DNA利用のナノボットがガン細胞攻撃に成功――折紙方式で畳まれ、標的で抗がん剤を放出

SFのように聞こえるが現実の話だ。今日(米国時間2/12)、Nature Biotechnologyに発表された論文によると、自律的に作動する微小なロボットによって抗がん剤を標的細胞に有効に送り込む実験がハツカネズミで成功したという。

このDNAナノボットはガン細胞を探し出し、その細胞への血液供給を妨げる薬品を注入する。その結果、ガン細胞はやがて死滅するという仕組みだ。

「腫瘍細胞を持つハツカネズミによる実験で、われわれは 腫瘍細胞に特異的に結合するトロンビンを運搬するDNAナノボットを静脈注射によって投与した結果、腫瘍組織に血管内血栓形成を引き起こし壊死に至らせ、また腫瘍の成長を妨げることを実証できた」と論文は説明している。

DNAナノボットというのは薬剤投与における新しいコンセプトで、特別に合成され日本のオリガミのように畳まれるDNAシートを微小ロボットとして用いるものだ。

DNAナノボット:Nature Biotechnology 2018

この研究を行ったチームが人間の乳がんを持つハツカネズミにDNAナノボットを注射したところ、48時間以内にナノボットは乳がん内のガン細胞を発見してに結合し、ガン組織への血液供給を阻害、組織を壊死させることができたという。

論文によれば、この実験で重要な点は、血液凝固因子をもつトロンビンを付着させたナノボットが標的とするガン細胞以外に血栓を引き起こさなかったことだという。

The s研究チームはまたBamaミニブタにナノボットを投与し、健康な組織に血栓を引き起こさなかったことを実証した。これによりハツカネズミより大型の動物でも安全であることが示された。

この研究チームによれば、最終目標は、この薬剤投与方法を人間に対しても確立することだ。もちろん実際の治験に進む前にさらに多数の研究が必要だという。

そうであっても、今回の実験の成功はガンの治療における大きなブレークスルーだ。現在の抗がん剤によるケモセラピーはガンであろうとなからろうとすべての細胞に届いてしまう。DNAナノボットを用いる方法に比べると野蛮だ。ナノボットはガン細胞に特異的に結合し、そこで抗がん剤を放出するのでガン細胞だけを壊死させる。近い将来、この手法が人間のガン治療において承認され大きな効果をもたらすことが期待される。

画像:: KTSDESIGN/SCIENCE PHOTO LIBRARY/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。