介護事業所向け支援システムの「Care-Wing」を手がけるロジックは5月19日、グローバル・ブレインおよびSMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施し、合計で1億5000万円を調達したと発表した。
Care-wingは、介護事業者が抱えるさまざまな負担を減らすことを目的につくられた支援システムだ。
介護事業者はCare-wingを利用することで、介護現場でのIT化とペーパレス化を実現することができる。これにより、事務処理の負担を減らせるだけでなく、請求ミスの防止や経費の削減ができるという。シフト表の作成や、各種サービス計画書の作成、サービス毎の賃金計算などをシステム上で行うことが可能だ。
Care-wingには介護ヘルパーの行動管理機能も備わっている。介護者の自宅にはICタグが設置されており、ヘルパーに支給されたスマートフォンとICタグを近づけることで、入退出の管理をリアルタイムで記録することができる。これにより、介護事業者はヘルパーが訪問中の場所を把握できるようになるだけでなく、訪問忘れを防止することも可能だ。
不正防止のため、このICタグは一度剥がすとデータが破損する仕組みになっている。また、スマートフォンとICタグ間の通信にはNFCを採用している。
このNFC技術はヘルパーたちの情報管理手段にも利用されている。各ヘルパーには専用のICカードが支給され、そのICカードをスマートフォンにかざすことで当日のスケジュールやサービス計画書の内容を確認することが可能だ。このように、Care-wingは介護現場のIT化を推進しながら、同時にITリテラシーの低い高齢のヘルパーであっても簡単に操作ができるような工夫を取り入れていることが特徴だと言えるだろう。
これまでにCare-wingを導入した介護事業者は約600社。約1万8000人のヘルパーが同システムを利用している。
ロジック取締役COOの福島成典氏はTechCrunch Japanの取材に対し、「近年になり、政府主導で介護現場にIT化を進めようとする動きが出てきた。それに応じて、VCもこのマーケットに興味をもつようになり、今回の資金調達につながった」と話す。
高齢者とインターネットのコンタクトポイント
福島氏は、今回調達した資金をCare-wingのマーケット拡大のために使うとしたうえで、その先にある戦略についても語ってくれた。
介護対象となる人々の大半は高齢者であり、スマートフォンはもちろん、パソコンすら持っていないというケースも多い。だがその一方で、インターネットを利用したサービスの中には高齢者が重宝しそうなものも多く存在している。
その1つの例として考えられるのが食品のデリバリーサービスだ。日本でもこの種のサービスは増えつつあり、2017年4月にはアマゾンジャパンが最短4時間で食品を届ける「Amazonフレッシュ」をリリースするなどしている。
ロジックの将来的なビジネス展開について、福島氏は「Care-wingを利用するヘルパーにはインターネットにつながったデバイスが支給される。高齢者はそのようなデバイスを持っていないことが多いが、端末を持ったヘルパーが彼らの自宅に訪問することで、高齢者とインターネットのコンタクトポイントが生まれることになる。そのようなコンタクトポイントを、高齢者からのニーズも期待できそうなサービスを展開する他社に提供することも将来的には可能だろう」と語る。
ロジックの創業は1995年で、いわば創業20年以上のスタートアップだ。同社は元々、CADソフトの開発などを中心事業にしていたが、約6年前に現在の介護事業者向けビジネスにピボットしたという。ロジックは2015年10月にシードラウンドを実施。また、つい先日の5月10日には日本政策金融公庫の融資制度である「新事業育成資金」を活用して7000万円の融資を受けている。
以前TechCrunch Japanでもお伝えしたように、2017年4月に訪問介護大手のセントケアHDからのスピンオフで介護系スタートアップが誕生するなど、最近では介護業界に関するスタートアップ界隈のニュースも少しづつ増えてきた。
みずほコーポレート銀行の調査によれば、日本の高齢者人口(65歳以上)は2025年のピーク時には総人口の30%超に達し、高齢者向け消費市場は101.3兆円にまで拡大するという。2007年の62.9兆円と比べると約61%の伸びだ。そのうち、介護産業は12.5兆円の市場規模をもつと見られている。