毎秒10兆フレームのカメラは光をスローモーションで捕らえる

光は宇宙で一番速いので、その動きを捕まえることは必然的に困難だ。これまでに成功例はいくつかあるが、カリフォルニア工科大学の科学者たちが作った新しい装置は、10兆フレーム毎秒という度肝を抜く速さを実現した。これは光が進むところを捕獲できるという意味だ——しかも彼らはこれを100倍速くすることを計画している。

光の動き方を理解することは、数多くの分野にとって基本的なことなので、Jinyang Liangらを衝き動かしたのは単なる好奇心だけではなかった——そうだとしても何の問題もない。しかし、物理学や工学、医学には、スケールが小さく短いすぎて測定が非常に困難な光の振る舞いに大きく依存する潜在用途がある。

秒間10億フレームや1兆フレームのカメラについて聞いたことがあるかもしれないが、その殆どは「ストリーク・カメラ」と呼ばれ、一種のズルをして数字を達成している。

T-CUPシステムが光のパルスを捕獲する。

光のパルスを完璧に再現できれば、パルスを1ミリ秒毎に放ち、カメラのキャプチャー時間をさらに短い時間、たとえば数フェムト秒(ミリ秒の10億分の1)に設定することができる。1つのパルスをここで捕獲し、次のパルスを少し先で、その次はさらに先でという具合に捕獲する。こうした作られた動画は、いろいろな意味で最初のパルスを高速で捕獲したものと区別がつかない。

これは非常に効果的だ——しかし厳密に同じ光のパルスを100万回放つことは常に可能というわけではない。注意深くレーザーエッチ加工されたレンズが最初に衝突したパルスによって変形されてしまうという状況下で、パルスがレンズを通過する際に何が起きるかを見る必要があるかもしれない。その場合、最初のパルスをリアルタイムで捕獲しなくてはならない——即ち、画像をフェムト秒精度で記録するだけでなく、フェムト秒〈間隔〉で記録するという意味だ。

Simple, right?

T-CUPメソッドのやっているのがそれだ。ストリークカメラにもう一台の固定カメラとトモグラフィーで用いられている技術を組み合わせている。

「フェムト秒ストリークカメラを使うだけでは画質に限界があることはわかっていた。そこでわれわれはこれを改善するために、静止画像を撮影する別のカメラを追加した。両方の画像を組み合わせることで、ラドン変換と呼ばれる手法を利用して高品質の画像を秒間10兆フレーム記録することが可能になった」と、共同研究者のLihong Wangが説明した。

ともあれこの方法によって、わずか100フェムト秒間隔で画像——専門用語では時空間データキューブ——を捕獲できる。これは1秒間に10兆フレームに相当するが、1秒に10兆個のデータキューブを1秒間記録できる速さのストレージアレイは存在しない。このため、今のところ連続して捕獲できるフレーム数は限られている——ここで見ることのできる実験では25フレームだ。

この25フレームは、1フェムト秒長のレーザーパルスがビームスプリッターを通過するところを映し出している——このサイズでは光がレンズ自身を通過する時間も無視できないことに注意されたい。それまでを計算に入れなくてはならないのだ!

このレベルの精度をリアルタイムで実現した前例はない。しかしチームの仕事はまだ終わっていない。

「われわれはこのスピードを1000兆(10の15乗)フレームまで上げられる可能性をすでに発見している!」とLiangがプレスリリースで意気込んでいた。光の振る舞いをこのスケール、この精度で捕獲することは、わずか数年前には想像もできなかった。これは物理学や新種材料のまったく新しい分野を切り開くものだ。

Liangらの論文は今日のLight誌に掲載されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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