シンガポールに本社を置く海外送金・決済のスタートアップInstaRemが、Vertex Venturesを主要投資家とするラウンドで500万ドルを調達した。
シリーズAのラウンドには、Vertexのように政府系投資ファンドTemasekの子会社であるFullerton Financial Holdingsと既存投資家Global Founders Capitalが参加した。
次々と登場するFintech企業によって、為替レートや高い手数料などの国際送金の苦悩から銀行の顧客を開放してくれることが期待できそうだ。Skypeの元社員らによって創業され、Andreessen Horowitzなどのアメリカの投資会社によって支持されているTransferWiseが、他より安い手数料や良い為替レートを提供しているが、通常国境を越えるサービスは日数を要しサポートにも限界がある。
ここがInstaRemが差別化を図るポイントだ。
同社はアジアでのサービスにフォーカスし、銀行やMoneyGram、Western Unionのような老舗の送金サービスよりも低い手数料(InstaRemの手数料は通常1%以下)をチャージする。そして送金自体は即日もしくは翌日までに完了する。
サービスはオーストラリアから開始した。InstaRemは顧客数は明らかにしていないが、創業者でCEOのPrajit Nanuによると、たった1年でインドへの決済のうちすでに2%を占めたとのことだ。
Nanuは、InstaRemの平均取引額が典型的な送金会社の倍の1800ドルで、60%は取引をリピートし新規顧客の80%が登録後5日以内に口座振替をするということも付け加えた。
TransferWiseのような会社は、様々な顧客の取引を流動資金として利用しながら海外送金を行うために、無数の銀行口座を使う。一方InstaRemはより昔ながらの方法を使う。すでに外国の通貨で取引実績のある中規模の銀行と取り組むことでうまくいく。今にも出港しそうな輸送会社の貨物船に箱を置くようなもので、従って仮に自分で船を探さなくてはいけない場合に負担するコストに比べると、はるかに安く済ませられるのだ。
銀行はもしかしたら除外されると感じるかもしれない。しかし、国際決済は銀行のビジネスのうちごく一部であり、中規模の銀行はむしろ取引量の増加が見込めると期待しているためInstaRemのような会社に興味を持っている。
同社はオーストラリア、香港、カナダで金融機関としてのライセンスを持っており、現在シンガポール、マレーシア、日本、ルクセンブルク(ヨーロッパ中に銀行を開けることができる)、アメリカ合衆国のいくつかの州でも、ライセンス取得に向け進行中とのことだ。Nanuによれば、「焦点のメインはアジア(の顧客)になるだろう」。
海外駐在者や故郷に送金したい移民の一世など個人の利用を超えて、InstaRemは中小企業にもよく利用され、顧客のうち20%は中小企業が占めているとのことだ。ビジネスでの利用ではない顧客はコスト節約をありがたく思う中、ビジネス目的の顧客はより速い取引時間にも夢中になっているとNanuは話した。
「私達の中小企業のお客様のうち何社かは価格に惹かれ利用してくれていると思っていたが、最近ある一社が、InstaRemを利用する一番の理由は銀行よりも長く請求書の上に座っていられるからだと伝えてくれた」とNanuが思い出しながら言った。
言い換えると、即日海外送金は小規模なビジネスのオーナーにとって、支払期日の直前までお金を手元に置いておけるため、彼らのキャッシュフローを助けていると言える。
InstaRemは現在20名のスタッフでシンガポールを拠点にしており、シドニー、シンガポール、ムンバイ、ニュージャージー州にオフィスがある。Nanuは年末までに月間100万ドルの取引額を目標とし、同時に会社とサービスもネパールやブータンなど「より遠くの場所」を含むより明確な市場へと拡大させていくと話した。
InstaRemは最近南アジアの銀行口座を持たない層への新プロダクト開発を行っており、銀行への新サービスの提供のためそのメッシュネットワークへ入り込もうとしている。後者は、初めてのテックスタートアップへの投資を行ったFullertonとの関係が役に立つ領域だ。なぜなら、Fullertonは東南アジアの銀行に多数投資を行っているからだ。
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(翻訳:Kana Shiina)