医師専用SNS「Whytlink」を展開、リーズンホワイが総額1.6億円を調達

whytlink_top

医療分野で複数サービスを展開するリーズンホワイは、ファストトラックイニシアティブ東大総研から総額1.6億円を調達したことを本日発表した。リーズンホワイはこれまで、医療機関向けの分析ツール「リーズンホワイ・ストラテジー」や患者が自身で治療に適した医療機関を検索できる「yourHospital」などを手がけてきた。2015年6月からは医療従事者のネットワークの可視化をを目標に医師向けSNS「Whytlink(ホワイトリンク)」の提供を開始し、さらに今年の夏には医師から治療提案が受けられるサービス「FindMe」をローンチ予定だ。今回リーズンホワイの代表取締役を務める塩飽哲生氏に資金調達までの経緯と今後の展開について聞いた。

塩飽氏は前職で病院経営のコンサルティング業務に従事し、その中で医療機関の経営上の課題を感じたことがリーズンホワイの創業の動機となったと話す。リーズンホワイでは最初に、医療機関の経営判断に役立つ情報を提供する「リーズンホワイ・ストラテジー」を手がけた。このサービスで医療機関は特定地域の人口データ、疾患別の患者数、将来の患者数予測など多様な情報をまとめて閲覧することができる。「ストラテジーの目標は地域医療の見える化です」と塩飽氏は言う。今では複数の病院や官公庁、医薬品メーカーが利用するようになり、1社につき年間数千万円の収益があるそうだ。

ストラテジーの画面イメージ

リーズンホワイ・ストラテジーで見る患者数グラフ

リーズンホワイでは次に患者が疾病や医療機関について深く知るためのサービス「yourHospital」を2014年4月にローンチした。「yourHospital」では患者自身が自分の抱えている疾病について詳しい症状や治療法を知り、さらにどの病院がどのような治療を行っているかを調べることができるサービスだ。だが塩飽氏はこのサービスを運営する中で患者が求めているのは医療機関の特長より、個別の医師の得意分野や行っている治療といった情報であることに気がついたと話す。塩飽氏はそこで全ての医師の情報やネットワークを見える化することを考えたという。そしてそれが実現できれば、医師と患者が適切にマッチする効率の良い医療システムの構築につながるのではないかと考えたという。

まず各医師の情報をカバーするため、リーズンホワイは2015年6月に医師専用のSNS「Whytlink」を立ち上げた。Whytlinkはいわば医師のLinkedInのようなものと塩飽は言う。医師免許番号を厚生労働省に問い合わせて確認しているため、医師しか登録できない仕組みだ。医師は無料でWhytlinkのプロフィールに学歴、職歴、提出論文などの経歴や実績、他の医師からの推薦などを掲載することができる。SNS機能で医師は日々の活動を投稿したり、他の医師の投稿を閲覧したりすることで、他の専門医とつながって活発に情報交換することが可能となる。Whytlinkの特長は、治療に関する投稿にICD-10(国際疾病分類)に基づく疾病名をタグ付けできることだ。投稿が集まるほど疾患別に様々な医師の情報が蓄積され、さらに医師のネットワークも可視化できると塩飽氏は説明する。現在は500名ほどの医師が会員登録しているという。

whytlink_screen

医師専用SNS「Whytlink」

「Whytlink」のサービス拡充と同時に現在、患者向けの新サービス「FindMe」の開発に取り組んでいると塩飽氏は話す。今年の夏頃にアプリをローンチ予定だという。FindMeは、患者が医師を探すのではなく、医師が患者にアプローチするプラットフォームだ。患者が診断書をアップロードすると、ネットワークに登録している医師から受診や治療方法の提案を受けることができる。FindMeは確定診断のある患者を対象としたサービスで、まずはがん、脳腫瘍、心臓弁膜症といった60程度の治りにくい疾患に対応すると塩飽氏は言う。まだ具体的な価格などは決まっていないが、患者がデポジットを入れて医師から提示された治療や受診を決めた時に請求が発生する成功報酬型を考えているという。

FindMe画面イメージ

FindMeのアプリイメージ

「FindMeが目指すのは本当に治療を必要としている患者とその治療に適した医師とをマッチングすること」と塩飽氏は言う。現状の医療システムでは、総合病院などの医療機関に軽症患者から重症の患者まで集中してしまっていると塩飽氏は指摘する。例えば東大病院などを受診する外来患者の3割は風邪などの軽症患者なのだそうだ。このような状態では本当に治療を必要としている患者に専門医が治療を届けるのが難しくなる。FindMeはその問題を解決し、医療システムの効率化を図りたい考えだ。

この「医療システムの効率化」というビジョンは先日TechCrunchでも紹介した患者に名医を紹介するサービス「クリンタル」のビジョンと通じるところがあるだろう。それについて塩飽氏は似ている部分もあるがリーズンホワイが目指すのは「医療における患者の価値観を尊重したサービスの提供」と言う。他のサービスでは、サービス提供者が適切と考える医師を推薦する仕組みを取っているが、患者の中には西洋薬を望む人もいれば、漢方での治療を望む人がいるようにそれぞれ治療に関して異なる価値観があると塩飽氏は話す。リーズンホワイの一連のサービスは、患者の価値観に沿った治療とマッチングできる環境を整えることを目指していると塩飽氏は言う。それを実現するためには、多くの医師の情報を集めて可視化することが重要だと考えているという。

今回の資金調達でリーズンホワイは医師のネットワークを拡充すること、そしてFindMeの開発に注力するという。また、ゆくゆくは海外市場への進出も計画している。特に人口およそ13億人を抱えるインド市場に注目しているそうだ。「最終的には一つ一つの病院検索だけでなく、世界中の研究データが集まるサービスにしたい」と塩飽氏は話す。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。