ワシントン大学の研究者が、3Dプリントしたプラスチック製のWiFi通信可能なオブジェクトを作りました。WiFi通信をするのにバッテリーや電子回路をまったく使用しない、本当に3Dプリントしただけのオブジェクトです。
研究者は「3Dプリンタさえあれば誰でも作れて、他のデバイスに何らかの情報を伝えられるものを作りたい」という発想から研究に着手したとしています。ただ、当然ながら問題として立ちはだかったのは、どうやってプラスチックの部品だけでWiFi通信をすればよいのかということ。今まで誰もそんなことを考えもしなかったはずです。
これを解決する方法として、研究チームは3Dプリントしたゼンマイやギア、スイッチを組み合わせて、動きを情報としてアンテナ送信する方法を考案しました。たとえば、3Dプリンタで風速計を作り、その回転でギアを回転させると、ギアの歯がアンテナ部品に接触することでそのアンテナ部品は周囲にあるWiFi電波を反射します。そして、その反射した先に配置したWiFiレシーバーで、その電波を信号として読み取ることができました。
別の方式では、流量計と同様の構造を3Dプリンタで再現し、水の流速に応じてギアが回転し…以下同文。要するにギアとアンテナ部品の組み合わせがあれば(厳密に言えばWiFi通信ではないものの)、その動作をWiFiの電波を通じてPCなどに伝えられるようになったということです。
チームは構造を工夫し、ボタン、ノブ、スライダーといった日常的に使う物理的な操作UIをも、ギアとアンテナ部品の構成に落とし込みました。また流量計の方式をアレンジして洗剤容器の口の部分に装着した例では、その洗剤の流量から残量を自動的に推し量る”機能”も付け加えました。そして、誰でも3Dプリンタさえあればそれを試せるよう、情報を公開しています。
この技術は、11月末にタイ・バンコクで開かれた米コンピューター学会の国際展覧会SIGGRAPH ASIA 2017で発表されました
番外編として、チームはプラスチックを3Dプリントする際に、その中に指定したパターンで鉄を漉き込む方法も生み出しました。予め文字などの情報をパターン化してプラスチック内に配置することで、スマートフォンなどが備える磁気センサーを使ってパターンから情報を読み取ることができます。
Engadget 日本版からの転載。