャー企業だ。ネット文化の理解と技術力には定評があるはてなには、上場後に再び、ぼくらを驚かせ、楽しませてくれるようなサービスを創りだしてくれることを期待したい。