民泊解禁に先駆け、転貸可能物件だけを集めたポータルサイト「民泊物件.com」が事前登録を開始

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スペースエージェントは本日から民泊事業者向けに民泊利用可能な物件情報を掲載するポータルサイト「民泊物件.com」の事前登録を開始すると発表した。3月下旬に正式ローンチ予定だ。スペースエージェントは不動産領域でインターネットサービスを展開するオルトリズムの100%子会社で、民泊事業を専門に行う。スペースエージェントは2015年4月に創業し、オルトリズムの取締役副社長を務める出光宗一郎氏がスペースエージェントの代表取締役に就任した。今回、出光氏に「民泊物件.com」の立ち上げの経緯について聞いた。

そもそも個人が自宅の一部や所有する物件を営利目的に宿泊施設として貸し出すことは旅館業法により原則禁止されている。しかし、Airbnbといったインターネットサービスの普及により無断で営業する事業者が増え民泊事業者と家主との間のトラブルや民泊を利用する旅行者と近隣住民の間にトラブルが相次いだ。ただ、訪日客の急増に伴い宿泊施設が不足していることもあり、厚生労働省は2016年4月1日を目処に旅館業法を改正し、許可制で民泊を認める方向に動いている。

スペースエージェントの出光氏は、これまで民泊事業を運営しようと思っても通常の賃貸物件用のポータルサイトでしか物件情報を得ることはできなかったと説明する。そういったサイトには家主が民泊や転貸を許可しているかどうかや民泊に適した設備や条件が整っているかは分からない。民泊事業者が独自に情報を集めたり、家主から民泊利用の許可を得たりするのには時間と手間がかかる。まず物件探しの部分から民泊運営のあり方が改善されない限り、法改正がなされたとしても家主の許可を取らない無断営業は減らないだろうと出光氏は指摘する。

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民泊物件.comのスマホブラウザイメージ

民泊物件.comの目標は、民泊事業者に必要な情報と民泊運営のノウハウを提供することで健全な民泊運営をサポートすることと出光氏は話す。民泊物件.comでは家主の民泊利用許可を出している物件のみを扱い、民泊事業者の物件探しを円滑にするため、基本的な物件の設備情報に加え、管理人の有無やセキュリティーといった民泊事業者目線で必要な物件情報を提示する。民泊物件.comのもう1つの特徴は、Airbnbなど民泊の予約サービスをクロールした情報を元に当該物件の想定宿泊金額と宿泊率を算出し、民泊事業者の想定収入、初期費用と投資回収期間などの指標も提示することだ。また、民泊運営で必要となる英語でのカスタマーサポートや清掃サービスを代行する事業者も紹介するという。

民泊物件.comで取り扱う物件は今のところ住居用住宅を中心としているが、テナント用物件で民泊利用可能なものも掲載する予定だと出光氏は説明する。スペースエージェントの親会社であるオルトリズムではこれまで店舗物件やテナント物件を取り扱うサービスを展開してきた。退店したいテナント企業と出店したい企業とをつなげる「店舗市場」や不動産会社がテナント向けに不動産情報の作成から公開まで行える「ツクレル」などだ。そういったサービスを運営する中で2階以上の空中階と呼ばれる物件は空室になりやすいという家主や不動産会社の課題を身近に感じてきたと出光氏は言う。民泊物件.comで空室の空中階を民泊利用として貸し出すことで、空室率を減らすことができると考えている。物件によっては住居用に貸し出すためには登記の種類変更が必要だったり、水回りなどを宿泊に適したものにするための設備投資が必要だったりするものもあるが、テナント物件でも民泊に向いているものは多くあると出光氏は言う。テナント物件は住居物件より駅の近くや大通りに面していて立地が良いことが多く民泊の利用者にも便利だという。また、貸し出す物件の上や下の階もテナントであれば近隣の住民に迷惑になることも少ないと出光氏は説明する。

2015年11月に民泊物件.comのテスト検証を行った際には民泊運営に関しても500名以上から問い合わせがあったと出光氏は話す。副業や投資の一環として民泊事業を始めることに関心がある人が多いのだそうだ。一般的な不動産投資の場合、例えば2000万円の物件を運用したのなら投資費用を回収できるまでに数十年かかる。物件や立地にもよるが、民泊事業は平均60万円から70万円程度の初期投資で始めることができ、早ければ半年で投資回収が可能と出光氏は言う。

民泊物件.comは本日から民泊事業者と不動産会社や家主まどの3月末までに事前登録を受付、4月末まで民泊物件.comのサービスを無料で提供する。それ以降でも民泊事業者は基本的に無料で公開物件を閲覧できるが、月額980円のプレミアムプランに加入すると非公開物件なども閲覧可能となる。不動産会社や家主側も物件掲載自体は無料だが、問い合わせに対して従量課金となる予定だ。

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。