初めて行くサロンや飲食店に足を踏み入れるのにはちょっと勇気がいる。個人経営のサロンだったらどんな人が対応してくれるのか気になるし、ネットで見つけたクーポンは使えるのかなど聞きたいこともある。電話するほどではないこともチャットでなら気軽に問い合わせができ、すぐに対応してもらえたのならその店のサービスを利用してみようという気にもなりやすいだろう。ただ、個人事業主や小さな組織にとっては営業時間中ずっとお客からのメッセージ対応したり、そのために専任の人を置いたりするのは難しいかもしれない。ミームグライダーは本日リリースした「チャットポート」で、そうした小規模組織や個人事業主でもチャットによるカスタマーサービスを気軽に取り入れられるようにしたい考えだ。
自宅でサロンを運営している個人事業主や数人で運営しているスタートアップ企業なら、自社サイトを持っているところも多いだろう。チャットポートはウェブサイトにスクリプトを1行入れるだけで利用できるオンラインサポートツールだ。カスタマーサポートの担当者がチャットポートのサポート画面を開いている時だけ、サイトにチャットのウィジェットが表示される。訪問ユーザーから質問があれば、担当者はリアルタイムでユーザーに対応できる。サポート画面を閉じている間は、ウィジェットは問い合わせフォームに自動で切り替わる仕組みだ。少ない人数の組織でもチャットやメールで効率的なカスタマーサポートを提供できるようにするのがチャットポートの狙いだ。
店舗や個人事業主なら、Facebook MessengerやLINE@などを使う手段もある。しかし初めて店舗などに問い合わせをする時は、個人のIDを用いるLINEやMessengerより匿名チャットの方が連絡しやすいとミームグライダーの代表を務める杉本宏史氏は考えている。正式ローンチ前からチャットポートを試験的に導入している個人経営のヘッドスパでは、新規のお客からどのような施術が受けられるのかといった質問や予約依頼までチャットで来るようになり、サロンと新規顧客との接点になっていると杉本氏は言う。
杉本氏は前職でニフティに勤め、40代に入ってから起業した。ニフティではサービス企画や新規事業開発に携わり、ベンチャー企業と接する機会もあったという。そうした経験の中で、「一生に一度くらい、起業する側に回りたい」という思いが芽生え、2003年10月にミームグライダーを創業するに至ったそうだ。杉本氏はこれまでに、安定性に優れたコミュニケーションサービスが構築できるErlang/OTP言語を使ってC向けサービスをいくつか手がけている。今回ローンチしたチャットポートについては「大企業にあるようなサポートセンターの代替手段という位置付けではなく、個人事業主やスタートアップが電話の代わりにお客さんと直接話せる機会を提供したい」と話す。
チャットポートの利用価格は年間契約で1万1760円(月額換算だと980円)だ。今後は利用者の獲得に向け、Web制作会社やWebデザイナーとの提携を進め、間接販売チャネルの拡大を計画しているという。ゆくゆくは人工知能を使ったチャットボットサービスなども展開したい考えだと杉本氏は話している。