米下院のNancy Pelosi(ナンシー・ペロシ)議長は米国時間9月24日、トランプ大統領に対する正式な弾劾調査を開始すると発表した。今後予想される政治騒動は直接的にはテック産業に関係しないが、テック産業に関するいくつかの国レベルでの取り組みにおいて深刻な影響はあり得る。
もちろん弾劾は、政府がすべき業務を停止することを意味するものではない。しかし、すでに山積しているホワイトハウス内のTo Doリストの中で弾劾は最優先となる。これにより、くすぶっているサウジアラビアにおける衝突、移民や移民税関捜査局絡みの問題、そのほかソーシャルメディア規制のような数えきれないほどの問題や法的課題は脇に置かれるということになりそうだ。
トランプ政権とテック産業の関係は複雑だ。多くの人が、トランプが当選したのはソーシャルメディアのおかげと考えている。そしてトランプはホワイトハウスの主な広報手段としてTwitterをかなり愛用してきた。しかしトランプはまた、彼自身または保守党に対する偏見に加担しているなどさまざまな理由でFacebookやGoogleといった企業に対する悪口を繰り返してきた。
例えばこの夏を見ると、7月にトランプは「Google、そして同社の中国との関係に関して安全保障上の懸念があるかもしれないし、ないかもしれない」と話した。その翌週、彼はGoogleが「ヒラリー・クリントンに関するネガティブな話を隠し、ドナルド・トランプに関するネガティブな話をばらまいた」と具体的に指摘し、Googleが「かなりの違法行動」をとったと語った。ほどなくして彼は、Googleが260万〜1600万の票を不正操作したと非難し「Googleは訴えられるべきだ」とツイートした。
これらは数ある例のほんのひと握りだ。こうした発言はそれぞれ、大統領がそのときに何に注意を向けていたのか、あるいは何を告げられたのかを即座に反映している(例えば、票の不正操作の指摘では、ツイートの数分前にFox Newsが報告書について報道していた)。その一方で、そうした発言が最終的に政策と呼ばれるアクションに結びつくのは半分ほどだ。
Googleの独占禁止違反疑いについての複数の州における調査はホワイトハウスがけしかけたものではないようだが、連邦取引委員会(FTC)と司法省の調査は政府上層部から何らかの形で刺激があったというのは大いにあり得る。
しかしトランプはまた、そのほかのところでは少なくとも概念上、テック大企業の肩を持ってきてもいる。例えば、プライバシーとユーザー保護の法律についてだ。イリノイなどの州は何年もの間、企業にとって重荷となっているかなり厳しい法律を運用してきた。カリフォルニア州でも同様の法が施行されることになり、テック業界はもう十分だとして連邦の干渉を声高に求めている。個人を特定できる情報を広告会社に売るなどの問題に関しては連邦の法律の方が州のものより寛大で、州の法律ではなく連邦の法律のほうが力を持つというロジックだ。連邦の法律はGDPRのように幅広く、そして厳密に適用されることはないとされている。
こうしたテック企業の取り締まりについては一部で動きがあるものの、ホワイトハウスはまだ検討中だ。噂されているものとしては、FCCにソーシャルメディアの規制を担当させるというものだ。弾劾調査が始まること、そして2020年の選挙にこれが影響することから、トランプ大統領の注意が別のところにいくとテック企業は密かに安堵しているに違いない。
テックは国家の論争や取り組みの中心にあり続ける。しかし弾劾調査により、こうした厄介だが必ずしも喫緊ではない問題は棚上げされることになるだろう。
[原文へ]
(翻訳:Mizoguchi)