ゲノム配列を利用して非侵襲的ながん検診を実現するLucenceが20億円超を調達

非侵襲的な癌検診技術を開発しているゲノム医学のスタートアップLucence Diagnosticsが、世界最大の民間総合ヘルスケアグループの一つであるIHH HealthcareがリードするシリーズAのラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達した。これにはSGInnovateとこれまでの投資家Heliconia Capital(Temasek Holdingsの子会社)、Lim Kaling、およびKoh Boon Hweeが参加した。

この資金はLucenceの研究施設の規模拡大と人員増員および、アジアと北米地区で同社製品の商用化を進め、より多くの患者が利用できるようにすることに充当される。

資金はまた、2つの有望な治験をサポートする。ひとつはこの技術の、末期がん患者への有効な感応性にフォーカスし、他は肺がんや大腸がん、乳がん、すい臓がんなどいくつかのタイプのがんの早期発見への有効性の評価だ。Lucenceは現在、早期発見の評価のために10万名を対象とする調査を設計している。最初の患者の起用を来年半ばと予定しており、米国とアジアでローンチする。

この前のシード資金と合わせてLucenceの総調達額は2920万ドルになる。

Lucenceのテストは現在、東南アジアと香港の医師が利用しているが、今後は北米と東アジアにも広げる計画だ。シンガポールの研究所はすでにCLIAとCAPの認定を得ているので、米国の医師と患者もそのテストを利用できる。現在ベイエリアに建設中のラボが完成すれば、患者が結果を得るまでの時間も短くなる。

シンガポールに本社があり、サンフランシスコと香港と中国の蘇州にオフィスのあるLucenceは、CEOで医師のMin-Han Tan(ミン-ハン・タン)氏が創業した。彼は腫瘍専門医で、2016年にシンガポールの科学技術研究庁からスピンアウトした。2年後にLiquidHALLMARKをローンチし、それは同社によると「世界初で唯一の血液の遺伝子配列テストにより、1回のテストでがん関連の遺伝子の突然変異と癌を起こすウィルスの両方を検出する」。それは、14種のがんの兆候を検査できた。同社によるとLiquidHALLMARKはこれまで、アジアの1000名の患者に利用された。

ゲノム配列を利用するがん検診を開発したスタートアップとして、ほかにSanomics、Prenetics、Guardant、Grailなどがいる。Lucenceの差別化要因は、その特許技術によるアンプリコンシーケンスで、ゲノムの特定部分の変異を調べて癌に結びつく突然変異などを見つけることにある。同社はそのテストを「スイス製アーミーナイフ」と呼んでいる。それは、がんの検診と診断と処置と選別と監視に利用できるからだ。

IHH HealthcareのCEOに任命されているドクターの、Kelvin Loh(ケビン・ロー)氏は声明で「液体生検は、処置の精密な選択とより安価なケアによって癌の処置を画期的に改善した。Lucenceへの投資は、IHHの患者にこの先進的な技術へのより良いアクセスを提供するだろう」と述べている。

画像クレジット: Enterprise Singapore

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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