フリマアプリを軸に、グループ、投資先を含めて広くCtoC領域のサービスを展開するメルカリ。今度は新領域へチャレンジに向けて研究開発を強化していくという。同社は12月22日、社会実装を目的とした研究開発組織「mercari R4D(メルカリ アールフォーディー)」の設立を発表した。
同日開催された発表会の冒頭、メルカリ代表取締役会長兼CEOの山田進太郎氏が登壇。今までのメルカリを振り返り、UI/UXへのこだわり(エンジニア経験のある創業経営陣がおり、ユーザービリティテストを積極的に活用。また早期に分析基盤を構築してきたことなど)や積極的なマーケティング(オンラインマーケティングだけでなく、テレビCMも活用してきたこと)という2つで成長してきたと説明。
さらに直近では、AIを活用し、写真撮影をすれば自動的に商品のブランドやカテゴリ、価格などをサジェストする機能を導入。これによって出品率や出品物の販売率を向上させたほか、偽ブランドや禁止出品物の検知などに取り組んでいる。米国では、従量の自動推定にも取り組んでいるという。
「技術で差別化するフェーズになってきた」——山田氏はこれからのメルカリについてこう語り、3つの方針を打ち出した。1つめはロードマップを作って戦略的に研究・投資を実施するということ。そして2つめは現在100人ほどのエンジニアチームを3年で1000人規模まで拡大。各機能ごとにマイクロサービス化して、スケーラブルな組織を作るということ。3つめは外部パートナーとの共同研究やその実装を進めるということ。今回発表されたmercari R4Dはこの方針に沿ったプロジェクトだ。
メルカリ取締役CPO(Chief Product Officer)の濱田優貴氏が説明するところによると、R4Dの言葉の意味は「Research for」の「R」と、「 開発(Development)」「設計(Design)」「実装(Deployment)」「破壊(Disruption)」の4つの「D」なのだという。いわゆるR&D(Research & Development)、研究開発との一番の違いはDeployment、つまり実装をすることだ。今回の発表でメルカリは「社会実装を目的とする」とうたっているが、採算度外視でもまず世に出してみて、反応をみていくということに重点を置くという。
なお今回発表されたパートナーと研究テーマは以下の通り。またシニアフェローとして、
アーティストのスプツニ子!氏、京都造形大学教授 クロステックデザイン研究室、ABBALab代表取締役、さくらインターネットフェローの小笠原治氏が就任する。
シャープ 研究開発事業本部
「8Kを活用した多拠点コミュニケーション」
東京大学 川原研究室
「無線給電によるコンセントレス・オフィス」
筑波大学 落合研究室
「類似画像検索のためのDeep Hashing Network」
「出品された商品画像から物体の3D形状を推定」
「商品画像から背景を自動特定」
慶應義塾大学 村井研究室
「ブロックチェーンを用いたトラストフレームワーク」
京都造形芸術大学 クロステック研究室
「Internet of Thingsエコシステム」
東北大学 大関研究室
「量子アニーリング技術のアート分野への応用」
山田氏によると、R4Dの2018年の予算は数億円程度。だが再来年以降は寄り大きくしていくという。さらに今後対象とするテーマについては、「直近1〜2年のものというより、3〜5年かかるような中長期的になるものを基準にしている」(メルカリ R4Dオフィサーの木村俊也氏)とのこと。