PayPayは6月から、Yahoo!ショッピングでのオンライン支払いでPayPayが利用可能になったことを発表した。当初よりかなり遅れての対応となったが、それよりも併せて発表された内容が重要だ。
同じく6月からは、PayPayにヤフオク!の売り上げ金をチャージして使えるようになる。つまり、ヤフオク!で中古品を売って、その代金て飲食をはじめとするPayPay加盟店で使えるのだ。
なにがすごいのかというと、PayPayによる一次流通(新品購入)と、ヤフオク!による二次流通(中古品購入)のデータがつながるということ。これはメルカリとメルペイの関係と同じだ。
PayPayはソフトバンクとヤフーの合弁会社なので、実質的にヤフーとPayPayは両方の流通データを活用可能になる。そして、これらのデータを活用してYahoo!ショッピング上で精度の高いリコメンド商品を提案することも可能になるだろう。PayPay側では銀行口座などからチャージしたPayPayライトの残高の有効期限を2年から5年に延長したほか、ヤフー側ではPayPayアプリがなくてもYahoo!のスマホアプリからPayPayを呼び出せる機能を実装するなど、ヤフーとPayPayの融合に抜かりはない。
さらに、ソフトバンクグループ全体で考えると、携帯電話事業から得られる膨大なユーザーデータもある。仮にこれらデータが匿名化された状態でグループ内で活用できるとなると、他社が追従できないかなり貴重なものとなる。
携帯電話事業を擁するグループのコード決済といえば、メディアへの露出は少ないものの大盤振る舞いの還元を続けているNTTドコモのd払い、当面はauユーザー限定ながら特典の適用ルールが複雑なうえ、たいして還元されないKDDIのau PAYがある。
少し乱暴だがPayPayをキャリア系コード決済と見ると、当面はd払いとPayPayの勝負になっていきそうた。au PAYは加盟店開拓では楽天と提携しているが、楽天ポイントとau WALLETポイントの交換はできないなど、ある意味キャリアらしいガチガチな決済サービス。
auユーザー限定、チャージできる銀行がじぶん銀行のみ、使えるクレジットカードがMastercard中心でVISAとJCBはカードブランドによっては使えない。こういった過度な囲い込みが、今後のオープン化(auユーザー以外への開放)の障壁になりそうだ。オープン化後も「auユーザーしか使えない」という間違った認識を払拭するには時間がかかるだろう。かつてのドコモのd系サービスのように。
コード決済全体で見ると、d払いよりもLINE Payがやはり強敵。LINE Payには、キャンペーン期間外でも利用実績に応じて還元率が0.5〜2.0%に変化するマイカラー制度があるが、PayPayはキャンペーン期間外は一律0.5%の還元しか受けられない。継続利用を促すには、LINE Payのマイカラーのようなクレジットスコア制度の導入は急務だろう。さらにLINE Payには7月末までの期間限定ながらコード払い限定の3%還元もある。
LINE Payはサービス開始時期が早かったことあり、税金や公共料金など利用範囲を着々と広げている印象だ。これら固定費の支払いにも使える点でPayPayに比べて優位性がある。みずほフィナンシャルグループと共同設立されたLINE銀行のサービスもまもなく始まる。メルカリ/メルペイとの連携も発表済みだ。さらには、JCBブランドのプラスチック/バーチャルのLINE Payプリペイドカードも使えるので、JCB加盟店でもLINE Payを使える。
一方のPayPayは、国内最強の小売り事業者であるイオンとの提携を果たしたことで優位点がある。現在は首都圏中心の32店舗限定での対応だが、若年層からシニア層までが集まるイオンでPayPayを使えるということは、ユーザー層の拡大ににもつながる。しかも毎日の買い物に利用する客が多いので、5月末まで実施されている1回あたりの決済の還元上限が1000円の「第2弾100億キャンペーン」との相性が抜群だ。
仮にイオンとの連携が全国に広がり、イオングループのまいばすけっとなどの小規模店舗でも利用可能になると、小売店でのPayPayの優位性は確固たるものとなる。PayPayにはプラスチックカード/バーチャルカードが存在しないが、もしもイオンのWAONカードがPayPayのプリペイドカードとして使えるようになれば、計り知れないシナジー効果が生まれる。
個人的な見解だが、コード決済サービスは現在、PayPayとLINE Payの二強をd払いが追いかける状態。今後はセブン−イレブンの「7 Pay」や日本郵政の「ゆうちょPay」などさまざまなペインメントサービスが登場するが、そろそろ独自経済圏の構築という夢から覚めて、単なる加盟店開拓連携ではなく他社経済圏との融合を前提としたサービスが増えることに期待したい。とはいえ、メディアに身を置く人間としては、もう少しの間は各社の熾烈な戦いを見てみたいのだが。