Appleはライバルが安い製品を出しても気にしない。次の大物自社製品が前の大物を食っても気にしない。金の成る木を買うことも、株を分配することも考えない。今日(米国時間2/12)Goldman Sach’sのカンファレンスで、Tim Cookは現在にも過去にも捉われない強すぎる帝国の傲慢な王を演じた。
Wall Street JournalがCookの1時間にわたるトークのすばらしいライブ中継記事を掲載している。本誌はハイライト別の記事を書いた。しかし、最も重要なのは、Appleの規模と勢いが、テクノロジー世界における同社独特の優位性を生み出していることだ。それは〈視野の狭さ〉を負債ではなく資産にしてしまう能力だ。
Appleは機敏に方向転換するには大きすぎる。それは全速力で走る貨物列車であり、機関室ではCookがススだらけの機関手にもっと石炭を放り込めと叫んでいる。iPadがタブレット市場を圧倒している、だからAppleはもっとiPadを作る。Appleストアは年間平均5000万ドルを売り上げている、だからさらに30店舗を中国やトルコなど世界各国に作っている。株主はAppleが金をくれれば大喜びするし金は十分にあるので、450億ドルを株主に返し、優先株配布の承認に関する「ばかばかしいスライドショウ」裁判は無視する。
Cookは、目の前に線路が敷かれていることを知っているので、前進するために地平線のあら探しをする必要がない。市場にはたしかに安いスマートフォンが出ているが、その騒がしい妄想にとらわれることの方がAppleにとっては脅威だ。リソースを分割して「良い」低価格スマートフォンを作ることは、Cookの考えるはるか最高のスマートフォンを作る邪魔になる。
この位置をキープしていれば、顧客は十分にいる。今後数年で市場が倍になると彼は信じているからだ。「われわれの北極星は、すばらしい製品」なので、彼らはその方向に進み続ける。安いiPhoneが欲しければ旧モデルを買えばいい。ピクセル数最大の画面も、最高速のCPU内蔵のパソコンも、最大メガピクセルのカメラも、実はあなたは欲しくない。「どうでもいいだろう?すばらしい体験が欲しいんだ・・・真実は、顧客が欲しいのはあの〈アハ〉という瞬間なのだ」とCookは息まく。
大企業のスーツにネクタイ的思考では、既存製品を共食いする製品を作らない。しかしAppleはタートルネックのテク企業だ。ノーネクタイのCookは壇上で、「われわれの基本理念は、自分が食わなければ誰かが食う、だ」と言った。だからもしiWatchを作ったためにiPhoneやiPodが売れなくなっても構わない。人々がSamsung Galaxy Watch S 7やGoogle Timeや、いつか〈腕〉市場に参入するであろう誰かの製品を買うよりは良い。人々はAppleを、あれほどiPodビジネスが成功しているのにiPhoneを作るのはクレイジーだと思った。クレイジーなキツネは抜け目がない。ミツアナグマもクレイジーだ。ミツアナグマは気にしない。
そして、われわれはAppleが何か大きな金を生むビジネスに怯えてそころ買収するのを見ることはないだろう。彼らには自分たちのロードマップがあり、そのマジックを速く、強くするために会社を買収する。Cookは、「もし大きな会社がわれわれを助けてくれるなら、それには興味がある」と言った。それ以外、キャッシュは銀行にある。あるいはもっと具体的に言えば、海外のタックスシェルターに。
これは、Appleが袋小路に激突することはないとか機関室の中に問題がないとかいう意味ではない。
景観を無視することが許されるのは予測が正しい場合だけであり、人間水晶球のスティーブ・ジョブズはもういない。恐らく次に来る物は、スマートウォッチではなくGoogle Glassスタイルのアイウェアだろう。モバイル製品で大ポカをやればAppleはたちまち脱線するかもしれない。
今日Cookが口にした最大の嘘は、「Appleにはソフトウェアのスキルがある」だった。われわれのホーム画面へのGoogleの侵攻状態を見る限り、Appleのソフトウェアスキルはひどく欠けている。もしスマートフォンのハードウェアがピークに達し、端末がソフトウェアを包むたけの殻になれば、Appleの機関車はプスプスと音を立て始めるかもしれない。
しかしCookは、Apple最大の危機はスピードを緩めたり雑音に惑わされることにあると敏感に察知している。「われわれは統制されていて思慮深い」と彼は言った。ジョブズはその集中力を賛えられ、Appleを同じやり方で維持できる者はいないと多くの人が心配した。今、Cookはウォール街をじっと見つめて、決してひるまないと誓った。あいまいなことを言わたい。彼は気にしない。
Cook is the honey badger, googoo g’joob.
[画像提供:Amazing Creature, Business Insider / Owen Thomas]
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(翻訳:Nob Takahashi)