Y Combinatorに価値はあったか?

編集部注: Jarrett StreebinはY Combinatorの卒業生で、サンフランシスコ拠点の簡易配送APIのスタートアップ、EasyPostのCEO。Twitterアカウントは@jstreebin

Y Combinatorでの経験について質問された時、ほぼ間違いなく聞かれるのが「それだけの価値はあるのか?」だ。この種のプログラムの複雑さを考えれば、この質問に簡潔に答えることは難しい。Y Combinatorでは、多くの友達を作り、経験豊かな起業家に学び、投資家に売り込み、さらには価値あるアーリー・アタプターの登録まで受け付けることができた。

これらの利益の多くは定量化することが難しい。しかし、一つ数値化できるものとして資金調達がある。われわれは資金調達に関するデータを設立当初から集めてきており、幸いY Combinator入学の前にも後にも投資家たちの興味を引くことができた。われわれは、果たしてY Combinatorの価値を定量化できるかどうか、最近のデータを見直してみた。

資金調達の中間段階で、われわれは成功(銀行への入金)を示す唯一最大の指標は、われわれが投資家を紹介されたか(インバウンド)、あるいはわれわれが投資家に売り込んだか(アウトバウンド)の違いであることに気がついた。これを踏まえて、それぞれの投資家をインバウンドとアウトバウンドに分類した。

また、Y Combinatorの価値を測る目的から、投資家を2つのグループに分けた。われわれがY Combinatorへに受け入れられたことを知る前と後だ。前者をプレYC、後者をポストYCと呼ぶ。これは、ラウンドや条件に関する分類ではなく、われわれがY Combinatorに入る前か後かだけによる。

当社はこれまでに、以下の投資家から計300万ドルの資金を調達した。SV Angel, CrunchFund*, Mesa+, Kevin Barenblat, Lars Kamp, Rahul Vohra, Ullas Naik, Shawn Bercuson, Initialized Capital (Garry Tan, Harj Taggar, and Alexis Ohanian), Sherpalo Ventures (Ram Shriram), Alex Polvi, Google Ventures, Charlie Cheever, Mike McCauley, David and Ryan Petersen, Jenny Haeg, Jody Glidden, Dalton Caldwell, Funders Club, Adrian Aoun, Fritz Lanman and Hank Vigil, Charlie Songhurst, Bill Lee, David Sacks, RightVentures, Capricorn, A Grade, Matthew Cowan, Sean Byrnes, Founders Fund, Valor Capital, Greg Kidd, Jeffrey Schox、他。

ここにはYCおよひYCVC(General CatalystMaverickSequoia、およびStart Fundそれぞれから2万ドル)は含めていない。

YCに「受入れられる」ことは、YCからの出資が確定したのと同義なので、Y Combinatorに存在していることは、Y Combinatorが投資するかどうかに影響を与えない。

われわれは、投資候補者と計121回の電話またはミーティングを持ち、うち43社から小切手を受取った。これは、電話・ミーティング1回当たり平均2万5041.32ドルに相当する。

先に示したように、最も重要な違いは、投資家がインバウンドかアウトバウンドかである。改めて書くと、ここでインバウンドというのは、投資家が直接われわれに接触したり紹介を依頼した場合、あるいはわれわれのネットワークの誰かが、こちらに相談することなくその投資家を紹介した場合を言う。それ以外のすべて(こちらから投資家を紹介してもらう、あるいは接触する)は、アウトバウンドと考える。われわれは、これがいかに決定的に重要な要素であるかを資金調達の過程で気付き、それに適応して行動した。以下に2つのラウンドの詳細を示すことによってそれを説明する。

われわれの投資家全員が ― 43社一つ残らず ― 、彼らからわれわれに接触した、あるいは彼らのネットワークを通じて紹介を依頼した。もし友人に依頼して紹介してもらったとしても、単なるアウトバウンドの売り込みと同じように物事が運ぶだけだった。われわれが気付いたのは、誰かに紹介を依頼した場合、その紹介役は自発的にそうしのとは異なる行動をすることだった。もし、あなたのことをとっておきのスタートアップだと思っていれば、とっくに紹介していただろう。あなたは友人との関係だけでなく、その友人と投資家との関係も損うことになる。なぜなら投資が成立する見込みはないのだから(そして、とっておきを紹介した時ほど興味を持たれることもない)。われわれの体験によれば、唯一価値のある紹介は、いかなる依頼にもよらないものだ。それ以外はすべて、著しい時間の無駄である。

これに関して最後に強調したいのは、ほぼあらゆるVCが、ほぼあらゆる起業家とミーティングをするということだ。なぜか? 起業家と会うことが彼らの仕事だからだ。もうひとつの理由打、もし彼らが金曜日の午前11時にサンフランシスコでスケジュールを設定すれば、彼らは、a) サンドヒルに向かわずにすむ、b) タホ湖のリゾートで週末を過ごすのに丁度よい時間に着ける、のいずれかがだからだ。それ以上の何かを期待しないよう注意が必要だ。自分のアイデアも会社も軌道に乗っていないのに、あなたは貴重な時間を可能性のない資金源を追いかけることに費し、最も投資家を魅するための仕事 ― 価値ある会社を作ること ― を放棄している。

ミーティングから契約完了あるいは銀行への入金までの時間は追跡していないが、それは殆ど差がないからだ。約束して書類に署名したほぼ全員が、2週間以内に送金してくれた。そうでない場合は、コンプライアンスその他の手続きのためであることなどを知らせてくれた(大規模ファンドの場合)。

また、最初の接触から同意に至るまでの時間は、90%が2週間以内だった。決断まで、あるいは他の投資家の参加を待ったケースが10%ほどあったが、それは片手で数えられるほどの数であり、プレ/ポストYCで差はなかった。

プレY Combinator

最初のシードラウンドは、SV Angelから2012年9月にメールが送られてきた時に始まり、それはわれわれにとって最初の資金調達交渉だった。そしてY Combinatorに受け入れられた2013年4月28日に完了した。

SV Angelからは非常に初期段階から話を進め、その後別の何社かが加わったが、投資家8社から計53万ドルを調達するまでの期間は6ヵ月半だった。もし、3番目の投資家であるMesa+までで止めていれば、3ヵ月で45万ドルになっていただろうが、大した違いではない。

ポストY Combinator

2度目の調達ラウンドは、2013年4月28日にわれわれが正式にY Combinatorに受け入れられた日に始まった。そこで手早く25万ドルを調達した後、YC在学中は投資家との交渉をすべて中断し、デモデー数日前に交渉再開した。Y Combinator開催中は一切資金調達しなかったので、期間は約1月半しかにかった。おわかりの通り、Y Combinatorに受け入れられてからの方がずっと資金調達は簡単だった。

Y Combinatorの価値とは?

資金調達に関して、Y Combinatorの効果ははかり知れない。われわれの場合、Y Combinatorは、4倍以上の資金を1/4の時間で調達できることを意味している。より多くの投資家を呼びよせ、より高い確率で投資を受けることができる ― ミーティングにかける時間を減らし、EasyPostを立ち上げるための時間が増えた。

これは、もしY Combinatorに入れなければ運が尽きたことを意味するのか? もちろん違う。43社の投資家から300万ドルを調達する過程で、われわれは自分たちに有利にことを進める方法を数多く学んだ。そしてその多くはY Combinator入学以前に学んでいたため、YCの効果を劇的に高めることができた。

*CrunchFundは、TechCrunchファウンダーのMichael Arringtonが所有している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


投稿者:

TechCrunch Japan

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