文字コンテンツを読み上げるパーソナリティーをフォローすることで、細切れの音声コンテンツを定期的に受け取れるクラウド放送局ともいうべき「Voicy」については2016年9月のローンチ時にお伝えした。そのVoicyがエンジェルラウンドとして12人の個人投資家から資金調達をしたとTechCrunch Japanに明らかにした。
金額は非公開というが、関係者らの話によると数千万円前半とみられる。出資したのは平澤創氏(フェイス代表)、島田亨氏(楽天常務執行役員)、谷家衛氏(お金のデザイン創業者)、高野真氏(Forbes Japan編集長)ほか8人。Voicyとシナジーのある事業会社のCEOや技術顧問が含まれるそうだ。
「声で新しい文化を創る」という狙いで2016年2月に創業したVoicyは現在iOSアプリを提供中で、資金調達に合わせてアプリのアップデートもアナウンスしている。ちょっと使ってみた感じ、1.5倍・2倍速再生、ジャンル分け・タグ機能の追加、ランキング表示、写真投稿機能の追加、コメント返信機能の追加など、プラットフォームとして進化している。
正直、ランキングを上から見ていっても今のところぼくが聞き続けようと思うコンテンツはない。だけど、容れ物としてのVoicyは面白い感じに進化している。
例えば、1.5倍速で細切れに毎日新聞のニュースを読み上げてくれる機能なんかはせっかちなぼくには実用的でいいなと思った。最近AirPodsを耳から外さないぼくには音コンテンツが足りていないので、もう少し幅広いジャンルのチャンネルが出てくればと思う。
テレビやネットでニュースに触れたとき、家族や友人、同僚と「困ったもんだよね」というような感慨を述べるようなことはみんなやっていると思う。ちょうどそんな感じで、Voicyの多くのニュースチャンネルは「ニュース→コメント→ニュース→コメント」(すべて声での読み上げ)という構成になっていて、「体温のある情報を届けるプラットフォーム」と掲げるVoicyの狙い自体は、十分に分かるような形ができてきている。チャンネルごとにコメント欄があって、ざっと眺めただけでもコミュニティーが発展する可能性を感じるところだ。例えば、妊活・妊娠・出産・子育て情報を扱うメディアのコンテンツを読み上げて、ママの日常や悩みを語るチャンネルにはママコミュニティーが生まれつつあるのは良い例だと思う。
「ベンチャーニュースで言いたい放題」というチャンネルもなかなか興味深い。「ベンチャー支援家K」を名乗る、かすかな関西弁なまりのある人物(誰だろうか?)が結構突っ込んだコメントをしている。
テキスト情報に比べると音声コンテンツは「炎上耐性」があるように思う。テキストは断片的な切り出しや伝播が非常に容易だし、ピンポイントに誰かの発言にコメントを付けるようなことも簡単だ。このためソーシャル上で「炎上」が日常化しているが、ポッドキャストは案外燃えない。10分とか30分のコンテンツに対して、その中で誰か何かエグいことを言っていたとしても、ちゃんと聞いた人以外には分からないので延焼速度が遅いのではないかと思う。もちろんテレビ番組での著名人の発言がニュースサイトで炎上するのは日常光景だが、それは数千万人、数百万人がみているチャンネルの話。ロングテールの小さなコミュニティーが多数ある世界だと「ぶっちゃけ話」がやりやすいのではないだろうか。
プラットフォームビジネスにとって容れ物とコンテンツは鶏と卵の関係があるだろう。Voicyは良い感じの容れ物ができつつあるように見える。ポッドキャストとも違うし、YouTubeとも違う何かが生まれるのかもしれない、と感じるさせるには十分に機能はできてきている。
Voicyの緒方CEOによれば、コンテンツ面でも新しい取り組みを続けている。
サービスリリース時には提携メディアとしてスポニチ、毎日新聞、THE BRIDGE、ぴあ映画生活など8社からスタートしていたが、現在は西日本新聞やアルク、松竹などと新たに提携し、25社へと拡大いている。ランキングで見るとアルクのキクタン英会話がトップになっている。チャンネルを持つことができるのはオーディションを通過した人だけだが、この「パーソナリティー」も40人から140人に増え、オーディションは継続して実施している。ユーザー1人あたりのアプリ使用時間は1日平均10分を超えたそうだ。