ゲームクリエイターの最悪の年を描いたビデオゲーム、「Linda & Joan」のプロローグをプレイする

Russell Quinn(ラッセル・クイン)氏は2017年を「人生最悪の年」と呼ぶが、それも無理はない。その年、彼は母の世話をするためにイギリスに戻ったが、母と祖母が1か月のうちに立て続けに亡くなるという経験をしたのだ。

クイン氏は、その後ロサンゼルスに戻り、経験したトラウマすべてを解消しようと試みた時のことを思い起こした。その時期、彼は「制作に関わるクリエイティブな人々がどう悲しみに対処したかについて多くの本を読み、作家が個人的な悲劇について書いた本が実に豊富にあることに気づいた」と述べた。

デザイナー兼プログラマーのクイン氏は、McSweeney(マクスィニー)社の元デジタルメディアディレクターで、デジタル小説「The Silent History(サイレントヒストリー)」を共同制作した経験を持つ。その彼が自らの経験に基づくビデオゲームを制作することを決心した。

悲しみは、ゲームのテーマとして人気があるとは言えない。しかしクイン氏は「自分には納得の行くアプローチだった」と述べた。

「私は作家でもないし映画監督でもありません」と彼は言う。「私は少し前からゲームを制作したいと思っていました。それで、私自身が最も慣れ親しんだ媒介で、自分の経験を語るのは理にかなっていると感じました。」

彼は制作過程が心理的に負担になったことを認めた。例えば、彼は母の3Dモデルをなかなか作ることができず、代わりに母のキャラクターをピンクのシリンダーで表現したのだ。映画の中に母を登場させることで、彼女の死が「あまりに現実感のあるものになってしまう」ことを恐れたからである。しかし、モデルが完成してからは、「これは自分の母ではなくて、俳優であり、アバターだと感じることができました。それ以降は、舞台で俳優に指示を出す監督のような気分で臨むようになりました」と語っている。

Linda & Joan Prologue: “Four Months Earlier” – Release trailer from Russell Quinn on Vimeo.

そして今週、クイン氏はWindows、Mac、iOSでプレイできる無料のプロローグ、「Four Months Earlier(4か月前)」をリリースした。タイトルが示すように、このプロローグはゲーム本編の数か月前に起こったことを描いており、クイン氏は訪ねてきた母リンダと散歩に出る。台詞の選択を通じて、彼らが誰であるか、彼らが直面している課題はなにかを理解することができる。

クイン氏はゲーム「Linda & Joan(リンダとジョアン)」の全てを完成させるには2022年までかかると見込んでいるが、将来のプレイヤーおよび潜在的なパブリッシャーの両者に向けたプロモーションとして「Four Months Earlier」を現時点でリリースすることにした。

太陽が輝くロサンゼルスから「小さなイギリスの家々」に舞台が移るゲーム本編とプロローグは大きく異なるようである。クイン氏は「Four Months Earlier」と比べると 「Linda & Joan」は 「解くべきタスクとパズルが盛り込まれたポイントアンドクリックによる冒険が増える」と述べた。

実際のストーリーに架空のドラマやハッピーエンドを付け加えようとしているわけではない。彼は「パズルはすべて感情ベースのものだ」と述べた。プレイヤーはラッセル、リンダ、ジョアン(彼の祖母)のニーズのバランスを取るよう努めながら、それぞれの役を演じることになる。

クイン氏は「ゲームは2人の死で終わります。これを避けることはできません」と述べた。「プレイヤーが変えられるのは、2人に対しどのような感情を持つか、という部分であり、それは『実人生』を写す一種の鏡です。仮に家族の誰かが末期の病にあると診断を受けた場合、最後の時が来るのを避けることはできません。 しかし、あなたはまだ何か月もその家族と一緒に暮らす必要があり、その現実にどう向き合うかによって毎日は変化し得るのです。」

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カテゴリー:ゲーム / eSports

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(翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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