ペンシルベニア大学の医師が、世界初のロボット支援による脊索腫(せきさくしゅ)除去手術に成功しました。脊索腫は頭蓋底腫瘍(ずがいていしゅよう)の中でも最も治療が困難な病気と言われ、手術は患者の背骨と頭蓋骨の間にできた腫瘍を取り除くという熟練の外科医でも困難な内容でしたが、医師は千手観音的なアームを備える外科手術ロボットDa Vinciを使用し、のべ20時間にわたる手術を無事に終えたとのこと。
手術は3段階に分けて実行されました。まず神経外科医が患者の首から腫瘍ができた脊柱を超音波で切断。次いで、口から喉の奥を切り開いて(切断した) 脊柱にアクセスして、Da Vinciロボットアームで腫瘍をくまなく除去。最後に腫瘍を取り除いた部分に体の別の場所から採取した骨などを継ぎ足して、背骨は再建されました。
この手術は神経が通る脊柱部分に関わるため、これを傷つけてしまうと患者に麻痺が残る可能性がありました。また腫瘍をすべて取り除かなければ再び残った部分が成長してきてしまう可能性もあります。
今回の手術は、従来なら放射線による緩和治療に頼るしかなかったこのような症例においても、外科ロボットを使えば積極的に腫瘍を除去できるようになったことを意味します。手術に関わった医師は、この方法が患者への負担も小さく済み、回復も早いことも指摘しました。
なお、この手術は2017年の8月に実施されました。術後の患者の回復も良好で、すでに完全に回復して職場復帰を果たしたとのこと。
手術はロボットによるというよりは医師がロボットアームを操作したという方が正確かもしれないものの、このような細かい作業を要する人間には難しい手術でロボットが有効に機能したというのは喜ばしいこと。まだまだ先の話とは思われるものの、もしもAIが医師を凌ぐ手術スキルを獲得できるようになれば、SF映画のような全自動手術ロボットが登場する未来も現実化するかもしれません。
Engadget 日本版からの転載。