【編集部注】執筆者のJoanna GlasnerはCrunchbaseの記者。
会社を立ち上げてVCから資金を調達する上で有名大学を出ている必要はない。しかし実際のデータを見てみると、出身校と資金調達には深い関係がありそうだということがわかる。
この記事では、スタートアップ投資を受けた起業家という観点から、アメリカの有名大学をランク付けしている。注目したのは卒業生が立ち上げたスタートアップの数、そして調達資金額だ。
もしも意外な結果を期待してこの記事を読んでいる人がいれば、ここで読むのをやめた方がいい。というのも、スタートアップエコシステムにいる人であれば、ほとんどの内容が想定の範囲内に収まるだろうからだ。もっと具体的に言えばスタンフォード大学がトップで、アイビーリーグや有名工科大学、研究大学がその後に続く、という結果だった。
もっとも多くのスタートアップを輩出した大学
ひとつめのランキングでは、過去1年間に100万ドル以上を調達したスタートアップのファウンダーの数を大学別にまとめている。先述の通り全くの予想外と思われるものはないが、前年比で数値が伸びた大学がいくつかあるのは注目に値する。マサチューセッツ工科大学(MIT)の卒業生によって設立され、100万ドル以上を調達した企業の数は134社だった(昨年は108社)。ワシントン大学も2015〜2016年の35社から2016〜2017年は41社に数を伸ばし、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の数値も同時期に39社から44社へと増加した。
ビジネススクールの状況
Crunchbaseではビジネススクールが他の教育機関と分けて記録されているので、ランキングも別のものを用意した(対象期間は2016年8月1日〜2017年8月1日)。スタンフォード大学が1位ではないということを除くと、このランキングにも大きなサプライズはない。スタンフォードの代わりにトップの座に輝いたのがハーバード大学だ(スタンフォード大学ビジネススクールの生徒数が800人強で、ハーバード大学ビジネススクールは1800人以上というのも関係しているだろう)。
調達金額は?
卒業生が立ち上げた企業の調達額合計は、これまでのランキングとは少し違う。というのも、ユニコーン企業や準ユニコーン企業の調達額はかなり大きくなるため、1社か2社そのような企業を輩出している学校が結果をかき乱しているのだ。
ニューヨーク市立大学バルーク校がその好例だ。同校の卒業生が設立したスタートアップで、過去1年間に100万ドル以上を調達した企業は4社しかない。しかしそのうちの1社が、公表されている情報だけを参照しても対象期間に40億ドル近くを調達したWeWork(ファウンダーのAdam Neumannが同校の卒業生)なのだ。シカゴ大学も同様で、東南アジアの配車サービス大手Grabが同校の合計調達金額の75%以上を占めている。
とはいっても、どの学校から調達額の多いスタートアップが輩出されているのか見るのはなかなか興味深い。以下が上位をまとめたランキングだ。
1社が合計調達額の半分以上を占めている学校の例は次の通り:カーネギーメロン大学(Argo AI)、ニューヨーク市立大学バルーク校(WeWork)、ハーバード大学ビジネススクール(Grab)、シカゴ大学(こちらもGrab)。
全体を見てみると、出身校によってスタートアップの規模が決まるということはなさそうだが、特色のある学校に通うというのはスタートアップをはじめる上でメリットがあるようだ。特にSTEM(科学・技術・工学・数学の教育分野)やビジネスの分野で名の通った学校出身のファウンダーが目立った。さらに強固なテックエコシステムが存在し、ベンチャーキャピタルが集中する都市部の学校も良い成績を残している。
調査方法
Crunchbaseの出身校に関するデータでは、ビジネススクールとそれ以外が区別されている(ハーバード大学ビジネススクールのみを卒業した人はハーバード大学の卒業生とはカウントされていない)。しかし一部のデータにはこれが反映されておらず、ビジネススクールの卒業生がその大学の卒業生とカウントされている場合やその逆のケースもある。ランキングへの影響はほとんどないが、これにより多少の誤差が生まれている。
さらに、多くのビジネススクールは、従来のMBA以外にもハーバードのAMP(Advanced Management Program:学位なしの経営人材養成プログラム)のようなサーティフィケートや追加的な学位を授与している。ビジネススクール卒業生が設立したスタートアップ数のランキングでは、学位とサーティフィケートの区別はせず、データベース上の記載内容に則ってデータを分類した。しかし、調達額のランキングには短期プログラム修了生のデータは含まれていない。
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(翻訳:Atsushi Yukutake)