お客様よりWebサイトの海外展開についての質問があり、検索エンジン向けの多言語処理について改めて整理を行いました。今回はその内容についてブログにまとめたいと思います。現在日本含め10か国に展開されている当社のアプリ情報サービス「Appliv(アプリヴ)」で行ったことも知見も踏まえてご紹介します。
サイトを国際化する際に検索エンジンへ正しく情報を伝えられなければ、検索流入の大幅な機会損失が起きてしまう可能性もあります。今回は、検索エンジン(Googleに限定します)に正しい処理をしてもらうためのポイントについてご説明します。
※外国語でのSEOや、Baiduなどの海外の検索エンジンに対する最適化ではなく、Googleに正しく情報を伝える為の解説記事です。その旨ご理解いただけますようよろしくお願いします。
※この記事はSearch Consoleヘルプの記事を元に書かれています。
参考:多地域、多言語のサイト
海外展開の際抑えておきたいSEO要件
以下の点については最低限チェックしておくことをおすすめします。
注:サイトの規模・形態によってはこの限りではありません。
それぞれについて、事例を交えながら解説したいと思います。
ページが特定の地域にターゲットされていることを適切にGoogleに伝える
ページが特定の地域を対象にしていることを検索エンジンに認識させましょう。
この部分を怠ると、検索エンジンが特定の地域にいる検索ユーザーに対して、そのユーザーと異なる地域の自社サイトを表示させてしまう恐れがあります。
検索エンジン(Google)がサイトの地域を判断する要素としては以下の5点があります。
地域判断の効果:大
- 周辺地域情報を持つと認識されたページからのリンク
- ccTLD
- 地域ターゲット設定
地域判断の効果:中
- その地域の言語
- IPアドレス
効果の高さの理由も含め、それぞれ解説します。
周辺地域情報を持つと認識されたページからのリンク
その地域の企業サイトや、飲食店のサイトなど、住所や電話番号、その地域の言語等が記載されているようなローカルサイトからリンクをされると、検索エンジンはリンク先を地域的に関連性のあるサイトであると判断します。
そういったリンクが多ければ多いほど、判断の助けとなるでしょう。
とはいえ、立ち上げたばかりの海外サイトがそういったリンクを獲得するのは多少なりとも時間がかかると思われます。
ccTLD
ccTLD(country code Top Level Domain)とは、国内トップレベルドメインと言われ、各国に割り当てられた固有のドメインとなります。
(日本で言うと「.jp」であり、中国であれば「cn」にあたるものです)
サイトにccTLDを用いた場合、検索エンジンはサイトがそのドメインに対応する国のものであると判断します。
一方で、「.com」や「.net」ドメインはどこの国にも属していないgTLD(generic Top Level Domain)と呼ばれ、一般的に地理的制限なしに世界のどこからでも登録が可能です。
その特性上、地域属性がドメインに含まれないため検索エンジンはドメイン名だけではどの地域に対応したサイトか判断することは出来ません。
ccTLDの注意点
なお、中国は現地法人がないと「.cn」ドメインが取れないなど地域ごとにイレギュラーなケースが国ごとにあるケースがあります。
また本来モンテネグロのccTLDである「.me」やツバルのccTLDの「.tv」はgTLD扱いとしてみなされますが、地域の認識に時間が掛かる可能性も否定できません(現在は世界的に使われているためほとんどありませんが)
※7/27修正:.meと.tvを「gTLDとして採用されている」と書いていましたが、厳密にはgTLDではありません。表現として適切ではないので修正いたしました。
ジェネリック国別コード トップレベル ドメイン(ccTLD): Google は、.tv、.me など一部の国別コード トップレベル ドメイン(ccTLD)を gTLD として扱います。こうしたドメインは、ユーザーやウェブマスターから、特定の国をターゲットとするものというよりも汎用的なものとみなされることが多いためです。
引用:インターナショナル ターゲティング – Search Console ヘルプ
特定の地域のドメイン取得の際は一度調べてみることをおすすめします。
地域ターゲティング設定
