スマートウォッチなど腕に着けるタイプのウェアラブルデバイスは数多くあるが、京都に拠点を置くミツフジが手がけるのは衣服と同じように着用できるウェアラブルIoT製品だ。本日ミツフジは第三者割当増資と融資により、総額30億円の資金調達を実施した。引受先はカジナイロン、電通、前田建設工業、南都銀行、京銀輝く未来応援ファンド投資事業有限責任組合、三菱UFJキャピタルと他数社が含まれている。
ミツフジが開発する「hamon」は、着用者の心電、心拍、筋電 、呼吸数、加速度、ジャイロ、温度、湿度などの情報を収集できるIoTウェアだ。収集した情報はトランスミッターからBluetoothを経由してスマートフォンで確認することができる。
hamonは、企業や介護施設による患者や従業員の見守りサービスでの利用を想定しているとミツフジの広報担当者は説明する。例えば、介護施設で患者の心拍を計測し、異常がないか見守るサービスだったり、建設現場で作業員が熱中症や怪我で倒れた時に責任者にアラートを飛ばすようなサービスを想定している。
ミツフジはもともと1956年に西陣織の職人が西陣帯工場として創業した会社だ。1992年より抗菌作用などが認められる銀繊維に着目し、銀メッキ導電繊維AGPoss(エージーポス)の開発と製造販売に取り組んできた。AGPossは糸に銀を織り込むのではなく、ナイロンの表面に銀メッキを施しているのが特徴。そのためAGPossは銀の量が多く、導電性、電磁波シールド、抗菌、防臭、保温、断熱、制電効果に優れているという。hamonはAGPossの導電性に着目して誕生したプロダクトと担当者は説明する。
銀メッキの繊維と聞くとなんとなくゴワゴワしてそうなイメージがあるが、実際の繊維は柔らかいと担当者は言う。hamonは着心地にこだわって作っていて、トランスミッターについても「重さは25グラムほどで、さほど違和感なく着ることができます」と言う。洗濯については洗剤の種類や洗濯する温度に注意する必要はあるが、トランスミッターを外せば洗濯も可能だそうだ。
今回調達資金は導電性繊維とウェアの量産体制の整備を目的としている。2018年4月には京都府南丹市に、2018年7月には福島県川俣町に自社工場を竣工する予定だ。ウェアは写真のタンクトップ型以外のバリエーションも開発しているという。
hamonに似た衣服型のウェアラブルには、GoogleとデニムブランドLevi’sが共同開発する「Project Jacquard」などがある。彼らはジャケットの袖をタップやスワイプすることでスマホの音楽やナビアプリを操作できる衣類を制作している。