最近テクノロジー業界ではコンピュータ科学の教育を拡大する大掛かりな運動がいくつも動き出している。マーク・ザッカーバーグとビル・ゲイツは1000万人の新しいプログラマーを養成するCode.orgaのプロジェクトにサインした。その翌日に教育スタートアップのGeneral Assemblyがプログラミングを自習するツールを公開した。また数週間前にはSquareのCEO、ジャック・ドーシーがアメリカ下院民主党院内総務ナンシー・ペロシと少女のためのプログラミング・キャンプについて話し合った。
しかし誰もがIf… Thenループが書けるようになったとしたら、どういう影響があるのだろう? 大学でプログラミングの教育を受けながら一度もコードを書く機会がない人間の数は多い。コンピュータ科学科の卒業生の大部分はシリコンバレーで職を得られない。
われわれはCode.orgの「1000万人のプログラマー」運動のローンチ・イベントでLinkedInの共同ファウンダーでナイスガイ・ベンチャー・キャピタリストのリード・ホフマンにこの運動に協力する理由についてインタビューすることができた。 ホフマンは「誰もがプログラミングできるようになったらどうなるか?」について、以下のような極めて冷静かつ現実的な見解を話してくれた。
1. 社員が誰でもテクノロジー面での問題解決能力を持つようになる:全員が高度なプログラミング能力を持つ必要はない。ソフトウェア作成能力は別にLinkedInの社員でなくても、あらゆる業種の従業員に必要だ。
自分でコードが書ける人間が増えれば、それだけ多様な優れたソリューションが登場する可能性が増える。たとえば、テクノロジーに関しては未開の地であるアメリカ議会でさえ、Darrell Issa下院議員は立法過程をクラウドソース化するツール、Project Madisonを作ることができた。これはIssa議員自身とそのスタッフが外部のデベロッパーに頼らず自分たちでプロトタイプのコードを書けたからだ。発案者自身がプログラミングできず、プロトタイプを作れなかったために埋もれてしまった良いアイディアの数は無数だろう。
「誰もがプログラミングできる」ようになっても優秀なプログラマーの不足というシリコンバレーの悩みが解決されるわけではない。しかし社会全体のイノベーションは大きく加速されるだろう。
2. 社会的に価値あるテクノロジーになる:私〔ホフマン〕がスタンフォード大学に行かなかったら、おそらくソフトウェア起業家にはなっていなかっただろう。以前から世界を変えるような仕事がしたいと願ってはいたが、テクノロジーにそれほどの力があるとは考えていなかった。しかしXerox PARC研究所でひとつの啓示を受けた。テクノロジーは、たとえばイースト・パロアルトで教えている友だちがもっと多くの生徒を教育することを可能にするかもしれない。私自身は教育ソフトを開発しなかったが、社会的価値のある大規模なプロジェクトに関わっていく契機になった。こうしたことは他の投資家の場合も同様だ。
最近17歳のBrittany Wengerが人工知能とデータベースを利用してガンの検査精度を劇的に改良する非常に経済的な方法を発見した。「私は人工知能というもの知って感動しました。私は翌日、本を買って家でプログラミングを独習し始めました」と彼女は言っている。
テクノロジーを学ぶチャンスがなければこうしたすばらしいアイディアが日の目をみることは決してなかっただろう。
しかしシリコンバレーは平均的アメリカ人の数学能力についてあまり買いかぶりをしないようにすべきだ。アメリカの大学生の47%は簡単な分数の計算さえできない。ましてプログラミングに必要な複雑な論理演算にいたってはとうてい無理だろう。
小学校から高校までの教育カリキュラムを改革するという困難きわまる事業に成功したとしても、プログラミングをマスターできる生徒はやはりごく一部にとどまるだろう。しかし、ほんの一握りの生徒が優秀なプログラマーになるだけでも数多くのスーパー・クールなプロダクトが作られるには十分だ。そして、それはこの改革に注ぐ努力に見合う価値があると私は考える。
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)