ローカルのリンクを獲得できておらず、gTLDを使用している場合、GoogleSearchConsoleのインターナショナルターゲティング(地域ターゲティング)を使用することでGoogleの検索エンジンにページがどの地域に表示されるべきか伝えることが可能です※
地域ターゲティングとは、特定の国の特定の言語を話すユーザーに向けて、国のバージョンを検索結果に表示させることをGoogleに伝えるための処理です。
7/27修正:地域ターゲティングで特定の言語をターゲティング出来ないので、修正いたしました。
※この操作はサイトがgTLDであることが必須です
参考:インターナショナルターゲティングを行う方法
GoogleSearchConsoleの「検索トラフィック」の項目にインターナショナルターゲティングがあります。こちらの「国」のタブで設定が可能です。
その地域の言語 / IPアドレス
その地域の言語やIPアドレスもまた、検索エンジンが地域を判断するのに役に立つ要素となります。
しかし英語やスペイン語、ポルトガル語のように各国で使われている言語の場合検索エンジンは地域を断定できません。
またIPアドレスについても海外サーバーを用いていたら、当然IPアドレスはその地域と異なるものとなるので、検索エンジンはIPアドレスで地域を確実に判定することは出来ないと思われます。
URL構造が適切にGoogleに伝えられる仕様にする
多言語、多地域のウェブサイトを展開する際に、サイトの各ページを異なる地域にターゲティングできるURL構造にする必要があります。
注意していただきたいのが、ccTLD(国別コードトップレベルドメイン名)の場合、対象の国コードの地域以外での地域でターゲティングが出来ないことです。
日本で言えば、.jpドメインを用いていると、そのドメイン用いて海外展開を行うことは難しいです。
各地域、各言語ごとにURL構造を設定するのには、主に4つの手段があります。
抜粋:多地域、多言語のサイト
日本では多言語化する際はURL構造を、設定が簡単なgTLDを使用したサブドメインか、サブディレクトリで設計することが多いです。
表に書かれている通り、サブドメインかサブディレクトリかというところは一長一短です。
SEO云々というよりは、サーバーを複数地域で管理するか?サーバーを一元管理するか?等、サーバーのリスク管理等の扱いを鑑みて決めると良いと思います。
同地域複数言語に対応する時のURL構造
日本の場合基本的に日本語に対応していれば問題ありませんが、アメリカやヨーロッパ諸国等、同地域で複数言語が使われている国もあります(アメリカなら英語とスペイン語など)
そういった場合は言語対応と地域対応を同時に行わなければいけません。
その場合はサブドメインで国名、サブディレクトリで言語を区別などするケースが多いです※
例:仏版英語ページのURLの場合
http://fr.example.com/en
※ディレクトリで国ごとに分ける場合、例えば大規模リニューアルの時にコンテンツ構造の大幅刷新したい際の柔軟性が下がってしまいますので、サブディレクトリで国を切り分ける方法はあまり推奨しません。
国際展開を行っているサイトのURL構造の例
Appliv
アプリヴは日本サイトに関してサイトドメインが「.jp(ccTLD)」なので、英語版汎用URLをgTLDの「.com」で取り、海外サイトについてはサブドメインを国名で設定しています。
日本: http://app-liv.jp
イギリス※: http://gb.app-liv.com
オーストラリア: http://au.app-liv.com
※7/27修正:ドイツ版とお伝えしていましたが、イギリス版の誤りでしたので修正いたしました。
食べログ
大手グルメ情報サイトの食べログは、言語ごとにサブディレクトリで切っている模様です。
※7/27修正:予想に足る十分な根拠がありませんでしたので、修正いたしました。
日本: http://tabelog.com
韓国: http://tabelog.com/kr/
中国: http://tabelog.com/cn/
Yelp
ローカルビジネスレビューサイトとして国際的に展開しているYelpは、サブドメインを言語、ドメインをccTLDで地域指定に利用しています。
日本: https://www.yelp.co.jp/新宿区
ベルギー(英語): http://en.yelp.be/新宿区
ベルギー(仏語): http://fr.yelp.be/新宿区
言語アノテーションを適切に設定する
