ソフトバンクは1月12日、2019年末に同社を退職し、現在楽天モバイルに勤務する人物が警視庁に不正競争防止法違反の容疑で逮捕されたと発表した。また楽天モバイルも同日、同人物の逮捕について発表した。
同人物は、ソフトバンクとの間で秘密保持契約を締結していたにもかかわらず、退職申告から退職するまでの期間に、ソフトバンクの営業秘密に該当するネットワーク技術に関わる情報を不正に持ち出していたことが2020年2月に判明。その後ソフトバンクは警視庁へ相談し、被害を申告するとともに捜査に協力してきた。
同人物は、ソフトバンク在籍中、ネットワークの構築に関わる業務に従事していた。不正に持ち出された営業秘密は、4Gおよび5Gネットワーク用の基地局設備や、基地局同士や基地局と交換機を結ぶ固定通信網に関する技術情報という。
なお同人物は、ソフトバンク在籍中顧客の個人情報や通信の秘密に関わる情報、同社通信サービスの提供先である法人顧客の取引先に関する情報へのアクセス権限は保持しておらず、同社営業秘密の中にこれらの情報は一切含まれていないとしている。
ソフトバンクは、同人物が利用する楽天モバイルの業務用PC内にソフトバンクの営業秘密が保管されており、楽天モバイルが営業秘密をすでに何らかの形で利用している可能性が高いと認識しているとした。
今後、楽天モバイルにおいてソフトバンクの営業秘密が楽天モバイルの事業に利用されることがないよう、その利用停止と廃棄などを目的とした民事訴訟を提起する予定。また引き続き、捜査当局に全面的に協力し、同人物への損害賠償請求を含めた措置も視野に入れて、今後の対応を検討するとしている。
またソフトバンクは、全社員に対して定期的に秘密保持契約の締結やセキュリティー研修などを実施してきたが、今回の出来事を受けて、再発防止施策として以下の追加施策を2020年3月以降、順次実施した。
- 情報資産管理の再強化(管理ポリシーの厳格化、棚卸しとアクセス権限の再度見直し)
- 退職予定者の業務用情報端末によるアクセス権限の停止や利用の制限の強化
- 全役員と全社員向けのセキュリティー研修(未受講者は重要情報資産へのアクセス不可)
- 業務用OA端末の利用ログ全般を監視するシステムの導入
楽天モバイルは、社内調査を徹底しており、現時点までに、同人物が前職により得た営業情報を楽天モバイルの業務に利用していたという事実は確認していないとした。また5Gに関する技術情報も含まれていないとしている。事態の解明に向け、警察の捜査に全面的に協力していくとともに、厳粛に対処するとしている。