民間企業が月面着陸を競うGoogle Lunar XPrizeのファイナリストに選ばれ、日本で唯一残っているチームHAKUTO。世界初の民間月面探査を目指す、そのHAKUTOを運営するスタートアップispaceは12月13日、総額101.5億円という巨額の資金調達をシリーズAラウンドで実施すると発表した。第三者割当増資の引受先は産業革新機構、日本政策投資銀行、東京放送ホールディングス(TBS)など(記事末尾に出資社リストを記載した)。シリーズAとしては日本では過去最高額、また宇宙分野のシリーズAとしても世界過去最高額の資金調達となる。
ispaceは2010年9月設立。2040年を目標に、月の水資源を軸として宇宙インフラを構築し、地球と月をひとつのエコシステムとして持続的な世界を実現することを目指す、宇宙スタートアップだ。これまでに、エンジェル投資家や、独立系VCのインキュベイトファンドが運営する3号ファンドからも資金調達を行っている。
今回の資金調達でispaceは、独自開発の月着陸船による「月周回」と「月面着陸」の2つの月探査ミッションをスタートさせるという。Mission 0と位置付けられたGoogle Lunar XPrizeへの参加に続き、Mission 1として2019年末ごろに月周回軌道への月着陸船投入と軌道上からの月探査を、Mission 2として2020年末ごろに月面へ軟着陸して探査ローバーによる月面探査を行う予定だ。
ispaceでは2つのミッションを、月のインフラ構築に必要となる物資の月輸送と、資源を含めた月面探査の技術を確立する出発点としている。これら日本初の民間月面探査プロジェクトにより、物資の月輸送と、資源を含めた月面探査の技術を確立するための検証を実施。今後の月面データ提供サービスや輸送サービス構築を進めていくもくろみだ。
2009年、NASAの研究により水の存在が示唆されてから、月面の水資源には世界的に注目が集まっている。水資源は、生命維持に欠かせない要素であるほか、水素と酸素に分解することで燃料化が可能。月面での人間の生活に加え、月をベースとした宇宙開発も視野に入ることから、ispaceでは「月の水資源こそが宇宙へのヒト・モノの輸送の在り方を変え、人類が宇宙で生活する未来を速める重要な鍵」ととらえている。
ispaceのウェブサイトによれば、この後に続くMission 3以降では月の極域の水探査を中心とした、月の情報サービス/月輸送サービスプラットフォームの構築、Mission 10以降では安定的な月面開発を実現する産業プラットフォームの構築を目指しているという。
ispace代表取締役の袴田武史氏は、今回の資金調達について、こうコメントしている。
「今回の資金調達によりランダー開発に着手することで柔軟で定期的な月面輸送システムの構築し、小型宇宙ロボット技術の強みを活かし、月面での探査および開発をより一層促進していきます。日本のみならず、ルクセンブルクと米国の拠点を通して積極的にグローバルでの宇宙資源開発を先導していきます。さらに、今回投資していただいた機関投資家や事業会社の皆様の知識とネットワークを活用して、月面資源を軸にした民間の宇宙ビジネスシステムを構築し、その先にある人類が宇宙で生活できる持続的な人類社会の創造を目指します。」
[ispace シリーズAラウンド出資社一覧]
産業革新機構
日本政策投資銀行
東京放送ホールディングス
コニカミノルタ
清水建設
スズキ
電通
リアルテックファンド
KDDI
日本航空
凸版印刷
スパークス・グループ ※12月末時点の追加投資に参加