Facebook上のマルウェアは珍しくないが、今度のやつには何か幻覚剤の症状のようなものを感じてしまう。シドニーのLMNTRIX Labsのセキュリティ研究者たちが見つけたソフトウェアはFacebook Password Stealer(Facebookのパスワード泥棒)と名乗り、ダウンロードすると悪質なコードをバックグラウンドに注入して、ユーザーの認証情報を盗難の危険にさらす。
研究チームはこう述べる: “すでに相当広く拡散しており、まだ拡散は続いている。これは実際に‘Facebook Password Stealer’というソフトウェアの悪意に満ちた広告キャンペーンなのか、あるいは後日、治療ソフト‘Facebook Password Recovery’を売るつもりかもしれない”。
“犯人たちはマーケティングの達人でもあるようで、実際にそういうサービスへの大きな需要があることを知っていて、それをスパムや広告キャンペーンや、ポップアップ、同梱ソフトウェア、ポルノサイトなどを利用して配布しているのかもしれない。ソフトウェア単体として配布することも、あるのだろう”。
LMNTRIXの研究者たちが“Instant Karma”(幻覚剤)というぴったりのあだ名をつけたこのマルウェアは、他人のFacebookアカウントを盗めるソフトを探していた被害者たちにつけ込む。ダウンロードして実行し、”hack”ボタンをクリックすると、バックグラウンドでリモートアクセスのためのトロイの木馬が動き出す。
研究者たちは参考情報としてVirusTotalのデータベースにある“spoolsvfax.exe” を挙げているが、彼らはその中に、新たに仕込まれたトロイの木馬を見つけた。
一見便利そうなサービスに見えるFacebookのマルウェアは、正体がばれて退治されるまでに、Facebookの膨大なユーザー人口の上で大規模に繁茂する。マルウェアはたとえばMessengerの上で、“お友だちになりましょう”というお誘いを仕掛けることもある。そのほかにもさまざまな、無害そうな、あるいはとても魅力的に見える、ダウンロードのお誘いがある。試しに“hack Facebook account”でググると、マルウェアに感染しているソフトウェアへのリンク、と思われる結果が大量に得られる。どれも技術者ではなく、一般ユーザーに語りかけている。
このパスワード泥棒マルウェアは、Windowsのデスクトップに限られているが、モバイルのFacebookをねらうマルウェアも、今ではありふれている。こんな犯行がまんまと成功するのなら、世界最大のソーシャルネットワークはハッカーにとって金鉱だ。
研究者たちは重ねて述べる: “今やターゲットはハッキングに関心のあるユーザーではなくて、他人のFacebookアカウントを覗きたいと思っている一般ユーザーだ。Facebookをハックする方法やアプリケーションは前からいろいろあるが、Facebookのパスワード窃盗を餌(えさ)にする悪質なキャンペーンは、まったく新しい”。