アプリストアを超えたアプリの普及を狙う、Blackstormが楽天などから3350万ドルを調達

img_3742

App Storeのアプリ管理は、新米開発者にとって難しい仕事の内の1つだ。ユーザーに気付いてもらうのは難しく、App Storeの体験もそんなに良くないし、今後Appleは検索広告を導入する予定だ。この事態をさらに面白くするのは、メッセージ・ボットを含め、従来のアプリとは別のプラットフォームにも関心が集まっていることだ。

最終的に、メッセンジャーボットや理論的には今後発展するウェブブラウザ体験といった複数のプラットフォームにまたがって通用する、シームレスなアプリ開発を行う手段が必要になる。Alsop Louie partnersのパートタイム・パートナーを務めるErnestine Fuが新しく立ち上げたBlackstormは、それを実現させようとしている。Blackstormは楽天、Highland Capital、Oculusの役員、 Alsop Louieを含め、複数のエンジェル投資家から累計3350万ドルを調達したことを発表した。

「現在のマーケットについて考えてみると、誰もがアプリを使用しています。アプリはiOSとAndroidであり、それらの配信はAppleとGoogleが握っています。UberやLyftといった大企業も、これらのアプリストアに完全に依存して構築されています。次に何がくるか考えてみてください。メッセンジャー、アプリ内アプリ、IoT、モバイルブラウザといった形でアプリが存在し、新たな配信プラットフォームが出てくることでしょう。私たちの会社の目標は、アプリストア・プラットフォーム以後の時代におけるソフトウエアの取引と配信のインフラを担うことです」。

Blackstormはメッセンジャーボットとモバイルブラウザから着手し始めるが、最終的には手がける開発プラットフォームと配信を、IoTや車内エクスペリエンスといった多様な新興コンピューティングプラットフォームにも広げられることを期待している。確かに、プラットフォームシフトは定期的に起きるものだが、それを予測するのは難しい。少し前までウェブ版Facebookが開発者にとって最も主要なインターフェイスになるように見えた。一部のゲームなどではうまく機能したものの、最終的に利用率のほとんどがモバイルへと移行した。

現在、Messngerアプリの開発レースが始まっている。さらにAppleはiMessageサービス(とその他のサービス)をサードパーティー開発者に開放する。FacebookやSlackも自社プラットフォームでボットや他のサービスを開発してもらうために開発者を惹きようと躍起になっている。これは、しばらく前から言われているように、中国のWeChatが広めた体験に追いつくための施策だろうとFuは指摘する。

「新しいプラットフォームができる度に新たな問題が出てきます」とFuは言う。「2つ、突出した問題があります。1つは、開発者が新しいツールやテクノロジーを活用するのが難しくなること。もう1つは、最初はユーザーへの配信がとても非効率的ということです。ライフサイクルの終わり頃には、さらに非効率性は高くなり、マーケティングに何百万ドルも出せる最高位アプリしか大きなオーディエンスを獲得できません。従来のプラットフォームシフトはこの痛みに何年も耐え、相互的なバランスを得られるように進化することができましたが、現在、コンピュータープラットフォームは爆発的に増えています」。

Blackstormは今のところ、2つのプロダクトを展開している。FuがNeo Storeと名付けたプロダクトとメッセンジャーや他の種類のユーザー体験にまたがって通用する開発環境だ。前者は、例えばアプリストアのみならず、例えばウェブポータルを介してアプリの追加コンテンツを配信したい通信事業者向けのホワイトレーベルサービスとFuは言う。後者は、IDEを内包しているが、その最終的な目標は体験の種類にかかわらず、複数のプラットフォームにアプリを配信することを簡単にすることだ。

新しいプラットフォームが登場すると、いち早く開発に着手し、アーリーアダプターを獲得するために開発競争が発生する。もちろん取るに足らないアプリも出現するだろうが、その内例えばメッセンジャーでもその機能を活用して、便利なユースケースを開発することができるだろう。最初は、1つのプラットフォーム向けに開発を行うことになるだろう(つまり最大のFacebook向け)。開発者は後々、そのアプリを他の既存のプラットフォーム、そして今後登場するだろう新規のプラットフォームへと裾野を広げる方法を見つける必要が出てくる。Blackstormはそれを実現するための助けになりたい。

また、ユーザー行動の変化も起きるだろう。私たちはこれまでアプリストアからダウンロードした、いくつもの四角いアイコンを使ってきた。開発者がメッセンジャーにアプリをリンクするところから、実際にダウンロードして、最終的にアカウントを開設するまで多くのユーザーを取りこぼしてしまう。スマホの四角いアイコンはなくならないだろう。すでにスマホ画面にウェブアプリを保存することはできるようになった。しかし、アプリを共有したり、遊んでみたりする全体の体験は、ユーザーがそのアプリを使いたい瞬間のいかなる環境にも対応できるように変わっていくだろう。

Appleはアプリストアの質を高めるために多くの策を講じてきた。最近は、放置されたアプリやスパムっぽい名前のアプリを削除し出した。これらは、アプリストアの体験を向上させることを意図しているが、それが成功するかどうかは分からない。開発者はオーディエンスがいるところに向かう。そして、シームレスな開発体験はアーリーアダプターを取り込むことにもつながるかもしれない。

Fuは、いつの日かBlackstormがアプリストアに取って代わることを期待している。それはかなり野心的な目標だが、近い将来に実現するかと聞かれたら、そうではないかもしれない。しかし、当面の間、アプリストアと共存することができないというわけでもない。それに、誰もユーザー行動のシフトが起きた未来がどのようになるかなんて予測できない。WeChatは、アプリストア以外で多様なアプリが利用される状況が実現可能と証明する一つの成功性だ。他の新たなプラットフォーム、例えばVRやインターネット接続デバイスなども誕生したばかりで、広く使われることになるかもまだ未知数だ。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。