160億ドル(約1兆7382億円)というような金額の話をしていると、数の感覚が麻痺してくる。今日(米国時間6/10)Salesforce(セールスフォース)がTableau(タブロー)を157億ドル(約1兆7056億円)で買収した。それが巨大な企業買収であったことは間違いないが、史上最大ではなかった。
2017年に新たしい税法が施行されたとき、大手IT企業は巨額の資金を海外に保管して税を逃れ、一方ではM&Aの波がやってくるだろうと、多くの人々が憶測した。たしかにそれは起こった。
BoxのCEO Aaron Levie氏がTwitterで指摘したように、これは既存の支配的なツールを打ち負かすような最高のツールを開発すれば、マルチビリオン企業を作れることの証明でもある。われわれはこれまでに何度もそれを見てきた。150億ドル(約1.6兆円)企業までいかなくても、マルチビリオンの値札のついた巨大企業がたくさん生まれた。
昨年だけで、10件の買収が行われ総額は870億ドル(約9兆4517億円)に上った。最高金額の称号はRed Hatを340億ドル(3兆6938億円)で買ったIBMが勝ち取ったが、それでさえ史上最大の企業買収ではなかった。そこで本誌は、歴代の巨大企業買収のベストテンを作ることにした。これで、今回の契約の位置づけが感じ取れるかもしれない。
SalesforceがMuleSoftを65億ドル(約7062億円)で買収(2018年)
当時これはSalesforce史上最大の買収であり、今も続いている。それまでも同社は買収を繰り返していたが、その多くは比較的コンパクトなものだった。しかし、なんとしても企業データにアクセスしたい同社はMuleSoftが欲しくなり、そのための費用を払う決断を下した。
MicrosoftがGitHubを75億ドル(約8148億円)で買収(2018年)
ライバルに遅れを取るまいと、Microsoftはちょうど一年前にGitHubを大枚75億ドルで買収した。当時デベロッパー・コミュニティーには心配する向きもあったが、これまでのところMicrosoftはGitHubが独立子会社として活動することを許している。
SAPがQualtricsを80億ドル(約8691億円)で買収(2018年)
SAPは、QualtricsがまさにIPOしようとしていたところに割り込み、断れない条件を提示した。Qualtricsは、顧客満足度を測るツールをSAPにもたらした。それはSAPに欠けていたものであり、大金を払うことに躊躇はなかった。
OracleがNetSuiteを93億ドル(約1兆104億円)で買収(2016年)
OracleがNetSuiteを買収したことは驚きではなかった。当時Oracleはクラウドへの移行を進めていたときであり、すぐれたSaaSツールを必要としていた。NetSuiteは、すぐに使えるパッケージ化されたクラウドサービスをOracleにもたらし、Oracleが喉から手が出るほど欲しかった顧客も一緒についてきた。
SalesforceがTableauを157億ドル(約1兆7056億円)で買収(2019年)
ここが今日の案件。Salesforceはふたたびすばやい動きを見せ、巨額を支払ってデータビジュアル化ツールを買い、顧客がSalesforceに限らずどんなデータでもビジュアル的に見られるようにした。さらに言えば、これは昨年のMuleSoft買収を非常にうまく補完するものでもある。
BroadcomがCA Technologiesを189億ドル(約2兆532億円)で買収(2018年)
巨大買収の年の巨額の案件。Broadcomは、半導体メーカーが伝統的ソフトウェア開発・ITサービス会社にこんな金額を払ったことで一部の人々を驚かせた。189億ドルは時価総額の20%に相当した。
MicrosoftがLinkedInを260億ドル(約2兆8246億円)で買収(2016年)
これは当時Salesforceが欲しくてたまらなかった会社だが、Microsoftが財力を生かして勝ち取った。LinkedInの大きな贈り物はデータだった。以来Microsoftはそのデータを製品に変える作業を続けている。
IBMがRed Hatを340億ドル(約3兆6938億円)で買収(2018年)
昨年の終わり近くなってIBMが大きく動き、Red Hatを340億ドルで買収した。IBMは何年も前からハイブリッドクラウドの方式を説いてきたが、Red Hatの買収によってハイブリッドストーリーの説得力がぐっと増した。
DellがEMCを670億ドル(約7兆2789億円)で買収(2016年)
これが全体のトップ。今日の案件をはるかに上回る。この買収は契約締結までにさまざまな障害を超えなくてはならず何ヶ月もニュースに取り上げられた。中でもこの契約に入っていた宝物はVMwareとPivotalで、後者は その後IPOを果たした。この買収のあと、Dell自身も上場した。
画像クレジット: Madmaxer / Getty Images
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )