312対278で、欧州議会はデジタル著作権改革案をめぐる議論を続行させることを決めた。法令化するのに最短ルートをとるのではなく、今後さらなる議論や綿密な調査が行われることを意味する。
大議論を巻き起こした提案を改めるチャンスがあるというのは、重要な意味を持つ。
先月、欧州議会の法務委員会は著作権についての法案の最終文案を承認したがー最も議論を巻き起こしている2つの条項の承認も含むー“リンク税”、“検閲マシーン”に反対する人々は、欧州議会議員に議論を再度行うよう、そして法案を改めるよう最後まで運動を展開した。
著作権改革案では主に2つの条項が議論を起こしている。
・第11条ーGoogle newsのようなニュースアグリゲータービジネスモデルを標的にするために、報道コンテンツスニペットの著作隣接権をつくる。メディアは長い間、自分たちのコンテンツからニュースアグリゲーターが不正に益をあげていると主張してきた。
似たような著作権の法律がドイツとスペインで施行されている。スペインではライセンス取得がフレキシブルではなく、Google ニュースは見出しや批評、交通情報に至るまでスペイン語版全てを閉鎖した。
・第13条ーユーザーがアップロードするコンテンツを大量に扱うインターネットプラットフォームが、著作権違反に問われるようになる。これは、例えばYouTubeのようなプラットフォームは、ユーザーがコンテンツをアップロードした時点で事前にフィルターをかける必要に迫られる。もしアルゴリズムが著作権のある作品を使用しているのを見落とした場合は大変な事態となるかもしれない。
どちらかというと、第13条の方が議論の対象となる要素が強く、これについて改革案反対者は特に抗議している。しかしながら、この改革案はミュージシャンや音楽業界からは支持されている。彼らは、Youtubeはミュージックビデオ視聴に関してプラットフォーム上で法的に保護せず、本来より少ないロイヤリティしか払っていないと何年も訴えてきた。
反対キャンペーンでは、デジタル権利団体、スタートアップグループ、インターネット企画者、コンピューターサイエンティスト、研究者、ウェブ制作者らで構成する連合ーSir Tim Berners-Lee、Vint Cerf、Bruce Schneier、Jimmy Wales、そして先月のオープンレターに名を連ねたMitch Kaporも含むーは第13条が“インターネットを、シェアやイノベーションのためのオープンプラットフォームから、ユーザーを自動監視したりコントロールしたりするためのツールへと変えてしまう、その変化へ一歩を踏み出すものになる”と主張している。
欧州委員会は、オンライン百科事典は第13条適用外としていたにもかかわらず、今週、Wikipediaのいくつかの欧州言語版が改革案反対の姿勢を表すためにコンテンツを黒く表示した。
しかしながら、反対を唱える人々の主張は…
欧州議員に法案を改めることができるように投票するよう求めるオンライン請願には、投票までに85万超の署名が集まった。
投票の直前、欧州議員は改革案についての賛否の概要を聞いた。
賛成派の議員Axel Vossー先月改革案を可決した法務委員会の報告者ーは「インターネット上で欧州アーティストが搾取されている状態に終止符を打つのが狙いだ」と述べた。
「我々は、欧州で創造されたもので莫大な利益を得てきたGoogleやFacebookといったメジャーな米国のプラットフォームについて話をしている。我々はこうした行いをやめさせなければならない」。そして「アメリカ第一主義というのはデータや我々の偉大な作品の乱用だと言う人々がいる一方で、別の人々はこのインターネット資本主義をサポートするというのはまったく不可解だ。我々は欧州のクリエイターの側に立つべきであり、さもなければクリエイターたちは破産してしまうリスクがある」とも述べた。
「著作権違反を防止するのになぜ反対するのか。クリエイターたちが真っ当な報酬を得ることになぜ反対するのか。そして巨大なプラットフォームに、より責任を持ってもらうのになぜ反対するのか」「我々が向かってきている反対運動は、Googleや、欧州議員の子供たちの目に触れるFacebookによるものだ。このキャンペーンの全てが嘘に基づいている。ユーザー個人に適用される制限などはなく、全ての人がリンクを貼ったり、法的な確証を持ってコンテンツをアップロードしたりできる」と付け加えた。
これに対する改革案反対の主張を展開したのはー“幅広い、事実に基づく議論”と形容するのを許容するとしてー域内市場・消費者保護委員会の報告者、Catherine Stihler議員だ。この委員会は第13条に関してコンピテンシーを持つが、法務委員会の賛同を得られた「必要なバランスを欠いている」という文言にはStihlerの姿勢は考慮されていない。
「欧州のアーティストや文化的多様性を守るという共通するミッションのために我々全員が団結している。委員会では、価値観の違いについて意義ある進展をみながら、と同時に欧州のインターネットユーザー、中小企業、スタートアップを保護するという、幅広い和解に至った」と Stihlerは述べている。
「表現の自由への第13条の影響について本当に懸念されることは、国連の特別報告者David Kayeからワールドワイドウェブ発明者sir Tim Berners-Leeに向けて注意喚起された。法務委員会の権限に反対する100万人近くの署名が集まった請願を私は昨日受け取ったばかりだが、真の懸念は市民の声の中にある。私が思うに、この法律の背景には意見の一致というゴールがある。現段階では正しいものではなく、その提案された手法について大きな議論がまだ残る。幅広いサポートを得るために、我々は専門家や株主、市民に対し、必要な議論を提供する義務を負っている」。
今日の採決の結果は、賛成派、反対派どちらの著作権ロビイストたちにとって忙しい夏になることを意味している。改革案の改正や次の投票のチャンスがあり、欧州議会での投票は9月に行われる。
欧州消費者機関BEUCは、今日の採決結果を評価している。
Monique Go総裁は発表文の中で「大規模かつシステマティックなオンラインコンテンツのフィルタリングを防ぐ戦いを展開してきた中で、今日の採決は大きな決定だ。立法府の議論の方向性をすぐさま正す必要がある。インターネットは引き続き、消費者が自分の作品や意見、アイデアを自由にシェアできる場所であり続けるべきだ。欧州議員は、著しくバランスの欠いたレポートを改め、著作権がコンシューマーとクリエイターの両方にとって機能するものとなるようにするチャンスがある」。
全くハッピーでない人たち:著述家ソサエティや、作曲家と音楽出版社(Sacem)だ。Sacemの事務局長David El Sayeghは「逆行しているが、終わりではない」と表現した。
「Sacemは引き続き、クリエイターの権利が認識され、彼らの作品価値に対して相当の報酬が払われるように努力する」と彼は発表文で述べた。「我々は今日の採決結果で落胆することはなく、音楽業界の未来を保護する、正当な合意に至るという希望を持って、世界中のミュージシャンや音楽愛好家のサポートを駆り集め続けるつもりだ」。
「我々は、21世紀のデジタル環境の中に身を置くクリエイターの権利を十分認識するようなフレームワークを、欧州議会がゆくゆくはサポートするものと確信している」。
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(翻訳:Mizoguchi)