A/Bテストの「KAIZEN platform」がグーグルとグリー出身者を要職に起用して海外展開へ

大手ネット企業からスタートアップへ――。こんなキャリアパスが日本でも増えつつあるのかもしれない。ウェブサイトのA/Bテストを行うプラットフォーム「planBCD」を運営するKAIZEN platformが2月1日、グーグル日本法人で広告営業部門を立ち上げた小川淳氏をカントリーマネージャーに、グリーと米国子会社GREE Internationalで複数のプロダクト責任者を務めた瀧野論吾氏を開発陣に迎えた。今回の人事でKAIZENは国内事業を加速するとともに、創業者兼CEOの須藤憲司氏は米国をはじめとする海外事業の立ち上げに注力する。

左から小川淳氏、須藤憲司氏、瀧野論吾氏

KAIZEN platformは、リクルートで最年少エグゼクティブとしてアドテクノロジー部門を率いた須藤氏が2013年3月に米国で創業したスタートアップ。主力サービスのplanBCDは、異なるパターンのウェブページを用意し、ユーザーの反応を比べてユーザーインターフェイス(UI)を改善することができる。社内にデザイナーがいない場合でも、planBCDに登録する世界中のA/Bテストの専門家(グロースハッカー)に自社ページのUI改善を依頼できるのが特徴だ。創業の経緯やサービスの詳細は以前に記事にしているので、そちらを参考にしてほしい(関連記事:グロースハッカーごとサービスで提供――、日本発の新A/Bテストの「Kaizen Platform」)。

plan BCDは昨年8月にローンチし、半年間で約30社の大企業が導入。昨年11月にはスタートアップや中小企業を対象としたバージョンを公開し、2カ月間で400社以上が導入し、世界11カ国で利用されるなど好調のようだ。国内では、ユーザーごとに最適化したニュースを配信するアプリ「Gunosy」や、先日記事にした高級旅館専門の予約サイト「relux」関連記事:満足しなければ全額返金、高級旅館専門の予約サイト「relux」が会員機能をオープン化)などがplan BCDでA/Bテストを行った結果、コンバージョン率が平均76%改善したのだという。

さて、今回カントリーマネージャーに就任した小川淳氏はリクルートを経て、Google日本法人で広告営業部門を立ち上げた人物だ。その後は、業界営業部門の立ち上げと責任者、広告代理店事業の責任者と、重要なポジションを歴任している。須藤氏は「僕よりもはるかに事業をスケールできる人」と評しており、今後は小川氏の知識やネットワークを活かし、国内事業を成長させたいという。

プロダクト責任者として迎えられた瀧野論吾氏は、GREEで「ドリランド」をはじめとするゲームのディレクター、スマホ向けゲーミングプラットフォームの立ち上げ、米GREE Internationalで国際展開を担当。KAIZENのプロダクト戦略からUX/UIまでのプロダクト開発を手がけることとなる。

米国ではGoogleやFacebookのような大手ネット企業からスタートアップに転身するケースは少なくないが、日本でもそのような人が増えてきているのかもしれない。例えばGoogle出身の佐々木大輔氏はクラウド会計ソフト「freee」を立ち上げたり、同じくGoogleでプロダクトマネージャーを務めていた徳生裕人氏は翻訳サービス「gengo」の製品開発責任者に就任した。今年に入ってからは、Rubyやオープンソース業界で知られる元GREEの大場光一郎氏がクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」のCTOに迎えられたばかりだ(その経緯はクラウドワークス吉田浩一郎社長のブログに詳しく書かれている)。

今年30歳の瀧野氏は自らの転身について、米国の経験が大きく影響したと振り返る。「ものすごく早いサイクルで市場が回っていて、実際に自分でも事業を作りながらマネージメントする経験がすごくエキサイティングだったんですよね。もう、自分で裁量を持って働くほうが面白いなと」。帰国後は起業するつもりだった瀧野氏だが、同僚の紹介で須藤氏に会い、「このサービスは単純に面白いし、人の働き方も変える」と共感。KAIZEN platformでプロダクト責任者となることを決断した。瀧野氏によれば、GREEで米国子会社の立ち上げに関わった同年代の多くは、帰国後に起業するか、スタートアップに移籍しているのだという。

瀧野氏より一周り年上の小川氏は、優秀でやる気のある人材が大企業からベンチャーに転職する流れができればいいと語る。「サンフランシスコでは、大手からスタートアップに移った人がGoogleやAmazonに戻ってきてるんです。日本は大手でも年を重ねると大企業か外資しか行き先がなかったりする。これは僕の野望の一つなんですけど、スタートアップに来てもまたキャリアが築けるようにしないと日本はダメですよ。僕は42歳で子供もいるんですが、KAIZENが成功して、同世代でも日本のことを考えてベンチャーに行く人が増えれば」。

大手企業で実績を残した瀧野氏と小川氏だけに、今回の転職に際しては「それなりの企業からそれなりの金額のオファーをいくつかいただいた」と口をそろえる。KAIZENへの転職では待遇面がネックにならなかったのか? この点について瀧野氏は、「目先の数百万円よりも、単純に数百万円を払ってでも経験できないことをしたかった。とはいえ、KAIZENはグローバル前提で展開しているので、日本のスタートアップでは考えられないくらい採用にお金を積んでいる」と話す。続けて小川氏は、「金銭面はスドケン(須藤氏の愛称)とも相談させてもらったけれど、スタートアップで自分で決断できる経験も待遇に含まれる」と待遇は金銭面だけではないと強調している。

須藤氏は周囲の人間に耐えず「誰かいい人いない?」と聞いてまわり、「この人は」という人物には直接Facebookでコンタクトを取って会社の前で待つなど「血眼で探している」という。今年のテーマは「海外強化」と語り、「世界で勝負するなら、世界で勝負できる人材がいないとだめじゃんっていう。身の程知らずの人を採用するのを繰り返していかないと」と言い切る。国内の事業展開は小川氏と瀧野氏らに任せ、しばらくは海外事業の立ち上げに専念するそうだ。


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TechCrunch Japan

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