ブロックチェーンを使用して、航空会社と旅行当局の間で安全にデータを共有および検証して乗客の身元を確認することを目指すZamna(ザムナ)が、シードラウンドで500万ドル(約5億4000万円)を調達した。ラウンドを主導したのは、LocalGlobeとOxford Capitalで、それに加えてSeedcamp、London Co-Investment Fund (LCIF)、Telefonicaそして多数のエンジェル投資家たちが参加している。
既存の投資家であるIAG(International Airlines Group)も参加しているが、IAGは現在、最初の商用クライアントだ。Zamna自身は、VChain Technologyという元の名前から社名を変更した。
元VChain(今のZamna)が最初に登場したとき、私は混乱したことを告白しなければならない。ブロックチェーンを使用して乗客データを検証するのは、効果のない不適切なやり方のように思えたのだ。しかし、やがて驚くほど便利な用途があることがわかった。
そのアイデアは、現在は航空会社、政府、そしてセキュリティ機関の間で別々に管理されている乗客データセットを、ブロックチェーンを使って検証し接続しようというものだ。「これを行うことにより、手動または他のチェックの必要性を最大90%削減できる」とZamnaは述べている。そうしそうなら、大変な効率改善となる。
理論的には、時間が経ちより多くの乗客識別情報がデジタル検証されるにつれて(中間でブロックチェーンを使ってデータの安全性と乗客のプライバシーを守る)、空港におけるセキュリティプロセスは、実質的にシームレスなものとなり乗客は複数の空港を、物理的な書類や繰り返されるIDチェックなしに進んでいくことが可能になる。良さそうな感じだ。
Zamnaによれば、経歴(バイオグラフィー)および生体情報(バイオメトリックデータ)を扱う、同社のプラットフォームであるAdvance Passenger Information(API)検証プラットフォームが、一部の航空会社および入国管理局によって既に導入されているという。最近同社は、エミレーツ航空ならびにUAEの移民帰化局(GDRFA:General Directorate of Residency and Foreigners)と協力して、チェックインとトランジットの際の検査を実施し始めた。
仕組みは次の通りだ。Zamnaのプラットフォームは、Advanced Passenger Informationまたは生体情報の精度をチェックするアルゴリズムの上に構築されている。このときそれらのデータを第三者機関と共有する必要はない。何故なら既に検証済のデータには、匿名化されたトークンをアタッチするようになっているからだ。航空会社、空港、政府は、実際に代理店または競合航空会社が保有するデータを実際に「見る」必要はないまま、安全で不変な検証済みトークンの分散ネットワークにアクセスすることができる。Zamnaの技術は、これらの関係者のいずれかによって使用されて、自分が「自分だ」と申告する者をチェックするために暗号を使い、乗客の経歴および生体情報を検証することができる。
それでは、Zanmaが変えることになるかもしれない、これまでの空港における航空会社や入出国管理のセキュリティ対策では何がいけないというのだろう?
Zamnaの共同創業者兼CEOであるIrra Ariella Khi(イラ・アリエラ・キ)氏は、TechCrunchに対して次のように語った。「普通、空港に到着したときには、まるで魔法のように、航空会社があなたが誰なのかを知っていて、保安機関もあなたが誰なのかを知っていて、そして出発国と到着国の政府はどちらもあなたが2つの国の間を飛んでいることを知っていて、あなたがそうすることは合法的で安全であることも検証済になっている、という思い込みがなされていることでしょう。また、あなたとあなたの仲間の乗客の両方が同じ飛行機に乗っても安全であることを証明するために、それぞれの保安当局があなたの乗客としての情報を交換したと仮定することさえ可能です」。
「しかし、現実はこれとはほど遠いものです」と彼女は言う。「航空会社や政府機関がデータを共有したり相互参照したりするための簡単で安全な方法はありません、それらは(有効なデータを保護するため)サイロ化されたままです。なので、あなたが移動するたびに、手動で1回限りのデータチェックを繰り返す必要があるのです。たとえ事前に身元データを提供してチェックインし、同じ航空会社の同じ空港から何度も旅行する場合でも、同じ1回限りの旅客処理の対象であることがわかります(おそらく、すでに何度も経験しているはずです)。何より大事なことは『本人確認イベント』があると、そこで航空会社は乗客が保有している本人確認書類を確認するとともに、その身分証明書がその目の前の人間自身に属していることを確認しなければならないということなのです」。
この分野には3つの大きな流れがある。第1に、各国政府は航空会社に対してより正確な乗客データ(出発地と目的地の両方)を要求していて、航空会社から彼らに不正確なデータが提供された際に課される罰金を増額している。第2に、航空会社は、不正確なデータのために政府によって入国を拒否された場合には、乗客と荷物の送還を管理する必要があり、これには費用がかかる。そして第3に、ETA(eVisaなどの電子入国許可証)が増加しているために、政府と航空会社は、乗客のデータが旅行に適切なステータスを持っていることを確認するために、関連するETAのデータと正確に一致することを確認できるようにする必要があるのだ。これは、米国に到着するすべての旅行者が必要とするESTAの場合だが、他の多くの国にも同様の要件がある。英国の旅行者にとっては非常に重要だが、またこれはもうすぐ発効するEITAS規制の下でヨーロッパへ旅行しようとする乗客すべてに関係してくる。
その結果、航空会社は、乗客が定期的に飛行機を使う人間かどうかには関わらず、また事前にチェックインしたかどうかにも関係なく、空港での書類と身元の確認を強化している。
Zamnaのデータ検証プラットフォームは、乗客が空港に到着する前に、複数の関係者(航空会社、政府、保安機関)を、乗客の身元確認とデータ(経歴と生体情報の両方)に対する1つの検証と再検証方法でまとめ、安全にデータの所有権を確立するというものだ。
これは空港での新しいインフラストラクチャを何も必要とせず、関係者たちはデータを共有する必要もない。なぜなら「共有せずに共有すること」はすべてのデータソースの途中で、Zanmaのブロックチェーンプラットフォームによって行われるからだ。
LocalGlobeのパートナーであるRemus Brett(レムス・ブレット)氏は次のように述べている「今後20年間で乗客数が2倍になると予想されるため、新しいテクノロジー主導のソリューションは、航空会社、空港、そして政府がうまく切り抜けられるための唯一の方法なのです。Zamnaチームと協力できることを嬉しく思っておりますし、彼らがこれらの課題に取り組む上で重要な役割を果たすことができると信じています」。International Airlines Groupのグローバルイノベーション責任者であるDupsy Abiola(デュプシー・アビオラ)氏は次のように付け加える「Zamnaは、ブリティッシュ・エアウェイズおよび他のIAGキャリアを含む、デジタルトランスフォーメーションプロジェクトで、IAGと協力しています。非常にエキサイティングです」。
Zamnaは、国際航空運送協会(IATA)の戦略的パートナーであり、IATAの”One ID”ワーキンググループのアクティブなメンバーだ。
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(翻訳:sako)