TechCrunch Tokyo 2016にも登壇した連続起業家・木村新司氏。木村氏が立ち上げた決済サービスのスタートアップAnyPayでは、11月17日、割り勘など、友人間のお金のやり取りに利用できる決済スマホアプリ「ペイモ(paymo)」を発表、事前登録サイトでの申し込み受付を開始した。サービスの提供開始は12月中旬を予定している。初期費用や月額費用は無料で、キャンペーン中は利用手数料も基本無料となる。
AnyPay社では、URLをメールなどで送ることで個人間で商品・サービス購入の決済ができるサービス「AnyPay」を9月1日にローンチ済み。木村氏は「サービスは順調に伸びている。今までの決済サービスと違うところは、友だち間での支払いに使われているところ。我々はそこを追求していきたい」と言う。
ペイモではスマホアプリ上で友だちを選んでお金を払える。SNSのような友人管理や、メッセンジャーもあり、海外で先行する決済アプリ「Venmo」に似た機能を備えているようだ。ユーザーは支払いの場面では登録したクレジットカードを利用し、受け取ったお金は別の支払いに利用するか、登録した銀行口座へ振り込むことができる(振込手数料は必要)。「飲み会の割り勘など、スマホで友だちと現金いらずでお金のやり取りをしたい、というニーズを解決したい。(URLを作成して送る、というAnyPayの仕組みから)もっと簡単にしていきたい、というのがペイモの大きなコンセプト」と語る木村氏は、「ペイモでは、通販などの決済によくある“遠く対遠く”の支払いだけでなく、近くの人との間でスマホ決済ができることを目指している」という。
「メルカリなどでも単に品物とお金のやり取りで終わらず、お金とコミュニケーションが近づいてきている。我々が対象とするのはお金がコミュニケーションとともにある世界。それをスマホで完結できるようにしたのが今回のペイモ。友だち機能やコミュニケーション機能は大切にしたい」(木村氏)
スマホ決済サービスは、海外でVenmoやWeChat Payなどが既に展開されているが、日本で同様のサービスを行うには大きく二つの課題がある。一つ目は、送金サービスとして決済機能を提供する場合、事業者は資金移動業者としての登録が必要で、またユーザーも本人確認が可能な個人情報を提出する必要がある点。これについて、木村氏はこう説明する。「(個人が)決済サービスを使うときに、単に送金するシーンというのはなくて、何らかの対価があるはず。となるとそれは“送金”ではなく、通常の通信販売と同じ“支払い”を扱う決済だ。お金だけが動く場面は(我々のサービスでは)想定していない」(木村氏)
もう一つの課題は、日本ではアメリカや中国と異なり、預金口座と紐付いて現金決済ができるデビットカードがまだ普及しておらず、銀行からスマホアプリに“お金”を移す手段がクレジットカード中心であることだ。こちらについては、「ウォレットとしてできるところから始めていきたい」と木村氏は話す。「クレジットカードで完結する決済は、カード手数料がネックとなって広がりがなくなってしまう。飲み会の割り勘代を受け取るのにいちいちカード手数料を払わなければならなかったら、誰も使わなくなる。受け取ったお金は別の支払いに使ったり、現金として受け取れるようにして、そこはクリアする」(木村氏)
サービス発表と同時に開始された事前登録では、総登録者数に応じて、ローンチ後に実施される友だち招待キャンペーンで受け取れる「ペイモポイント」の数が変動する、事前登録キャンペーンも実施している。ペイモポイントは支払いに使えるほか、指定した口座で現金としても受け取れるという(この場合も振込手数料は必要)。「とにかくサービスを使ってもらって、スマホに“お金”が貯まる状態をまずは作る。貯まってきたら、今度はそのお金を店やサービスで支払いに使いたくなるはず」(木村氏)
ペイモについては「各国の環境に合わせて調整は必要だが」と断った上で、海外展開も考えているという木村氏。一方、AnyPayの正式ローンチ時のインタビューでは、フリマアプリ進出にも言及していた木村氏だが、今回のインタビューでは「物販では決済より、個人がトラフィックを集めたい、というマッチングのニーズの方が高い。だがAnyPayの“支払い”という場面で見ると、フリマや通販のような“遠く対遠く”より“近く対近く”で使われていることが多い。フリマについてはメルカリやラクマに任せて、近くと近くで使われる支払い機能の便利さを追求する」と話している。