複数の言語で同じ内容のコンテンツを展開している場合、適した言語・地域のURLで検索結果に表示させる必要があります。そのために必要なのが言語アノテーションです。
※言語アノテーションとは、複数の言語用にページを分けて構成されているWebサイトの構造をGoogleに認識させるために、セクション、もしくはXMLサイトマップに記述するタグのこと。
rel="alternate" hreflang="x"
属性
をヘッダーのHTMLリンク要素、もしくはHTTPヘッダー、サイトマップ※に記述することで、適した言語バージョンを検索結果に表示させるようGoogleに示すことが出来ます。
※マークアップの代用としてサイトマップで言語バージョン情報を送信できます
言語アノテーションの例
Applivの場合、同地域多言語で展開することも想定しているため、hreflang属性の値を
en-gb : イギリスの英語版※
en-ca : カナダの英語版
のように記述しており、言語コードの後に国コードを追加することでそのページの地域を限定しています。
※7/27修正:ドイツの英語版とお伝えしていましたが、イギリスの英語版の誤りでしたので修正いたしました。
言語アノテーションの注意点
Applivのように、複数の国で使われている言語のページを特定の地域に限定する場合は、「[言語コード]-(ハイフン)[国コード]」で指定して下さい※
また言語アノテーションは個々のページ内容の対応関係に従って、個別の値を設定して下さい。
※国コード単独で指定をしても、検索エンジンは自動的に言語の指定をしません。
文字コードは統一する
文字コードをざっくりと説明すると、コンピュータ上で文字を扱うために、文字に割り当てられた数値のことです(例えば「A」という文字は1番、「B」と言う文字は2番、「文」と言う文字は500番など)
文字化けを防ぐために、文字コードはPCで国際的に文字判別ができるものにし、言語ごとに異なるものにしないようにすることを推奨します。
※ちなみに、日本語はインターネット上では特殊な文字なので、世界で日本語の見られるブラウザはそう多くありません。日本語のページはShift_JISが使われていますが、海外のサイトのほとんどはUTF-8かUCS-2です。世界の主要な言語のほぼすべての文字を収録したコードであるため、海外で一般的に使われています。なので文字コードはそれに即した形でやることが無難です。
参考:Unicodeを使った多言語Webサイトの構築[PDF]
その他注意点
各言語1 URLとし、Cookieやブラウザの言語設定、ユーザー認識言語等でコンテンツを切り替えないようにしてください。この処理を行うと、検索エンジンがサイトのすべての言語バージョンを見られなくなる可能性があります。
またユーザーが各言語を見られる状態にしておくために、各言語バージョンへの動線を用意しておくことをおすすめします。
Applivの例
食べログの例
まとめ:海外展開においても、SEOを意識しないと機会損失を起こしかねない
今回は自社サイトを国際化する際、Googleの検索エンジンに正しく情報を伝え、検索流入の機会損失を起こさないために、チェックしておきたいSEO要件について解説しました。
ターゲットとなるユーザーにとって価値のある情報をコンテンツとして増やしていくことがSEOにおける至上命題ではありますが、検索エンジンに正しくサイトの情報・価値を伝えるための技術的な最適化も忘れてはいけません。
海外展開におけるサイトの多言語化、他地域化においては、ただ外国語に対応させるだけではSEOとしては不十分です。
Googleの判定能力が高まっているとはいえ、これらの要件を漏らすと、各言語圏の検索結果に適切なページが表示されない恐れがあります。
各言語のサイトを持っているのに各言語圏のGoogleの検索結果で日本語のページが表示されてしまったら、当然現地の方はクリックしません。設計にも関わる部分なので、あとから気づいても取り返しの付かないことになっていることも考えられます。
是非、ご自身のWebサイトの海外展開を考えている方は、「対象の地域・言語向けのWebサイトであることが検索エンジンに伝わっているか?」ということに注意を向け、これらのポイントについて一度チェックをしていただければと思います。
【多言語・多地域サイトを初めて制作する方へ】サイトの国際展開で抑えておくべきSEO要件はナイル株式会社 - SEO HACKSで公開された投稿です。