「2027年にスペースプレーンで人間を宇宙に飛ばす」ーーそんな大きな目標をかがけた日本のスタートアップがいる。本日プロジェクトの発足を発表したSPACE WLAKER(スペースウォーカー)だ。同社はこれから、九州工業大学、IHI、JAXA、川崎重工業などと共同で2021年に無人のサブオービタル宇宙飛行用の機体を飛ばし、2027年には民間事業として有人宇宙飛行の実現を目指す。
SPACE WALKERのプロジェクトのルーツとなったのは、2005年より開始した九州工業大学の有翼ロケットプロジェクトだ。この研究は現在も継続中で、8月末には実験機である「WIRES #014-3」の打ち上げが予定されている。
WIRES#014-3の全長はわずか1.7メートル、総重量も42キログラムとその規模は小さい。だが、SPACE WALKERと九州工業大学は今後も機体の共同開発を続け、有人飛行に耐えうる安全性と性能をもった機体の開発をめざす。2027年の有人飛行では、IHI製のLNGエンジンを3基搭載した、全長15.9メートル、総重量18.7トンの機体が開発される予定。このスペースプレーンに乗り、乗員2人、乗客6人の計8人が宇宙に飛び立つことになる。
有人飛行用のスペースプレーンは、発射から約4分ほどで高度120キロメートルに到達する。地球が丸く見え、無重力状態となる高度だ。乗客は約3〜4分のあいだ無重力状態を楽しみ、その後地球に帰還する。ちなみに、この「スペースプレーン」とは一般的な航空機と同じように特別な打ち上げ設備を必要とせず、自力で滑走し離着陸および大気圏離脱・突入を行うことができる宇宙船のことを指す。
この壮大なプロジェクトを構想したSPACE WALKERの創業メンバーは全部で10人。ファウンダーで九州工科大学教授の米本浩一氏(SPACE WALKERファウンダー)、宇宙ステーション「きぼう」の運用会社のJAMSSで代表取締役を務めていた留目一英氏(同取締役会長)など、創業メンバーの約半数は宇宙領域の専門家だが、残りの半数はスペースプレーンのデザインやブランディングなどを手がけてきた大山よしたか氏(同CEO)、元ミクシイ執行役員の辻正隆氏(同取締役)など専門領域や世代を超えたメンバーで構成されている。
代表取締役COOの眞鍋顕秀氏は、「ベンチャー企業であるSPACE WALKERの役割は、これまで日本が培ってきた宇宙関連技術をインタグレーターとして取りまとめて、民間事業として有人宇宙飛行を実現すること」と話し、そのために世代や業種を超えた組織体制を構築したという。
オールジャパンの技術と人材により、民間による宇宙旅行事業の実現を目指すSPACE WALKER。でも正直なところ、少なくとも現時点では同プロジェクトはまだブループリントの域を出ないという印象だった。
米本氏は「2021年の無人飛行には100億円規模の開発費用が必要。2027年の有人飛行では、1000億円を超える規模まで考えないと、安心して人間を乗せられるレベルのものはできない」と話す一方、設立段階のSPACE WALKERの資本金はわずか100万円。現在同社はいわゆるエンジェルラウンドとしてエンジェル投資家、シード投資家を対象とした資金調達ラウンドを実施中としているが、そこで資金が集まるかもまだ定かではない。
また、民間企業として宇宙飛行ビジネスを行うと聞けば、事業化まで食いつなぐための資金調達計画や、事業を立ち上げたあとのマネタイズ方法が気になるところだけれど、眞鍋氏は「これまではとにかくチームの構築に注力してきた」として、資金調達計画や宇宙飛行事業の“値段感”を具体的に示すことはなかった(値段が分からなければ、貯金のしようもない!)。
それでも、テクノロジー好きのTechCrunch Japan読者のみなさんがSPACE WALKERの話を聞いてワクワクしないはずがない。“2027年”と書くとなにか遠い未来のように感じるかもしれないけれど、彼らの計画では、あと9回だけ年を越せば僕たちが宇宙に行ける未来がやってくる。その胸踊る未来が実現するために、SPACE WALKERはこれから今のブループリントを現実味を帯びたロードマップにしていく必要がある。これから、その過程に注目が集まりそうだ。
さて、先日ニュースにもなった「スターウォーズ」を見返して、宇宙旅行の予習をしておくとしよう。