マネーフォワードが新子会社――与信審査と請求業務を自動化する新サービス開始

マネーフォワード代表の辻庸介氏(写真右)と、新会社MF KESSAI代表の富山直道氏(左)

家計簿アプリなどを提供するマネーフォワードは6月20日、新たに子会社のMF KESSAIを設立し、6月20日より企業間後払い決済サービスの「MF KESSAI」を提供開始すると発表した。同日、子会社設立の経緯や新サービスの概要を発表する記者会見が開催された。

新会社のMF KESSAIが提供する「MF KESSAI」は、ユーザー企業が取引データを入力するだけで、新規顧客の与信審査、請求業務、そして売上金の回収までを自動化できる企業間後払い決済サービスだ。請求に関する一連の業務をMF KESSAIが代行するため、バックオフィス業務の負担とコストの削減が可能になる。

取引先の与信審査が通過すれば債権がMF KESSAIに譲渡され、ユーザー企業への入金はMF KESSAIが完全保証する。そのため、ユーザーは自身に振りかかる可能性のある貸し倒れリスクを回避できる。

MF KESSAIにかかる手数料は、サービス登録時に行なわれるヒアリングによってユーザーごとに個別に算出され、取引金額の1.5%〜3.5%のあいだで決定する。また、MF KESSAIは資金回収サイクルを短縮する「早期入金サービス」を2017年秋から開始する予定だが、子会社の代表取締役に就任した富山直道氏によれば、同サービスは通常の料金率プラス1〜3%で提供される予定だという。

MF KESSAIの特徴の1つが、取引データを入力するだけで自動で行なわれるスピード与信審査だ。中小企業には取引先の与信審査を行うだけのノウハウを持たない企業も多く、与信審査に時間がかかって取引をすぐに開始できないという問題がある。一方、MF KESSAIが提供する与信審査は「申請から5分〜半日程度で完了する」(富山氏)という。

このスピード審査は、マネーフォワードの既存サービスによって社内に蓄積されたデータと外部の調査機関との協力によって実現したと富山氏は話す。「与信審査の通過率は98%を想定しており、当初は貸し倒れ案件が多く発生してしまう可能性はあるだろう。しかし、日本の倒産率は1%程度であり、そこに早期に収束させていくことが一番のリスク回避の手段だと考えている」(富山氏)

なお、MF KESSAIはファクタリング・ビジネスと似たスキームを持つが、富山氏は「現在の当社の理解では、特に業法の取得は必要ないという認識。しかし、法規制などが変更されれば業法を取得する必要もあると考えている」と話す。

マネーフォワードの辻庸介氏は、MF KASSAIを社内の新サービスではなく、子会社化した理由を語る。「MF KESSAIはバランスシートに債権・債務をもつことになるビジネス。これまでの”サービス開発”というビジネスから形態が変わるため、子会社化することを決めた。また、若い人材に活躍してもらい、オフィスも完全に別にした子会社をつくることで、社内にベンチャースピリットが生まれるようにしたかった」(辻氏)。

MF KESSAIの代表取締役に就任する富山直道氏は、慶応義塾大学卒業後、あずさ監査法人で会計監査業務および内部統制監査業務に従事した経歴をもつ。マネーフォワードに入社後は、MFクラウドシリーズの事業戦略や新規事業展開を手がけていた。

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TechCrunch Japan

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