Rocket Internetが自分たちの事業や投資先企業を黒字化できないでいるため、将来的には資金を調達しづらくなるのではないかと考えている人がいるとしたら、考え直した方が良い。今週、ベルリンに拠点を置くRocket Internetが、これまでにヨーロッパのVCがテック系ファンドとして調達した中で最高額だと同社が言う、10億ドルのファンドを組成したと発表した。
Rocket Internet Capital Partnersファンドと呼ばれるこのファンドでは、アーリー・レイターどちらのステージにある企業へも投資を行っていく予定で、これはRocket Internet自体の方向性の転換も示唆している。
Rocket Internetは、他の企業が作り上げたビジネスモデルを利用した(”クローン”という言い方をされているのを聞いたことがあるかもしれない)世界中のEC企業の成長をサポートするインキュベーターとして知られており、今回組成したファンドでは既存の投資先企業のほか、新しいスタートアップへも投資を行っていく予定だ。
今月に入ってからRocket Internetは、ロンドン発のソーシャルレンディングスタートアップであるFunding Circleの1億ドルのラウンドに参加していた。担当者によれば、同社はRocket Internet Capital Partners(RICP)を通じた投資を既に1年以上行っている。
「RICPは、2016年1月に第一号ファンドのクロージングをむかえて以降、いくつかの企業へ投資してきました。このファンドでは、マーケットプレイスやEC、フィンテック、ソフトウェア、旅行といった分野に集中して投資を行っています。投資先には、Rocket Internetの傘下にある企業もそうでない企業も含まれています」と担当者は話す。
現在どんな企業がRICPのポートフォリオに含まれていて、今後どんな企業を狙っていくのかということについて彼女は話してくれなかったが、一部の情報は既に公に知られている。最近の話で言えばFunding Circle以外にも、RICPはリクルートサービスUShiftのシードラウンドに参加し、Rocket Internet傘下のオンラインファション企業を統括するGlobal Fashion Groupへは3億6500万ドルという大金をつぎ込んでいたほか(ファッションもRocket Internetの問題のある事業のひとつで、結果的にこのラウンドもダウンラウンドとなった)、エンタープライズ向けにケータリングサービスを提供しているCaterWingsの小規模ラウンドにも参加していた。
これまでにも、投資先企業や上場企業であるRocket Internet自体の財政状況が問題になったことはあったが、投資家は今でも長期的にはそれなりのリターンが見込めると考えているようだ。いくつかの企業が大ヒットすれば状況は大きく好転する可能性があり、実際にRocket InternetはこれまでにもGrouponやeBayなどに対して、巨額の売却を行ってきた。
今回のファンドの組成にあたり、Rocket Internetは全体の14%にあたる1億4000万ドルを投じ、残りの資金は「金融機関や年金機構、資産管理会社、基金、個人の高所得者といった世界中のさまざまな投資家」から集められた。
「10億ドルの壁を越えたということが、RICPが提供する魅力的な投資チャンスに熱意を感じている一流投資家の強い興味を表しています」とRocket Internet CEOのOliver Samwerは声明の中で語った。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)